少し強張った肩。ぎこちない笑顔。何故か何時もよりずっと愛しく見えて、ふ、と息を吐いた。
「なんだよいきなり呼び出しやがって」
「宮地が迷惑かけて良いって言うから」
「言ったけどよ……で、なに?」
「ちょっと、見てわかってよ」
苦笑いしながら、みょうじは手に持ってた小さな紙袋を大切そうに俺に差し出した。
「誕生日おめでとう、宮地」
みょうじが照れたように笑う。……まじか。いや、メールくらいあってもいいかもしれないとは思ってたけど、プレゼント付きって。しかも直接って。充実し過ぎだろ。だってあのみょうじさんですよ?
「甘党でバスケ馬鹿な宮地くんにケーキとプレゼントです。フォーユー」
「……開けていい?」
「ど、どうぞ」
「いや、さっきから何その敬語、緊張してんのかよ」
みょうじは仕方ないじゃん、と口を尖らせる。何が仕方ないのかよくわからない。先にサンキュー、って伝えてから、受け取った袋の中から小さな箱と小さな袋を取り出した。箱の方はケーキだろう。綺麗に包装された袋の方を開けることにして、リボンを解く。
「……リストバンド?」
「うん。黒、似合うかなって」
「へえ、いいじゃん。欲しかったんだよな、こういうの」
「本当?」
「本当。ありがとな」
試しに手に通してみる。デザインも結構好みだし、みょうじが選んだって言われて納得できる感じがする。ありがたく使わせてもらうことにしよう。
「……あれ、つーかもしかして、この刺繍おまえがした?」
「ああ、うん」
「はあっ!? まじで?」
一時期はまってたんだよ、と弁解(弁解?)するみょうじの言葉を聞きつつ、しげしげとリストバンドを眺めた。いや、普通に売り物かと思った。……そういえば、わざわざ大坪が教室まで呼び出して好きな色を聞いたのにも関係あるのかもしれない。数日前の昼休みを思い出す。刺繍糸は、鮮やかな黄色だった。
「てか、甘党なの覚えてたのかよわざわざ」
「うん。宮地のことだもん」
「ふうん……は?」
ふと思った疑問を口にすると、さらりととんでもない答えが返ってきて思わず聞き返した。今、なんて言った? 聞き間違えかと思って、びっくりして顔を上げる。
「なんだそ、」
れ。みょうじの顔を見て、rとeは霧散した。横を向いた顔は耳まで赤くて、目線は広い図書室から言葉を探すようにうろうろしている。みょうじの見たことのない表情に、思わず息を詰めた。……なんだよ、この空気。
沈黙が続く。やがて言葉が見付かったのか、視線が寄り道しながらも俺の方に固定された。柔らかそうな唇が、開いて、声が生まれる。
「好、き」