飛べなくなったバブルドリーム


卒業式の堅苦しい雰囲気。
大きな花瓶に飾られた花。

卒業証書を片手に外の空気を味わう。
何教科もの教科書を詰め込んだ鞄は今日は軽くて、それが何となく虚しかった。

「よっ」
「あ、山本」

肩を叩かれて振り返ると、後ろにいたのは山本だった。
長年彼に愛用されただろうバットを片手に少し寂しそうな表情をしている。
それもそうだ。
この並盛高校とも今日でお別れなのだから。

「寂しいね」
「だな」
「雲雀さんの校内見回りはもうないよ」
「ははっそれは少し安心」

しょうもない話をするのも今日が最後だよ、なんて言えなかった。
この前獄寺と話しているのを聞いてしまったのだ。

山本は外国へ行ってしまうことを。
中学の頃から夢だった甲子園とは、雰囲気が違った。

付き合って1年目の記念にと交換したペアリングは、いつの間にかチェーンから外されていた。
そのリングは、指へ。

野球をすると壊れてしまうと首に吊るしていた、ペアリング。

「結婚式、いつやる?」

馬鹿な私は山本を追い詰める。
もう私達が会うことはないのに。
私はドレスを着ることなどないのに。

山本は知っているのだ。
私が話を聞いてしまったことを。
数週間前からぼうっとしていることを怪しんでいたのだ。



「ごめん」

「謝らないでよ
 謝るぐらいなら、どうして」




雨が降る日、私は必ず窓を開ける
大嫌いな鉛色の水滴を見てあの日を思い出す





えめらるど
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