「あ、伊月くんだ」
「あれ、名字」
「明けましておめでとうー」
「明けましておめでとう。初詣か?」
「うん、そっちも? 誰と来たの? 友達?」
「いや、友達……だけど、バスケ部だよ。そっちは?」
「あ、なるほどー。私は友達とだよ」
「そっか。……着物、似合うな」
「ほんとー? 伊月くんお人好しだから疑っちゃうなー」
「本当だって。……は、着物は美しきものだ、キタコレ」
「うん、キタコレキタコレ」
「名字の方がお人好しだろ」
「あはは。そんなことないよ、元日に伊月くんのだじゃれ聞けて嬉しいもん」
「……本気?」
「本気。ふふ、伊月くんって楽しいよね」
「楽しい……のか?」
「うん。ね、初詣さ、何お願いしたの?」
「……言ったら意味ないだろ」
「えーケチ。……伊月くん顔赤いよ?」
「寒いから」
「ふうん?」
(……おまえのこと、なんて言えるわけないだろ)