※突然始まって突然終わる



どうやって食うんだろう。みょうじの動作を見守る。みょうじは俺の隣に座ると、フードを取って、お面を外した。

……。

外すのかよ!

いや、もっと勿体ぶろうぜ? 今まで築き上げてきたキャラを大切にしようぜ、なあ!?

「どうしたの? 森山くん」

「い、いや……」

ちらりと視線を斜め下に寄越しながら、みょうじがまるで今の状況が当たり前だと言うように聞いた。……俺が期待し過ぎたのか。
一昔前のヒーローを模ったお面の下から出てきたのは、まだあどけなさが残るものの、将来いろんな男を虜にするんだろうなと想像出来てしまうような美女の原石だった。正直に言おう、とてもタイプである。ストライクだ。むぐむぐと購買のパンを頬張る様子が小動物みたいで、非常に可愛い。

「なんでお面なんか付けてるの、可愛いのに」

「最初に言ったじゃん」

「……そうだっけ」

ごくん、とパンを嚥下して、聞いてなかったのかよ、とみょうじが呆れたような声音でぼやいた。

「シュウケイキョウフショウなんです」

「しゅう……え?」

「しゅう、けい、きょうふしょう。醜い形の恐怖症。自分の顔に極端に自信が無いの」

「…………」

恐怖症って、生活に支障をきたす場合を言うんだよな。あっさりお面外した当たり、なんとなく説得力がない。まあ確かに、クラスの中とかでは絶対外そうとしなかったけど……。

「嘘だけどね」

……。

嘘かよ。

嘘かよ!!

「薄々気付いてはいたけどみょうじちゃんって変人だよね」

「何そのみょうじ『ちゃん』って」

「可愛い女の子を呼び捨てには出来ないけど今更呼称変えるのもあれかなと思った結果」

「薄々気付いてはいたけど森山くんって変人だよね」

否定出来ない。ただみょうじよりは普通だと思う。パンを咀嚼し飲み込み、またみょうじが口を開いた。

「醜形恐怖症の子がね、いたんだよ。前いた学校の同じクラスの男の子」

「……それは本当だな?」

「うん。見られるのが怖いっていう病気だからさ、私が変なお面付けてたら私に視線が流れるでしょ。したら、人の目気にせずに済むかなーって」

言いながら、みょうじは少し目を伏せた。「まあ、上手くはいったよね」間に挟まれた「は」に、どんな意味が込められているのか。いろんな恋愛を見てきた俺には、まるで彼女の過去を書き起こした小説を読むように、唐突に、曖昧に、理解してしまう。
彼女は人と目を合わせない。仮面も、視線も、飄々としているようでその実酷く頑固な彼女の、意地なのかもしれない。

「ただね、視線を彼から離すためには、視線を集める私は彼から離れる必要があった」

つまりは、そういう事だろう。




………………
視線のお話
夢主のキャラが濃すぎる+なんかめんどくさいので没った話
相手は考えてなかったので森山先輩にしたのはなんとなくというか
まあぶっちゃけ一部のくだりを書きたかっただけ
(ちゃん付けとか恋愛とか)

森山先輩は恋愛相談とかいっぱい受けてそう
自分自身は全然恋愛しない
女の子は好きだけど、恋愛ってなると「んー?」みたいな
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