「なんや自分、甘い匂いするけど」
「ひぎゃあ出た！」
「そんな妖怪に会ったみたいな顔せんといてえや、傷付くわあ」
「妖怪みたいなもんじゃ……あ、いえなんでもないですごめんなさい」
「なんや、変なやっちゃな。で、その匂いはなんや」
「ああ、チョコじゃないですか。クラスの友達に配ったんですよ」
「ふうん？ 名字のくせに女子みたいなことしとんの」
「はあ、女子ですから」
「せやったん？」
「……」
「冗談やん。手作りなん？」
「そんな女子みたいなことしませんよ。市販のやつです」
「自分さっきと言うてることちゃうけど」
「はっ、今吉さんにはありませんよ！」
「別に期待しとらんからそんな身構えんでええで」
「え」
「なんやその顔」
「……別に、なんでもないです」
「自分何隠してるん？」
「か、くしてないです何を言っているのだよ」
「秀徳６番みたいな言い方せんのやで」
「……あ、の、今吉さん」
「ん？」
「友人に配ったチョコが余ったんですけど、食べます？」
「はあ、最近のマネージャーって余りもんを先輩に押し付けるん？ 嫌やわあ」
「何処のおばさんですか。じゃなくて、ですね！」
「何やねん自分さっきから、ワシもう部活やねんけど」
「……っ、やっぱ、いいです、なんでもない」
「ほんまに？」
「…………」
「何泣きそうになっとん、誘ってるん？」
「ち、ちが、」
「ほら、それ出し」
「えっ」
「かわいいかわいい後輩のバレンタインチョコレートが欲しい言うてんねん」
「……、はい」
「ん、おおきに」
「っ、今吉さんの、ばーか……」