※朝ごはん/準備不足/麻婆豆腐



ゆるやかな意識の浮上で目を覚まし、布団から起き上がって伸びをした笠松は、十畳程の和室に森山や小堀、早川がまだ寝ていることを確認してから、時間を確認するために時計を見、そして目を二三度擦った。おかしい。起床時間をはるかに過ぎている。寝ぼけているのだろうか。
何度確認しても時計の針は戻らないばかりか、秒刻みで時間は過ぎていくばかりだ。就寝時にセットしていた目覚まし時計のアラームは未だに鳴っていないはずなのに、と枕元に視線を遣って、そして笠松は溜息を吐いた。黄金色の尻尾と耳を持つ黄瀬が、目覚まし時計を抱き込んで寝息をたてている。アラームセットは時計の上にあるボタンを押すだけの簡単なものだ。黄瀬が抱え込んだときに、アラーム解除されてしまったに違いない。
笠松はもう一度息を吐きだし、

「おら、朝だぞ!」

大きく声を上げた。






「残り物か……」

「仕方ねぇだろ、全員そろって寝坊しちまったんだから」

残念そうな顔をする森山に向かって、笠松は大きく眉を顰める。炊きたてご飯の上に乗っかるのは、夕食の残りものである麻婆豆腐だ。合宿中の食事は全て自炊である。だが、笠松たちは寝坊してしまった。夜のうちに米を研いで炊飯器にタイマーセットしていたから良かった。昨夜、麻婆豆腐を作り過ぎたのも、今となっては幸運だったと思える。
朝から麻婆豆腐丼は重いかもしれないが、食べるものはこれか、白ご飯のみという選択肢しかない。麻婆豆腐とご飯をお行儀よく分けて食べているような時間はないのだ。
早川は文句も言わずにもぐもぐと食べているし、小堀は黄瀬の面倒を見ながらも食べ進めている。つやつやの白いご飯の上に、辛いから少しだけな、とのっけられた麻婆豆腐に、きらきらと金色の目を輝かせる黄瀬は可愛いものだ。


「ほら、黄瀬も食ってんだぞ。お前も早く食べろ」

「はーい」

笠松の言葉に促されて、森山も麻婆豆腐に手をつける。
早朝とは言えない時間帯の太陽が、開け放された窓から顔を覗かせていた。


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意味も無いのに黄瀬くんをけもみみショタ化させた。お狐さんではなくワンコ寄り。診断メーカー、ごはんのお題:http://shindanmaker.com/230990 より。


12/17〜12/31(2012)
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