立向居と春奈

※アンケ10位



「……えと、大丈夫…?」
「う、うん…」
ワケあって、今掃除用具の中に居ます…。

っ痛…。モップの先端が頭に当たった。
「せまいね…」
音無さんはそうつぶやいたけど、全くその通りなんです。
ギリギリ二人が入れるくらいのスペースしかない。もうちょっと密着すれば隙間が増えるんだけど、さすがにねぇ…。
「どうしよっか」
俺はそう音無さんに言ってしまったけど、こんな質問するんじゃなかったと後悔した。もしかしたらここから出ようとか言われてしまうかもしれないからだ。俺はこの状態でいることは嫌じゃない、むしろ嬉しいくらいだ。
だから俺は思わず音無さんの口を塞いだ。手を大きく動かしたからガコンと大きな物音がした。
「ぅ・・・ごめんなさい・・・」
後ろめたい気持ちでいっぱいだった。俺は音無さんの口から手を離した。

掃除用具の外から俺たちを探してい声が聞こえる。
俺は音無さんを思わずこちらへ抱き締めて、静かに、と耳打ちした。その言葉は俺にぴったりの言葉だったのに、音無さんに言っちゃってごめんね。
「……」
音無さんはじっと僕を見ていた。どうしよう、嫌われちゃったのかな。
そ、そんなに見つめないでほしいな。恥ずかしくなってきた…。手に汗をかいてるよ…
「お、怒ってるの…?」
「え?どうして?怒ってなんかないよ?」
きょとんとしている音無さんを見る限り、僕を嫌っているわけじゃなさそうだけど…。
「だ、だってさ…」
俺がそう言いかけたとき音無さんは僕の口の前に人差し指を置いた。ちょ、ちょっと…唇と指があたってる。俺は口を真一文字に閉じていた。
「静かに…!」
声をひそめてみるとまだここらへんにいるみたいだ。
このロッカー怪しくないでヤンスか?と特徴のある口調が聞こえてきた。そうッスねぇと言う声も後から聞こえてきた。
あーあ、これで見つかっちゃえば音無さんともこうやって密着できなくなるのか。もう少し長くいたかったなー。
ガタッと開く音がする。これでかくれんぼ終了か。栗松たちの話し声を聞いてたら俺たちが最後だったみたいだし。
「あー!春奈ちゃん見つけたでやんすー!」
嬉しそうな栗松の声が響いた。俺は嬉しくないよ・・・。
「たっ立向居くんもここに入ってたんスかー!」
「ぅん、・・・まぁ」
壁山のセリフで思い出してしまった。・・・おれ、おとなしさんをだきしめてしまったんだった・・・。
音無さん、きっと怒ってるだろうな。うん、謝ろう、ちゃんと。

「お、音無さん、あのさ、さっきは、ごめんね」
噛みそうになる。
「なにが?」
「ほっほら、俺、音無さんを、だ、だきしめちゃったから・・・」
「あぁ、そのことね」
「うん、ごめんね」
「べ、別に立向居くんだったから、・・・気にしてないよ・・・」

あ、あれ・・・?そういうことは俺、期待してもいいんですか?






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