帝国と春奈

※アンケ4位


あはは、と春奈は笑うしかなかった。兄について帝国学園まできてしまったけど、なんだか退屈で兄に先に帰るからと一言言って帝国学園から離れた矢先、強面の人々に捕まってしまったのだ。春奈の知り合いにも強面の先輩がいるが、それよりももっと怖くて体格が良かった。自分はこれから殺されてしまうのではないだろうか、となぜか思ってしまって春奈の体は震えた。肩をつかまれそうになってぎゅっと目をつむって覚悟
を決めたが中々肩に触れる気配がなく、そっと目を開けると強面たちは固いコンクリートに体を打ち付けて倒れていた。

「あーあ、しょぼ。・・・君、大丈夫だった?」

ボールを足で器用にとんとんと上に蹴っていた。それを見て、もしかしたらこの人がボールで倒してしまったのだろうかと春奈は想像したが、そんな日現実的なことは起こるはずがないと冷静を装おうとしたけど、超次元な技を出せる彼らならあり得るのではないか、ということに落ち着いた。しかも、良く見ると目の前にいるのは帝国のサッカー部員だった。

「うん、・・・ありがとう」
「あれ?君ってもしかして鬼道さんの妹さん?」

春奈より少し背の高く、ヘッドフォンを常に常備している子はやはり春奈の兄のことを知っていた。ツンツンしている髪の毛や平安時代の眉毛みたいに整えている眉毛が特に印象的だと思ったと同時に、帝国の校則はどれほどゆるいんだろうと春奈は思った。
成神のあとから数人のサッカー部員がやってきた。小さい男子と背が高く眼鏡をかけている薄気味悪い人とマスクをしている男子だった。洞面に五条に咲山は春奈を物珍しそうに見た。

「あー!もしかして音無さん?」
洞面は嬉しそうに春奈のことを指差してはしゃいでいた。
「は、はい・・・。そうですけど・・・」
「やっぱりねー」

帝国の4人は目で合図をとった。そして春奈を引き寄せて、話しかけた。
「ちょっと、俺らと遊んで行かない?」
春奈はこれから特に用事もなかったし、さっき助けられたことから断る理由はなかった。暗くなる前だったら、と楽観的に考えて、その提案に賛成した。

帝国のメンバーが春奈を連れていったところは帝国の学内のサッカー場だった。部員以外は立ち入り禁止のところだったが、部員が許可した場合は入室することを認められているのだ。
春奈にとって帝国のサッカー部しか知らない場所は魅力的だったし、雷門にとっても大事な情報かもしれないから、別に悪い気はしなかった。

「どうかな?帝国のサッカー設備、すごいでしょー?」
「はいっ!すごすぎです!」

綺麗に整備されたグラウンド、常に新品のサッカーボールなどの道具、巨大なモニター画面・・・など、春奈にとって目新しいものだった。こんなにも違いがあからさまだと、圧巻されてしまう。

でも、春奈はどうして教えてくれたのか分からなかった。帝国にとってうまみのあることではないはずなのにどうして、と考えた。
ふと、沖縄男のあの言葉が頭によぎって、それもそうね、と思って春奈は帝国内を十分に楽しんで見学した。


「それで、ここは更衣室。私と一緒に入りましょうか、あの人たちはやましい心を持っていますからね・・・」
「お前が言うな、下心見え見えなんだよ」
春奈を半ば強引に更衣室にひきいれようとした五条を咲山がとめた。五条は残念そうに肩を落とした。

春奈はそのやりとりを見てクスクスと笑いだし、その様子を見た洞面がどうしたの?と聞いた。ただおかしかっただけですと涙目になりながら笑っている彼女を見てほっと息をついた。

「...お前ら、それと春奈。どうしてここにいる?」

はっと全員が後ろを振り向くとご立腹になっている鬼道がいて全員が冷や汗を流した。帝国のメンバーは春奈をつれ回していること、春奈は部外者の自分が帝国サッカー部に関係する施設にいることに負い目を感じていた。
後ろからひょっこりと佐久間が身を乗り出す。表情を崩さず厳しい顔をしている。
春奈を雷門町まで送ってやり、その後ゆっくりとその帝国の4人に説教をした。


「俺が怒っているのは春奈をサッカー部とかいろいろ見せたことじゃない」
「じゃあ、なんで怒っているんですかぁ!」
「俺も一緒に春奈と見てまわりたかったんだよ...」
よよよと泣く鬼道を見て、五条はあんなことを言ってしまったときに鬼道がいなくて良かったと心底安心したが、それ以外の4人は遠い目で鬼道のことを見ていた。






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