・本編ネタバレ
・全国の任那さんごめんなさい(いるのかな)
宮地が後輩のみょうじを気に掛けているのは一目瞭然だった。可愛い後輩がふしだらな男に食われやしないかと考えなくもなかったけど、これでいて根は真面目な男だ。寧ろ恋愛の経験値に関しては一般よりかなり低いだろうから、心配なのは彼自身の方である。下手に口出しするつもりは無いが、横から見ている俺としては何とも面倒というか、歯痒いというか、やきもきするというか、そんな話に成りそうな予感がしている。これで小説が一本書けそうだ。ぼんやりと手の中の飴玉を眺めている宮地の目は、明らかにその向こう側のみょうじを映しているのだから。
「みょうじに貰ったの?」
「は? あー、いや、これは違う」
これは、ね。俺が見てないうちにも何度か彼女と会っているのだろう。やはり、手を出す必要は無さそうだ。……まあ、ちょっと遠回しに背中を押してやるくらいなら、やってもいいのかなあ。
「任那さんとのこと、噂になってるみたいだね」
「みまな? ……ああ、あの後輩か。……は、マジで!?」
「うん、マジで」
嘘だけど。
ただ、みょうじは知っているだろう。任那さんと宮地の仲立ちをしたのは、皮肉にも彼女と俺だった。任那さんが書いた手紙をみょうじが俺に渡して、宮地に……というなんとも面倒な経路を辿って、彼女と宮地は関係を持ったのだ。みょうじは手紙の内容を知らなかったようだが、任那さんが仲が良いであろう友人に宮地との関係を話してしまうことも充分考えられる。昨日の生徒会の会議でのみょうじの様子からして、知ってしまったと考えるのが妥当だろう。
「任那さん、みょうじと仲良いらしいね」
「……、みょうじは、関係無いだろ」
「関係? 俺は会話を広げようと思っただけだよ」
宮地は苦い顔でこちらを睨んできた。怖い怖い。肩を竦めてにっこり笑えば、苛立たしげな舌打ちをされる。短気は損気だぞ。
「蛇足っつうんだよ、そういうの」
「関係無いんだったらいいじゃん」
「知り合いに知られていいことなんか無いだろ」
「じゃあやめればいいのに」
大体、俺が宮地に言わなくてもみょうじが知ってしまったことは今更ねじ曲げられることじゃない。墓穴掘ってるって、気付いてないのかな。
真面目過ぎるんだよ、宮地は。
「……先輩がそういう事してるって知ったら、まあいい印象は抱かないよねえ」
「あ、たりまえだろ……つーか、関係無いって言ってんだろ刺すぞ」
「ごめんごめん」
………………
突然終わる
御手洗視点ということで、文章をちょっと堅くしてみたり