帝国と春奈

「お兄ちゃん、大丈夫?」
大きい扉を開けるとふかふかなベットの上で横になって休んでいるお兄ちゃんの姿とそれを取り囲む帝国学園のサッカー部の人たちが目に入った。
どうやら私と同じくお見舞いにきたようで。

ごほごほとつらそうに咳き込んでお兄ちゃんはゆっくりと身体を起こした。
「おい、風邪がうつるからくるなって…」と、言いかけてまた咳き込んだ。
「だって、私、お兄ちゃんのこと心配だったんだもん」
「…………。まぁ、バカは風邪ひかないって言うしな」
お兄ちゃんがボソボソと呟いているけど聞かないことにしよう。

源田さんはお兄ちゃんの身体を寝かせて手をお兄ちゃんのおでこにのせた。
まだ下がらないな、とぎゅっと唇を結ぶ。
薬を飲んだからしばらくしたら下がるだろうと普段どおりの口調でお兄ちゃんは源田さんをなだめた。

それから一時間くらい帝国の人達といろいろなことを話した。
世間話みたいなもので円堂さんはどうだとか豪炎寺さんはどうだとかそんなこと。
そろそろ暗くなってきたから私たちはかえることにした。


「皆さん、兄のためにありがとうございました。」
さようなら、と言って帰ろうとしたときに佐久間さんが私の肩をつかんでいた。
「女の子一人じゃあぶないからさ、俺が送っててあげるよ」
「佐久間待て。俺たちも行くよ」
佐久間さんがにこりと笑った後に、成神さんと辺見さんがそう言った。

一瞬三人が見合っていたような気がするけど、多分気のせいだろう。
「じゃあ俺たちが送るよ」
佐久間さんはさっきよりも良い笑顔だったけど、無理やり作ったような顔でとても怖い。

佐久間さんは私の腕を引っ張って私に密着していた。
そのときに成神さんはぐいと私と佐久間さんの間に割り込んできて辺見さんが佐久間さんをグーで殴った。
喧嘩になりそうになったときに不意に服の裾を捕まれた。

「源田さん?」
そこには源田さんがいた。
「あいつらうるさいな、あいつらといると危険だから俺が送るよ」
あぁ、良かった。一番安心できる人がいてくれて。ほっと胸を撫で下ろす。

春奈ちゃんいなくね、と辺見さんが気がつく。
源田さんは私の手を握りしめて、逃げるぞ、と微笑んだ。




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