Thank U from now on



適当に女物の店に入り店員があれこれ進めるがままに色々と見てみたがどれもこれもオレの財布に見合わない額の代物で、結局路上で安物の指輪を買った。彼女の誕生日プレゼントですか?と聞かれて実はプロポーズ用だなんて答えるのは恥ずかしくて適当にまあそんなとこって答えた。ならかわいく包装しときますねーって言われたからありがたくそうしてもらった。ペアで買わないんですか?お安くしますよ〜と帰り際に言われたがあいにくそんな金はなかった。とりあえず礼だけ言ってポケットに小さな箱を押し込んだ。丁寧に結ばれてたリボンがぐしゃっとなった気がした。


家に帰るとまだあいつは帰ってきてなくて、なんか片付けでもしとくかーって思った。が、腹へって動けなくなった。そういやオレ朝飯しか食ってねーわ。くそ、マジバ行きゃよかったぜ。腹へってグダグダソファに寝転がってたらいつの間にか時間が経ってて気づいたらあいつが帰ってきた。

「ただいま」
「腹減った」
「ごめん、今から用意する」

疲れてんのに帰ってすぐ夕飯の準備させて悪い。こういうとき火神だったら手伝ったり作ってやってたりするんだろな。そう考えたらオレってこいつのこと幸せにしてんのか?火神の方がこいつのことちゃんと幸せにしてやれたんじゃねーのか?思い返せば喧嘩ばっかでデートしたりどっか飯食いに行ったりもあんましてなかったしな…。

「おい、どうしたんだよ!指でも切ったか!?」

いつもなら包丁の音がリズムよく聞こえてくるはずなのにキッチンからはあいつの鳴き声が聞こえてきた。どうしたんだよ…まさか怪我したんじゃねーだろうな!?いきなり起き上がったら勢い余ってソファーから転げ落ちた。いてぇ、けどそんなのどうでもいい。

「どうしたんだよ急に泣いたりなんかして」

聞いても無反応で、手のひらで顔を隠してるつもりらしいけど泣きじゃくっててるのは目に見えてわかった。なんか言いたいみてーだけどなんて言ってんのかわかんなくてとにかく落ち着かせようと後ろから抱き締めた。

「どっか怪我でもしたのか?」

どうやら上手く声にならないようで違うと首を振って示された。

「なんか嫌なことでも言われたか?」

もう一度首を振る。あ?ならなんだよって考えたらさっきの火神とこいつが仲良くやってる姿がパッと目に浮かんだ。もしかして…や、もしかしなくても。

「……あー、オレか?」

腕の中で小さくコクン、と首を縦にした。

「オレかー…」

やっぱりか…。手でこめかみのあたりをボリボリとかいてもう片方の腕でごめんなって意味を込めてさっきよりも強くギュッと抱きしめた。ここまでボロボロに追い詰めるほど弱ってたんだなお前。そっと振り向かせて今度は両手で抱き締める。そうだよな、女なんだもんな。オレなんかよりお前の方が今まで心配だったよな。ごめんな、オレ今までお前に甘え過ぎてたわ。あーオレすげえ情けない顔見せてるな。

「悪い、思い当たる節ありすぎてどれかわかんねー」

悪いのはオレってわかんだけど色々申し分けなさすぎてどれに対して怒ってんのか、泣いてんのかわかんなくて正直に伝えた。

「ゆっくりでいいから話してくれねーか?」

オレ馬鹿だから言われねーとやっぱわかんねーわ。

「好ぎっ?」
「…は?」
「わたっ、わたしのこ…ちゃん、と好っき?」
「好きに決まってんだろ。じゃねーとわざわざ…つか、ンなことで心配してたのかよ!」

はーっと盛大にため息をついた。なんだよ、当たり前だろンなこと。あー…まじ安心した。安心してそのままボスっとこいつの肩に頭を乗せた。

「なんだよ、そんなことかよ」
「だって…さ、いきんつめったいし」
「悪かった。オレも余裕なかった」
「携帯ばっか気にし、てるっし」
「あー…それな、悪い。あー…まだ言うつもりなかったんだけどよ」
「なに」
「移籍、決まった。日本で一番つえーチームに」
「うそ!?」
「今日やっと返事きた。新しいチームで結果出るまで言いたくなかったんだけどよ…その、待たせて悪かった。だから、その…あー…これからもオレといっしょにいてくんね?」

あーもっとちゃんと考えときゃよかったぜ。ポケットからさっきの箱を取り出しながら後悔した。まじかっこつかねーセリフ。しかも安物の指輪だしな。全然様になんねー。赤司や緑間に後で笑われんなぜってー。…まあ今のオレたちにはこれぐらいが丁度良いのかもな。そう思ってあいつの左手薬指にそっとはめた。

「安物で悪い、今度ちゃんとしたやつ買ってやるから」
「いいよ。それより、わかってるの?意味。左手の薬指は特別なんだよ?」
「ばーか、それぐらいオレでも知ってるっつーの」

おい、こいつ本当オレのこと馬鹿だと思ってんだろ。…ま、珍しく甘えてきてかわいいから許すとするか。

「ありがとう、大好き、あいしてる」

それも知ってるっつーの。返事すんのもめんどくせーからあっまいキスをしてやった。





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