弱くも刹那を生きる者としては


私に触れてくれるな。
私は高潔な貴族。
貴様などに触らせる身体は持ち合わせていないのだよ。
何を偉そうに私の席に陣取っているのだ。
そこは私の昼時の陣地であり別荘であるぞ。
まあ偉く毛並みの整った雄だ。
いつまでも睨みつけていても仕方がない。
ああ、こら。
私の尾はデリケートなのだから引っ張るな。
触るな触るな。
寝床が硬い。
私はもう少し柔らかい寝床にお邪魔したいのだ。
しかし今日はもう昼寝の時刻。
水晶を隠して尾を揺らそう。

何をしてくれる。
よく見てみれば、お前は先日の雄。
この間はよくも私の尾を引っ張ってくれたな。
お前はまた此処を陣取っているのか。
ええい、引っ張るなと前にも睨みを効かせた筈だろう。
愉快そうに私を見るんじゃない。
こっちは痛い思いをしているんだ。
何だこれは、視界が赤い。
まるで奴らが言っていたコタツのように、ほんのりと暖かい。
欠伸を一つ。
黒い毛並みを整える雄の手は硬かった。


「本当に素直じゃないね」

ぽつり、呟く声は空虚に響く。

「寂しいかい」

足り無すぎる言葉はどうしたら伝わるのか。
ふわりと喉を撫でると僅かに目を細める。
それにふっと笑うと猫がこちらをちらと見た。

にゃああ

初めての音は神からのプレゼントだったのかもしれない。


お前のせいでひとりになれないよ
明日も僕の腕に、黒。





えめらるど
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -