天馬と葵
※天馬の一人称が「僕」
僕らが出会ったころ、まだまだ小さかった気がする。今より身長も低いし、サッカーもへたくそだった。
そして、葵はただの幼馴染みとか女友達とかいう感情しかなかった。けれども、今は幼馴染みより女友達よりも深い感情を持っているよ。
「ねえ葵、今日一緒に帰らない?部活ないしさ」
スカートを少しだけ揺らして歩いている葵の目のやり場に困ってしまって、少しだけ目をそらす形となった。葵は眉を潜めてこう言った。
「ご、ごめん...。他の人と帰る約束しちゃってて...」
「ん、そっか...。それならしょうがないね」
君が誰と一緒に帰るのかはなんとなく知っている。僕の知っている人なんだろ?
君はきっと僕の気持ちなんか分かるわけがない。でも、それは悲しいことじゃないと思うんだ。僕が君のことを好きだって知ったら、君は気をつかってくるかもしれないから。僕はそれがつらい。
ならんで歩いている君たち二人とも僕は大好きだ。だから、このどうしようもない気持ちのやり場に困るんだ。どちらかに嫉妬なんかしない、けど、どちらにも嫉妬してしまうこの気持ち。僕はとっても卑しいやつなんだ。
この世から消えれるものなら、僕は消えたい。