「す、好き」

むう、と唇を尖らせて、顔を真っ赤にして、これでいいのかと言いたげな顔でこちらをちらちら見上げてくる名前ちんがもうどうしようもないくらい可愛くて、ぎゅうぎゅう抱き締めた。「うぐ、苦しい、ばか」ごめん、でも知らない。


俺の彼女は俗にツンデレとか言われるタイプの子らしくて、なかなか好きとからぶとか言ってくれない。俺が毎日いっぱい好き好き大好きあいらぶゆーうぉーあいにーって言うんだけど、それすら名前ちんはちゃんと受け取ってくれないのだ。
仕方ないからまいう棒をもそもそ食べてると、名前ちんはいつも恨めしそうな顔でこっちを睨んでから、ぽすんと俺のお腹を殴る。全然痛くない、けど、痛いふりしないとまた拗ねるし、俺は止めてーって言う。そしたら名前ちんは満足そうな表情でもっかい俺のお腹をぽすんと殴る。それから、鞄からチョコクッキーを出してもそもそ食べる。

「むっくん」

「なあにー?」

「きらい」

「俺は好きー」

次は顔を赤くする。嫌いなんて言わないでよ、嘘でも結構寂しいんだ。でも俺だってわりと素直になれないから、寂しいとか言わずにぎゅーってちっちゃい名前ちんを抱き締める。
いつもの言葉少ななやり取りの中、何オクターブも高い好きが突然生まれたのは今日が初めてだった。「むっくん」「んー?」腕の中でもそもそ名前ちんが動いて、真っ赤な顔でむっつり唇を尖らせてから、名前ちんはちっちゃい口をちょこまか動かした。

「好きだよ」

「……?」

「だから、す、好き」

これでいいのかと言いたげな顔でこちらをちらちら見上げてくる名前ちんがもうどうしようもないくらい可愛くて、ゆるゆる表情筋から力が抜けていく。ぎゅうぎゅう抱き締めた。ら、名前ちんは「うぐ」って変な声を出した。

「く、苦しい」

ごめん、でも知らないし。
匂いを楽しもうとすんすん鼻を鳴らすと、ひぎゃあって肩を強張らせた。「むっくん」「んー?」んーじゃないでしょまったくもー、むっくんきらい。口癖みたいに繰り返すその言葉も実は嫌じゃない、寂しいけど。

「名前ちんは俺のこと大好きだもんねー」

「ぎゃー」

「よしよし」

「わたし子供じゃないし」

「うんうん」

「聞けや」

ぺしんと叩かれる。名前ちんはいつも俺を叩いたり殴ったりするけど、全然痛くないし。

「あのね」

「うん?」

「たまには言わないと、なんかー、だめかな、って思ったの……」

「何それー、言い訳?」

「わかんない、知らない」

「じゃあまいう棒食べよう」

「……うん」

はいってまいう棒渡すと、名前ちんは袋を開けてもそもそ食べた。おいしい? ……びみょー。びみょーだって、こんなに美味しいのに。わかってないなー名前ちん。でも名前ちんが、びみょーって言うわりに嬉しそうににまにましてて面白いから許してあげようかな。俺優しいー。



(幸せはその言葉で出来ているのさ)
………………
遅くなってごめんなさい!
むっくんのお話ということでゆるっゆるな雰囲気をめざしました
よくわからないけど、なんとなくで読み取っていただければ……

そらた。様、素敵な言葉ありがとうございました!

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