エア無配サンプル(火黄)
(03/16 05:38)


※火神が黄瀬限定ショタコンです。
でもきっと、黄瀬が十分に成長するまでは手を出さない。



(無配サンプル)

これはさすがにまずい、と火神は思ったのだ。心臓を天使の放った矢で射抜かれたという漫画によくある描写がこれほどまでにぴったりと当てはまる出来事は、火神の二十年以上生きてきた中でも初めてのことだった。
従姉の子である生後二カ月になる赤ちゃんが、すやすやと眠っている。まだ薄いが金色の髪も相俟って、まるで天使のようだ。その柔らかな頬を火神が興味深げに優しく指の腹で押すと、小さな天使はぱちりと黄金色の瞳を覗かせて指の先を咥えて吸った、ちゅう、と。
母親の乳首と間違えたのだと分かっていても火神の脳天には雷が落ちたかのような衝撃が走り、慌てて指を引っ込める。それに驚いたのかむずがり始めた赤ちゃんを従姉があやし始める傍らで、火神はどきどきと大きく脈打つ胸を押さえながらオーマイゴッドと小さく呟くことしか出来なかった。

***

「たいがー!」
「ぐえっ」
ぼふんっ、と勢いのついた子供の重さが腹の上に乗っかって、火神は情けない声を出す。金色の髪で蜜色の瞳の、火神をアブノーマルな世界へと引きずり込んだ元凶が、にこにこと笑っていた。ランドセルとは思えない洒落たデザインの、水色の鞄を背負っているところを見ると学校帰りなのだろう。
「たいが、いつまで寝てるんスか。お寝坊さんは、お仕置きっスよ!」
「わ、ちょ、待て、こら……っ!」
毛布の下に入り込んだ黄瀬の小さな手が、こちょこちょと薄いシャツの上から火神の脇腹を撫でる。火神は別にくすぐったがりなわけではない。夜勤明けの惰眠を貪っていたところを起こされて、下半身の方に生理現象ともいえる異変が生じていることが問題なのである。
「たいがー?」
慌てた火神に両手を拘束されたまま、黄瀬は不思議そうに大きな目を瞬かせて首を傾げた。さらりと重力に従って流れる金糸と、僅かに尖らせた桃色の唇が火神の視界に否応なく入り込んでくる。
ああ、もう、くそったれ。火神は内心呟いて、思いっきり力を込めて己の両頬を引っ叩いた。このままじゃまずい。それはもう、黄瀬が生後二カ月の赤ん坊だった、あのときからずっと思っている。




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