色様々


ああ、眩しいなぁ、と高尾は思った。


己の任されている山を常盤と共に見回り終えて、長いこと住んでいる屋敷の前に降り立つと、常盤の鳴き声に気付いた黄瀬が家から走り出てくる。

「お帰りなさい、高尾っち、常盤っち!」

綺羅綺羅と光を弾くその髪も嬉しそうに細まるその瞳も、今まで高尾の生活には馴染みの無かった色で、だからこそ余計に美しいと思った。独特の呼び名も面白くて気に入っているし、常盤も同じく名を呼ばれると嬉しそうにしている。
黄瀬と暮らし始めてから一つ季節は過ぎ、山々の葉がそろそろ色づき始める頃だ。
綺麗な顔や体についていた傷も、天狗の妙薬のおかげで跡も残らずに完治している。

「ただいま、涼ちゃん」

出迎えてくれた黄瀬の頭を撫でて、おや、と高尾は少しだけ目を見開いた。
出会った当初は胸辺りにあった黄金色の頭が、今は肩の位置にある。そこから視線を落としていくと、着物の裾から白い足が見え過ぎていることに気付いた。黄瀬の背が伸びているのだ。

「涼ちゃん、背伸びたね」

「そうっスか?」

自分では気づかないものなのだろう。
首を傾げる黄瀬に向かって、高尾は笑いかける。

「一緒に、着物買いに行こっか」

これはいい考えだ、と高尾は胸中で自画自賛した。
なぜもっと早くに気付かなかったのだろうか。高尾には着物を扱っている友人もいるし、それにこんなに綺麗な子供に自分のお古である黒い着物を着せているなんて味気ない。
萌黄に若紫、梅鼠に女郎花。黄瀬にはどんな色が似合うだろうか。







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