別れてから一度も連絡はとっていなかった。それどころか会いさえしなくなっていた。前は何の約束もしてないのにばったり池袋で、なんて日常茶飯事だったのに。

だが、これでいい。

臨也の顔を見たらまた俺は自分が止まらなくなるだろう。今臨也に会って自分が何を臨也にしてしまうのか検討もつかなかった。もしかしたら殴るかもしれない。蹴るかもしれない。嫌がっているところを無理矢理犯すかもしれない。

臨也に会えば絶対俺は臨也を傷つける。ならば会わない方がいい。そう思った。

別れてから一ヶ月経つと、そういえば最近平和島静雄と折原臨也の喧嘩を見かけないと池袋の街が噂をしだす。俺も最近折原臨也を池袋で全く見ないようになったと、池袋の街のやつらが噂しているのを聞いた。俺に会わないよう極力避けているのだろう。俺も新宿には特に行かないようにしていたし、臨也の様子がどうかなんて知りもしなかった。

まず俺に最近折原臨也はどうなっているのかなんて聞いてくる人間はいないし、俺達のことを知っている新羅が最近臨也とどうなの?と軽く聞いてくる程度で、それに俺はてきとうに答えることしかできなかった。新羅には別れたことを言っていなかった。俺が言っていなくて新羅が知らないということは、臨也も言っていないようだった。何も知らない新羅が最近どうなのー?と笑いながら聞いてくる度に心が傷んだ。新羅は俺と臨也の仲をとりもってくれた大事な友人だ。新羅がいなかったら、臨也とは付き合えなかったし、新羅が頑張ってくれなかったら俺と臨也は一生自分の気持ちに気づけなかっただろう。

新羅に言っていないどころか俺は門田にも言えずにいた。門田も来神時代からの付き合いなので、俺と臨也のことを知っている数少ないうちの一人だ。門田は新羅みたいに直接的には何かしていなくても、本当に何かあったときは相談に乗ってくれる。

一番言わなければならない、一番相談しなければならない友人達を騙し続けるということは最低なことだ、というのは自分でも分かっている。けれど言えなかった。せっかく新羅が頑張ってくれたのに俺がそれを壊しました、と言えなかった。たくさん相談に乗ってもらったのに生かせずに別れました、と言えなかった。それにその事を知って一番悲しむのは新羅だろうな、と思う。臨也がどんな考えで新羅に言っていないのかは知らないが、俺はそんな自分勝手な理由で新羅に本当のことを言えずにいた。






けれど臨也と別れてから1ヶ月と少し経ったある日、新羅から連絡が入った。

自分のところに臨也が運び込まれた、と。

何も知らない新羅は俺達がまだ付き合い続けていると思って連絡したのだろうが、生憎俺達はもう別れている。

だから行くわけにはいかない、そう思った。だけどその後の新羅の言葉に行かなくてはならないという思いにかられた。



だいぶ深い傷だ。結構な大人数に狙われたみたいなんだ。さっきセルティが必死にそいつらを振り切って僕んとこに運んできてくれたんだよ。だから早く来てくれないか、静雄!



受話器の向こうからかなり焦っているような新羅の声が聞こえた。

俺が臨也の前に姿を表してもいいのか。俺が臨也のそばにいてもいいのか。そんなことを考えている暇はなかった。

「すぐ行く」

俺はそう一言言って電話を切ると、わき目もふらず新羅の家に走った。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -