別に信頼しているとかそういう話じゃない。もとより信頼なんかしていないしね。私は誠二を愛しているし、あいつは何かよく分からないけど人間を愛しているようだった。知ればしるほど分からなくなる人間。それが折原臨也だ。

折原臨也の元で働きだしてから、少し折原臨也のプライベートについて触れる事が何回かあった。双子の妹がいて、来神学園の卒業生で、など履歴みたいなのは一通り調べてみたけど何一つ変わったところはない。紙の上ではただの一般人、というわけだ。

だが現実に生きる折原臨也は明らかにただの一般人ではない。人の心をゆさぶり、騙し、甘い言葉で誘い、情報を引き出す新宿を拠点とした情報屋。その引き出した情報をパズルのピースのように当てはめていき、新宿、もしくは池袋の重要な秘密を常に持っているのもこの男。

たしかに新宿、池袋でうまく生きていくにはこの男と仲良くしておけばだいたいうまくいくようだ。実際"知り合い"はたくさんいるようだし、多少危ない人との関わりもしっかり作ってあるようだった。

まあ、私には何の関係もないけど。だけど毎日大量にくるメールをチェックする身にもなれってのよ。

友達らしい友達からのメールは来ないくせに、仕事のメールだけは大量に来るわよね。前にそう言うと、友達?はは、いるからとか言われたわね。まあ興味ないんだけど。

折原臨也という男に興味はない。けれどあの男を世話しているのは実質私だ。

日頃の料理はもちろん、折原臨也がたまに漏らす愚痴に付き合ってあげるし、(相づちを打つだけ。そうなの、とかへえ、とか。話すことによって鬱憤が晴れるらしいわね)平和島静雄にこっぴどくやられたときはきちんと介抱してあげるし、(傷には包帯を巻いたり、薬を塗ったりして、後は痛み止目を飲ませて寝かせておくだけ)波江ーとか言いながら抱きついてくるのを許してるし(いつ私が抱きつきを了承したかしら、まったく)友達のいない折原臨也の自慢話も聞いてあげている(あらすごいわね、とかなんとか言っておけば、満足するらしい。いくつの子供よ)。

仕事だって私はミスしたことはない。言われたことはきちんとこなすし、データ整理だってあの膨大なデータを毎日整理してやっているのは誰だと思っているのかしら。

私たちは痛みを分かち合う、とか慰めあう、とか同情する、とか別にそんなことをしているわけじゃない。仲間でも味方でもないもの。もとよりそんなものお互い必要ないし、あるだけ無駄っていう考えだし。

ただなにかあったら傍にいって話を聞く。それだけのこと。

私だってこの男には感謝している。あのままだったら警察の世話になっていたところを、折原臨也が何をしたのかは知らないがとにかく助かったのは事実だ。それが私を手駒にするための計画だったとしても、私は興味はない。

お互いどこまで相手に踏み込んでいいのかよく理解しているし、まず何か弱味が握られても絶対にこいつは外に漏らさないだろう、という自信もある。それを信頼関係、と呼ぶのならそうなのかもしれない。けれど私たちは境界線をしいている。それがこちらの世界でのルール。折原臨也のパートナーでいるためのルール。

―――まあ新宿にきて何か困ったら折原臨也を頼りなさい。あいつは人間性は破壊されつくされているけど、持ってくる情報に嘘や偽りはないわ。ただその情報を元にどう動くのかはあなた次第。それによってあの男の手駒となっても、こっちの世界に無理矢理引きずり込まれても私達情報屋は一切責任をとれないから、利用には気を付けなさいな。



愛のなき主従










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これ誰得なんだろうか…
とにかく波江さん好きです〔



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