大坪のディフェンスをなんとか抜いて、スリーポイントラインの少し内側からシュートを決める。抜かれた癖に大坪は嬉しそうに笑いながら、「ドライブ上手くなったな」と言った。少しだけ、ほっとする。練習はどうやら無駄にはなっていないようだ。
「俺たちはそろそろ切り上げるか。高尾、戸締まり頼むぞ」
「了解でっす! お疲れ様っしたー」
今日は珍しく緑間が居ない。1人で練習を続けている高尾に先に上がることを伝えて、練習を終えることにした。
シャツを引っ張り上げて汗を拭う。夏だろうが冬だろうが、これだけ動けばかなり汗だくになる。足元に転がってきたボールを、籠に投げ入れながら、火照った身体を冷ますように息を吐いた。
「そういえば、」部室に入ってドアを閉めると、大坪が思い出したように口を開いた。
「宮地」
「あ? 何?」
「最近うちのクラスに来ないな」
「……」
思わず、おまえは木村か! と叫ぶところだった。確かに大坪の、基みょうじのクラスに最後に行った日から1週間ほど経つが、だからなんだ。だからなんだ。
汗ばんだシャツを脱いで制服に着替える。ゆっくり3拍数えて、自分が落ち着いたのを確認して言葉を吐き出した。
「呼ばれもしねーのに行かねえっつの、わざわざ課題見せに行くのめんどくさかったしありがたいわ」
「そうか。よく来るから来たときに話そうと思っていたんだが」
「はあ? 何を?」
「ちょっと話があってな。明日の昼休みにうちのクラスに来てくれないか」
此処で話せばいいじゃん、とも言えず、よくわからないまま頷いた。たまにこいつは思わせ振りな行動に出る。そういう余裕なところがあるから、大坪先輩なんて呼ばれるんだ。
「最近編み物にはまっていてな」
「ふうん。……はあっ!?」
「誕生日、楽しみにしとけよ」
「ええ……!?」