!いきなり静ちゃん視点注意








「別れよう」

あいつをビルの屋上に呼び出しそう告げた。

「え…?今何て言ったの…静ちゃん…?」

臨也は目を大きくして俺にもう一度問う。だから今度ははっきりと少し声を大きくして答えた。

「俺と別れてくれ、臨也」

その言葉を聞くと臨也の肩が震えもっと大きく目を見開いた。

「な…で…静ちゃ、」

「そういうことだから」

臨也の言葉をさえぎってそう告げると屋上をあとにした。バタン、と扉が閉まる音の中「静ちゃん!」と叫ぶ臨也の声が聞こえた。けど俺はその言葉を無視して階段をかけおりた。



俺が臨也に別れを告げた理由。それは俺の臨也に対するDVが原因だ。俺が人より力が強い、ということは周知の事実だがそれより問題なのはいらつくと自分でも気づかない間にキレてしまうということだ。ようはキレやすいということだが、それのせいで前々から池袋の喧嘩人形だとか静雄に喧嘩を売ってはいけないとかずいぶん物騒な噂があった。俺もそれについては悩んでいたが、結局治らないしほとんど諦めていた。元よりこの力のせいで疎まれ、俺に身近に人がいたことないのだから困ることもなかった。

…本当に大切な奴ができるまでは。

高校時代からいがみあってた俺たちはいつの間にお互い、嫌いとはまったく正反対の感情を持っていたことにに気づいた俺たちは付き合うことになった。もちろん付き合ってからしばらくは俺は幸せの絶頂にいたし臨也だって幸せそうだった。いや、あの頃は絶対臨也を幸せにしてやろうと思っていた。人より強いこの力を臨也を守るために使おうと誓った。

…けれど。付き合って半年たった頃に俺は臨也を殴ってしまった。理由は臨也が男に言い寄られているのを偶然見てしまったということ。それを見た俺はキレて気がついたら臨也を殴っていた。そのとき臨也は違う、話を聞いてと言ったが、そんな言葉は耳に入らなかった。ただ頭の中が怒りで満たされていて、気がついたら殴っていた。その後あの男はただの仕事の相手なのに向こうが勘違いして言い寄ってきた、という臨也の説明より誤解は解け、そのこと自体は解決したのだが俺はそれが事の発端だったと思う。

それ以来俺は何かいらつくと臨也を殴っていた。殴るだけじゃなくて蹴ったり壁に叩きつけたり普通のときでは考えられないことをキレているときの俺は臨也にしていた。無理矢理セックスを強要したこともあった。

殴っているときの臨也はいやだ痛い、なんでこんなことをするの、と泣きながら止めてと懇願する。殴ったり蹴ったりしたあと正気に戻ると俺は毎回深い自責の念にとらわれた。

自分は愚かだ。臨也はあんなにも止めてと言っていたのに。泣きながら俺に訴えていたのに。それに俺は耳を貸さず暴力をふるっているのだ。こんなひどい奴はすぐ捨てられるだろうな、と思っていた。むしろ早く別れてくれて良かった。俺がそばにいたら臨也は傷つく一方だし、それなら俺から離れるのが一番いい。俺は臨也を幸せにはできない。

けれど臨也が別れ話を切り出すことはなかった。なぜ。

俺は臨也がよく分からなかった。こんなすぐ暴力をふるような奴早く捨てればいい。なのに臨也はいつまでも別れ話を切り出すことはなかった。

なら俺から言おう、と思ったのは2週間ほど前。それからずっと言おう、言おうと思っていたのに、言い出せずにいた。しかもその2週間の間にも俺は無意識に臨也に暴力をふるっていた。無意識なのだ。気がついたら臨也を殴っていた、なんて俺は病気だ。

やっぱり俺は臨也のそばにいてはいけない。言おう、ちゃんと。それが臨也を守る最良の選択肢だ。

やはり俺は人を愛してはいけない。
人を愛したって力に任せて相手を傷つけることしかできない俺に人を愛する権利はない。

けれど出来ることなら。
出来るなら俺があいつを守ってやりたかった。

そう、思った。


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