※大学生くらい。

恋人がサンタクロース、とゆーみんの曲を口ずさんでしまったのは、昨日買い物に出かけた街がクリスマス一色だったからかもしれない。お父さんとデートしてくるから、涼ちゃん、もし暇ならお留守番してちょうだい。少女のようにわくわくしている母の頼みを断れるはずもなく、黄瀬は笑顔で彼女を見送ったのだった。
一番上の姉は、子供と一緒にケーキを作って旦那さんの帰りを待つらしい。下の姉は、何としてでも定時で上がって同僚と酒を飲みに行くのだと言っていたっけ。思えば、一人で過ごすクリスマスというのは初めてかもしれない。去年までは部活があったし、バスケをする前は家族と過ごしていた。そして今年、忙しそうな恋人を誘うのも憚られて何も言わなかった結果、パッとしない聖夜を迎えることになったのである。

「ご飯、何食べようかな……」

一人分だけ作るのも面倒だけれど、だからといってインスタントなんていうのは味気ないしあまりに寂しすぎる。留守番を任せられたために、外食するわけにもいかない。それにカップルや家族連れで溢れ返る中、一人で食事をする気にはなれなかった。

「もう寝ちゃうのもいいかもしれないっスね」

不貞寝という結論に辿り着いた時、静かな部屋にインターホンの呼び出し音が響いた。両親や姉が帰宅するにしては早い時間だ。宅配便だろうか。玄関を映している液晶を確認もせずにドアを開けると、目の前が真っ赤に塗り潰される。
わっ、と小さく声を上げた黄瀬の耳に、くすりと笑う音が聞こえた。

「メリークリスマス、涼太」

視界を埋め尽くした大輪の薔薇の花束を受け取ると、その先には恋人である赤司の姿が見えた。左手に、黄瀬が赤司宛に送っていたプレゼントの箱を抱えている。

「素敵な贈り物をありがとう。嬉しいよ。でも、もう一つ、欲しいものがあるんだ」

何故ここに赤司がいるのかときょとんとしている黄瀬に構わず、赤司は言葉を続ける。胸元に抱えた赤い薔薇よりも紅い瞳を細めて、彼は微笑った。

「君をくれないか」

それがプロポーズだと気付くのに随分と時間をかけてから、黄瀬は上手く働かない頭で頬を染め一つ頷いた。赤司は満足げに小さく息を吐く。



花束の中には指輪の入った小さな箱が隠されているのだけれど、黄瀬がそれに気付くのにはもっと時間がかかりそうだった。



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赤司くんは王子様。

12/23〜3/14(2013〜2014)
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