風丸と冬花

※アンケ1位








グラグラと揺れた。



「…………」
「……………」

ブォンと音がした次の瞬間には真っ暗になった。



風丸は、さてどうしようか、と冷静に見えるように手をあごにあてて考える人のポーズをとった。内心、すごく焦っていた。


ぴしっと指をさしたのは緊急用連絡ボタン


これは基本だよな、うん、と風丸はつぶやきながらボタンを押す。

反応ナシ。



風丸は苦笑いして壊れてる、と言った。



「……どうする?」

冬花は風丸に問う。



エレベーターに閉じ込められた二人はペタリと床に座った。


「ま、まず、連絡を取ろうか…」

そう言うと携帯を取り出した。





円堂に電話をした。
円堂はすぐに助けに行くから待ってろ、と忙しそうに早口で言った。

すぐってどれくらいだろうか、もう二十分はたったよ、と風丸は手をぎゅっと握った。



(……久遠ってかなり美人だよな)

長くキレイな髪の毛、細身の体、整った顔立ちをみて風丸はそう思った。


冬花はしばらく俯かせていた顔を上げた。


「か、風丸くん…。あのさ…」


冬花はおどおどしていた。

ロクに話したこともない男と二人っきりだからしょうがないよな、と思いながら


「どうした?」

と、言った。


冬花の顔が少しずつ赤くなっていく
「…まもるくんのタイプって……分かる…かな…?」

その言動だけで風丸は察した。
久遠冬花は円堂守に惚れているんだということを。


「お前…、円堂のこと好きだろ」

冬花は口を真一文字に閉じた。


風丸はそれを見て、ぐっと手を握った。当たった、と。

(当たっても嬉しくはないけどな)


「……なんで分かったの?」
「なんとなく…かな…?」

にっと白い歯を見せて笑った。


冬花が風丸の目をじっと見つめていた。

「あ、そうだ、タイプ知りたいんだよね」
さっきまで忘れていた。


「ぅん…」

風丸は考えた。
なぜならば長い間円堂と一緒にいたが、恋愛には縁がなかったからだった。

「…すまん、分からないな…」
「そっか…。ごめんね、ありがとう」

どこか悲しげな顔をしていた。

風丸はその姿をみて、なんだか胸が締め付けられるような感覚に襲われた。


「…お前のタメにおまじないしてやるよ」




風丸は冬花に目を閉じるように言った。
そして、風丸は冬花の両肩に両手を乗せて、向き合う形にした。


(…いい…よな…?)

そして、風丸自身も目を閉じて唇を重ねようとした。








その時、誰かが叫んでいるのが聞こえた。

風丸ははっとして冬花から少し離れた。
そして、もういいよ、と言って冬花の目を開けさせた。


叫び声がだんだん近くに聞こえてくるようになった。

そして、エレベーターの中の光が戻り、上に少し移動して扉が開いた。


円堂のバンダナが少しずれていて、息をきらしていて急いでいたことが分かる。

冬花はさっきまで風丸に見せることのなかった顔をしていた。


風丸は冬花の背中をぐっと押して円堂のところへ押しやった。
そして耳元で

「おまじないしたから大丈夫だぜ」

と、言った。


(はやく幸せになれこんちくしょー)
胸に手を当てて苦しさが和らぐと言ったら和らぐわけがなかった。


円堂と風丸と冬花の三人は並んで帰っていった。



「そういえば円堂、お前どうしてあの時焦ってたんだ?」

風丸が今まで疑問だったことを聞いた。


「あの時?」
「ああ、俺が電話したとき」

円堂はうーんとうなった。
どうやら忘れているようだったが、すぐに思い出した。


「あん時な。あの時はなー…、地震が起きて夏未が転んだんだよー。怪我したみたいだから送ってった時だったんだよ」

円堂は、夏未のやつ馬鹿だよなー、と笑っていた。

冬花も笑っていたが、それが本心ではなかった。


円堂の話から分かることは、なんらかの理由で夏未と円堂が一緒にいたこと。と、風丸は冷静に分析した。

つまり、なんらかの理由というのが…。風丸は気づいた。

もちろん冬花もだった。



円堂が先にはいる。

バタンと扉が閉じたが、残った二人は入る気配がなかった。


風丸は泣いている冬花を胸に抱き、だた抱きしめることしかできなかった。

かける言葉も見つからず、風丸は冬花の泣き顔を見た。



(俺だったらこんな顔にさせない)

下唇を噛んだ。





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