俺は臨也さんが好きだ。それが報われているのかと聞かれれば、はいと答えるのは難しい恋なのだけど。けれど、どれだけ報われなかろうと好きなものはしょうがない、と思う。

「正臣くんはさあ、俺のために死ねる?」

臨也さんに呼び出され臨也さんの家に着いて、まず最初にかけられた言葉。まったく真意の読めない表情で臨也さんはパソコンの前から少し顔を覗かせてこちらを見た。

臨也さんは俺の気持ちを知っててひどいことを言う。そんなの、答えは決まっているのに。

「臨也さんのためなら死ねます」

「そう」

今の質問も気まぐれに聞いたものなのか、臨也さんはすぐ部屋のパソコンの画面に目を移した。俺は部屋の入り口でぼうっと突っ立っているしかなくこのあとどうすればいいのだろうか、とぼんやり考えた。

「そんな突っ立ってないで中入れば?」

「いや、雨で濡れたから中入ったら汚すんで」

臨也さんから呼び出しがあったのは15分前。俺は呼び出しがあってすぐ臨也さんの家に来た。あいにく今日は雨で、傘もささずに走ってきたから全身ずぶぬれだった。濡れてしまったことで体が冷え、俺はふるっと震えた。するとそれを見て臨也さんは白い何かをほうった。

「タオル。それでふきなよ」

「ありがとうございます」

優しいなあと思った。臨也さんは優しい。別に俺のことなんて気にしなくていいのにちゃんと気にかけてくれる。そんなこと、しなくていいのに。優しいなあ。タオルに顔をうずめて思わず口元がほころんだ。

俺が臨也さんのこと好きだと知っている人からすれば、お前は騙されてるとか思うんだろうけど、それは違う。臨也さんはいつでも優しいし、いつでも安心できる笑みをくれる。俺は一度裏切られたけどそれでもやっぱり嫌いにはなれなかった。けれど門田さんあたりにはやんわり忠告された。

あいつには近づくな。

近づけばお前が死ぬ思いをする。
そう、言われた。門田さんが親切心から言ってくれてることぐらい分かる。近づいてはいけない理由も、近づけばどうなってしまうのかも。むしろ俺が一番分かっているのかもしれない。けれど離れられない、離れたくない。一種の依存なのだろうか。

「昨日さあ、帝人くんに会ったんだよね」

「帝人…ですか」

「うん。やっぱあの子俺に好きだなあ」

「好き、っていうのは、」

「うーん、何て言うか底が知れない?その底知れなさが俺は好きだね!つくづく人間を好きになってよかったと思うよ!」

あはははと笑いながら回転イスをくるくる回す臨也さん。臨也さんはにたりと嫌な笑いを浮かべつつ横目で俺を見る。最近臨也さんに気に入られている帝人。もちろん顔には嫉妬してますなんて出さないけど、まったく帝人に嫉妬してないと言えば嘘になる。気になる、の意味は今はさておきとりあえずは臨也さんに興味を持ててもらっているということに対する嫉妬。

羨ましい。俺だって。
そう思っていたら臨也さんが横に来てすっと俺の手をひいた。すぽっと腕の中におさまった俺は臨也さんの顔を見上げた。臨也さんはさっきのにたりとした笑いとは一転して、なんの歪みもない完璧なその笑顔をしていて、今さっき悩んでたものがなくなってしまった。

ああ、やっぱり俺は臨也さんに依存しているんだな。いつの間に臨也さんなしでは生きられなくなってしまったんだろうか。他のことはどうでもいい。臨也さんのそばにいれるなら、なんだっていい。なんでもするさ。そう、それこそ死さえいとわない。





パラサイトラブ








人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -