あの人は恋をタイムカプセルに詰めました


特段大きな泣き声が、大きな屋敷に突き抜けた。

「また泣いてるの」
「うわあああああ!!」

まあ、こんな状態な彼に私の声が届くことはないだろう。
そんなこと何年も前に分かってる。

なかなか泣き止まないな、と声を張るランボの前でお茶を飲む。

ランボが泣き虫であるのも一理、ランボが無謀な襲撃をすることにも一理。
原因は大半が返り討ちだが、稀に一時間程泣き続ける時がある。
そういうときは百パーセントリボーンや骸という特定の人物にからかわれている。

「私リボーンとこ行くけど、来る?」

そう行って熱いお茶を飲み干し立ち上がると、ランボは動きを止める。行きたくないのだろう。
脱いでいた靴を履いてノブに手を掛けると、後ろから私にかかる長い影。

何かに引かれるような感覚に襲われかと思うと私の尻に強い衝撃が走った。

「いった……」

どうやらどこかに落ちてしまったようだ。
ランボは遂にやつ当たりを始めたのか、大きなバズーカで私を撃ったのか。
それにしては痛いのは尻だけだが。

とりあえず此処は何処かと考えていると、絨毯と靴が擦れる音に気付いた。
自分の不注意を反省するよりも先に私の腕は音の方向へと向いていた。

突きつけた銃口の先は、何処かランボに似た男。

お前は誰だ、と言って名乗る相手だろうか。
此処は何処だ、と言って教えてくれる相手だろうか。

「ああ、待ってください。俺はランボです」

両手を挙げていながらも落ち着いた様子の男。
ランボはこれほど落ち着いてはいないし、これほど髪も長くない。

「って、言っても信じませんよね。あなたのことですから」

お前は私の何を知っている?

銃口を向けられているというのに嫌に落ち着いた男に、腸が煮えくり返りそうだ。
少しずつこちらへ歩み寄る男と、引き金に重なる私の指。

ゴトリ、と落ちた銃は彼の片一方の手に収まっている。

口の中に広がった甘酸っぱい味に重なるのは、男の笑顔と泣き虫ランボの稀なそれ。

「ぶどうの飴も、あなたに貰うのが一番嬉しい」

もしかして、本当にあの男は?

男の名を呼ぶと、返事をしたのはいつもの泣き虫だった。
ああ良かった、と私に縋る泣き虫はまた涙を流す。

「リボーンに何と言われようと、俺はあなたがっ」

瞬間、広がるぶどうから割り出てきた口内を騒ぐサイダー。
混沌としている口内は、まるで私の思考回路のようだった。


驚いた顔をした十年後の




えめらるど
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