「ええ、全部貰わなかったんですか!?」
「気持ちが伴ってないのにチョコレートだけ受け取るのも良くないのかなと思って」
「伊月さんって誠実だけどちょっとずれてますよねえ……もう……」
「貰ったほうが良いものなのか?」
「そりゃあ! だって一生懸命作ったり選んだりしたのに、要らないなんて言われたら悲しいじゃないですか!」
「まあそうだけど……」
「今ごろ伊月先輩にふられた女の子たちは家で泣きながら先輩にあげるはずだったチョコレート食べてますよ」
「う……」
「なんて罪な男でしょう伊月先輩ったら……!」
「なんか、悪いことしたな……」
「あ、伊月先輩謝ろうとしてるでしょ」
「え、ああ、それもダメなのか?」
「ダメですよ、ダメダメ。全く伊月先輩ってコートは見えても乙女心は見えないんですね」
「それは余計なお世話」
「とにかく、女の子はふられた上に謝られたらさらに惨めになるんですよ。謝るというのはへり下る、つまり元々上に立っていた人がやる行為ですからね」
「なんか謎の説得力があるな……」
「だから、伊月先輩はとりあえず私のチョコを何も言わずに受け取るべきです」
「えっ、くれるの?」
「義理ですからね、義理! 勘違いしないでくださいね!!」
「(本命なんだ……)ありがとう、ちょこっと貰っとく」
「そんなんだから彼女出来ないんですよ」
「ええっ!?」