エア無配サンプル(赤黄)
(03/16 05:39)


※赤司くんのご両親からも気に入られる黄瀬くん。



(無配サンプル)

着物持ってないっス、という黄瀬を連れて部活から帰宅した赤司を出迎えたのは、赤司の母親だった。そうなの、初詣に行くのね。母は常よりもにこにこと上機嫌で、着物をいくつも桐箪笥から引っ張り出しては広い和室に並べていく。最近の男の子はなかなか着物を着てくれないから。嬉しそうに着物を手に取る母を、赤司はぼんやりと見つめていた。初めて訪れた赤司の家で、まるで着せ替え人形のように着物を取っ替え引っ替えされている黄瀬は戸惑うように眉根を下げる。助けを求めて赤司を見るも、絶対的な主将は母に求められたときにだけ、黄瀬に着物が似合っているかどうかの感想を述べるばかりだ。
夕食時までかかって赤司の母が選んだのは、鶸色の着物と白地に桜の散る羽織であった。母の見立てに間違いはなく、男にしては可愛らしいように感じられる着物は、黄瀬によく似合っている。

***

「このお着物、涼太さんに似合うんじゃないかしら」
母の言葉と共に、若菜色の友禅の着物が赤司の目の前に広げられた。母はいたく黄瀬のことを気に入ったようだ。珍しい柄の着物が手に入ったから、実家から京野菜が送られてきたから、と何かと黄瀬を家へと呼びたがる。それに赤司が反対することはないし、黄瀬も招かれるたびに毎回訪れるから、嫌がってはいないのだろう。
「それなら今度、黄瀬を家に呼ぶよ」
赤司の言葉に、母は嬉しそうに目尻を下げた。食事も用意した方がいいわよね。そう呟いて、黄瀬が来る日の献立を考え始めている。

若菜色の着物は、黄瀬によく映えた。似合っている、と赤司と母、そして仕事が休みだからとたまたま家にいた父にも褒められて、黄瀬ははにかんだ。日常生活で褒められ慣れているはずなのにその表情は新鮮で、赤司は良いものを見たと微笑む。
一緒に庭を散歩しないか、と黄瀬を誘っている父の傍で、薄桃色の銘仙を手に取りながら母は残念そうに呟いた。
「涼太さんが女の子だったら、征十郎のお嫁さんに来てもらうのに」





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