潤んだ目に、荒い息に、赤く染まった頬。どれも俺を興奮させるには十分すぎる要素だ。
こんなことして俺があんたのものになるとでも思ってんのかよ、と彼は潤んだ目で俺を睨んだ。
まさか、と笑いながら彼、正臣くんにそっと触れる。すると正臣くんはびくん、と大袈裟に跳ねた。その様子に薄く笑うと正臣くんは悔しそうに唇を噛んで、一層こっちを睨んだ。
事はほんのついさっき起きた。
仕事のために俺の家に来ていた正臣くんにお茶しない?と軽く誘うと、正臣くんはなんの疑いもなくいいですよ、と答えた。
そして俺が勧めた紅茶の中に媚薬が盛ってあって。紅茶を飲んだ直後、体に異変を感じた正臣くんはぎっと俺を睨んで何を盛ったんですか、と言った。それに対し俺は媚薬だよ、と平然として答え――そして冒頭に至る。
「正臣くんは肝心なところで爪が甘いね」
「死ねっ、」
俺はその言葉に口角を上げる。まったく口が悪いなあ。そんな子にはお仕置きだよ?と言うと正臣くんはびく、と怯えた目をした。その反応に気をよくしながら、正臣くんのシャツをめくりあげる。
「あれ、もう乳首たってるよ?」
「誰のせいっ、」
肌が外気にさらされたせいか、それだけで正臣くんは体をぶるりと震わした。あまり強い薬は盛ってないけど、それでも快楽に弱い正臣くんには十分効いているようだ。
すでにたちあがってるそれをべろりと舐め上げた。
「ひあぁっゃあっ、んっ」
「舐めただけなのにそんなに気持ちいいの?」
「ゃっちがう、んぁあっ」
正臣は頭をふるふる振るが、媚薬で高められた体には相当な刺激なのだろう。俺がそのまま舐めたり指で捏ねたりすると、正臣くんのそれはツンとたちあがった。それをすりつぶすように触ると正臣くんは高く啼いた。
「乳首だけでこんなにしてさあ、恥ずかしくない?」
「んっぁあっ、耳やだ…!」
「うそつき」
「んっん、ぅあっ、ひっ」
耳に舌をねじこんであげると正臣くんはいやいやと首を振りながら、いつもと比べ物にならないほどの快楽に涙を流した。
その涙を舌でぬぐいながら俺は下の方にも手を伸ばした。ズボンと下着を一気にずら下げて、柔らかい手つきで正臣くんの自身をやんわり包み込んだ。
「ひっゃああぁっんっ」
いきなり襲ってきた自身への刺激に正臣くんはいつもより大きな声をあげる。やわやわと緩く揉みしだいてやる。
「ふぁっひ、んっんっああっ」
「すごいねーもうぐちゃぐちゃのべとべと」
にんまり笑いながら意地悪く言ってみるが、刺激が強すぎて最早理性などないのか正臣くんの口からは喘ぎ声しか上がらない。緩い刺激なのに媚薬を盛られた体には強い刺激として襲ってくるのだろう。
ぐちゃぐちゃと自身を擦ってやると正臣くんは狂ったように喘いだ。
「ぁああっんっやっふぁあっ」
「そんなに気持ちいいの?」
「んっ、も、無理っひっ」
薄く笑いを浮かべて問うと、正臣くんはもう無理だと首をふるふる振った。その証拠に正臣くん自身はぶるぶると震え、もうすぐ限界だと切実に訴えていた。
上下に動かす手を緩めながら聞いてやる。
「いかしてほしい?」
「いっ、かせて…!いかせてえっ!」
理性など放り出して叫んだ正臣くんはすごく可愛かった。…でも。にたりと笑って言ってやった。
「今はいかせない」
そう死刑宣告のように告げると正臣くんはやだやだと泣き叫ぶ。そんな正臣くんにはお構い無しに擦っていた手をパッと離すと、熱を持ったまま放置された辛さに正臣くんは荒く息を吐き出した。
いいところまで高められて、あともう少しで達せられそうだったのにいきなり止められて。相当辛いのか、正臣くんは自身に手を伸ばした。
「あれ、自分でやっちゃうの?」
嘲るように笑うと俺の声も聞こえないのか、正臣くんは一心不乱に自慰行為にふける。
「んっんっふぁっ」
俺の前で己を慰めることしか知らない獣のように自身を貪る正臣くんはすごく淫靡で、普段の正臣くんからは想像も出来ない。そして正臣くんはまた自身を限界まで高め、更に自身を強く擦った。
「あっあっひっぁあああああぁああっ」
すると正臣くんは一際高く啼いて達した。体をびくびく震えさせながら背中を反らして、白濁を撒き散らした。いった直後で体を小刻みに痙攣させている正臣くんの耳元に息を軽く吹きかけて囁いた。
「いったね」
「ハアッハアッ」
「どう?俺の前でオナニーして俺にいくとこ見られて。いつもより感じてたね。どうしてかな?見られてるって意識してたから?」
責め立てるようにそう言うと、いったことで少し冷静になったのか正臣くんはぼっと顔を赤らめた。俺の前で自慰をしたということに今頃気づいたようだ。
「こっち向きなよ」
恥ずかしさからかこちらを見ようとしない正臣くんの顎を掴んで無理矢理こちらを向かせた。
「や、めろっ離せっ」
「いきなりいつもの調子に戻っちゃって可愛くないねえ。さっきまではもっと触ってだのいかせてだのって散々喘いでたのに」
「うるさいっ黙れ…っ」
ますます頬を真っ赤にさせ俺の手から逃れようとする正臣くん。
「君は最初に言ってたよね。こんなことして正臣くんが俺のものになるとでも思ってんのかって」
「それが、っ」
「君は俺のものにならないと言った。でも最中に君が何回俺を求めたか分かってるかい?」
「それは媚薬のっ」
「ただたんに媚薬のせいだけかな?」
口角を吊り上げてそう言うと正臣くんは言葉に詰まった。かまをかけてみただけなのに、言葉に詰まったということは何か思いあたる節があるというわけだ。この状況を自分の都合のいいように丸め込むぐらい俺には造作もないことだ。
「要するに君が俺のものになるとかいう以前に君は俺を求めてるんだよ」
「っ、この策士が、」
正臣くんはキッと俺を睨みながら毒づく。けどそんなものは俺にとって誉め言葉にしかならないから、ありがとうと笑顔で返してやった。
策略と戯言と囁き