※豆知識かがみん



黒子と共に訪れたときに食べた火神の手料理を気に入ったらしく、黄瀬はたびたび火神家へと遊びに来るようになった。遊びに来る、というよりは、火神の作る料理を食べに来る、と言った方が正しいだろう。このホッとするような味付けが堪んないんス、とはにかみながら言われてしまえば、言おうと思っていた文句も引っ込んでしまうのだ。
今日も今日とて、黄瀬は火神の家へと訪れる。ピン、ポーンと黄瀬が押すとき特有の少しばかり間の抜けたインターホンの鳴る音が火神の耳へと届いた。





「ご近所さんにカブもらったんスよ、ここに来る途中で」

と言いながら、黄瀬はビニール袋に入った葉のついたままのカブを火神に手渡す。何か作って欲しい、と口には出さないが表情で十分に分かってしまう。

「飯、食うつもりなんだろ。手ぇ洗ってこいよ」

「はーい」

パタパタと洗面所へ駆けてゆく黄瀬を見遣り、火神はキッチンへと向かった。真ん丸としたカブと葉を丁寧に水で洗い、まな板の上へと置いたところに、黄瀬が覗きに来る。その右手には、火神の冷蔵庫に常備されるようになったミネラルウォーターを持っていた。
ざくり、と葉とカブを包丁で切り分けながら火神は口を開く。

「秋のカブは甘いんだよな」

「へぇ、そうなんスか?」

「カブは春と秋が旬で、春のは柔らかくて、秋のは甘い」

火神っち、よく知ってるっスね、と呟く黄瀬の視線は、ピーラーを使わず包丁で器用に皮を剥いていく火神の手元に釘付けだ。

「あ、黄瀬、これどうやって食いたいんだ?煮物?」

そういえば聞いてなかった、と尋ねる火神に、黄瀬はにっこりと微笑って答える。

「クリーム煮にしよ」

「和風じゃなくて?」

「冷蔵庫の牛乳、消費期限今日までだったっスよ。使わないと」

火神の脳裏に浮かんでいたのは醤油色に染まったカブだったが、黄瀬の言葉にそれがミルク色へと変わる。確かに、クリーム煮もいいかもしれない。冷蔵庫には、余り物のベーコンや玉ねぎ、そして特売で買ったはいいものの使いそびれたしめじが入っていたはずだ。カブの葉も一緒に煮てしまえばいい。米を炊いて、簡単な汁物を加えれば、それなりの食事にはなるだろう。
切ったカブを水にさらし、小気味良い音を立てながらカブの葉を切っていく火神の隣で、黄瀬は嬉しそうに愛おしそうにそれを見つめていた。



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料理人火神と助手黄瀬くんなお料理番組を見たいと考えてた。


11/18〜12/17(2012)
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