即興小説トレーニング(火黄)
(02/17 20:48)


【もこもこ多用注意】
※お題:無意識のもこもこ

いつものように自宅マンションへと辿り着いた火神は、いつものように自宅のある階まで辿り着き、そうしていつものように玄関ドアの鍵を開けた。靴を脱ぎ、荷物を一旦置いて、うがい・手洗いを済ませ、リビングの照明をつける。ここまでは、そう、いつものことだったのだ。
リビングの中心部に、もこもことしたものが存在していることに気付き、火神は疲れているのかと一旦目を擦ってから、再び目を開いた。依然として存在しているもこもこに恐る恐る近付いて、脇にしゃがみ込む。とてもよく見覚えのあるお日様色の髪の毛が、もこもこの隙間から現れていた。そういえば、玄関に黄瀬の靴があったようななかったような。訪問メールももらっていないため、わざわざ玄関をチェックしたりはしていなかった。

「おい、黄瀬」

ゆさゆさともこもこを揺さぶると、小さくくぐもった声が聞こえてくる。
というか、何だこのもこもこは。ぬいぐるみの羊のようだ。すごく、もこもこしている。

「あ、おはよーっス、火神っち。お邪魔してるっス」

「あぁ、おはよう。こんなとこで寝てんなよ、風邪引くぞ」

「寝るつもりはなかったんスよぉ。ね、見て見て、これ。可愛いでしょ」

そう言って、黄瀬はもこもこを広げてみせる。もこもこは着ぐるみのようになっていて、フードまで被っている黄瀬の頭の先から足の爪の先まで全身がもこもこだ。

「どうしたんだよ、これ」

「お父さんからのプレゼントなんス。うちのお父さん、無意識にもこもこが好きなんスよ」

無意識にもこもこが好きって何だ。高校生にもなった息子にプレゼントするのが着ぐるみってどうなんだ。いや、もこもこしてる黄瀬も可愛いけれど。
黄瀬に対するツッコミと可愛さとが、火神の頭の中をぐるぐると巡っている。そんなことを知りもせずに、黄瀬は蜂蜜色の瞳を楽しげに煌めかせて、火神にもこもこを差し出したのだ。

「火神っちも着てみなよ、もこもこ」

癖になるっスよ。
こてんと首を傾げるその様に、もこもこに対するツッコミがどこかに飛んで行ってしまった。もこもこした黄瀬も可愛い。もこもこデビューしてみるのも悪くない。そう結論付けてしまった程度には、火神は黄瀬のことが好きである。



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