「マ、マサキくん!はっぴーびゃれ………」


「……咬んだな」


「は、はっぴーばれんたいん!」



と、発音の悪い英語でチョコを差し出すバレ子。



部活を終えて、いつも通りお日さま園に帰ってきた今日。

今日はバレンタイン。
お日さま園の女子は毎年男子の人数分チョコを手作りする。


毎年くれるもんだし別に照れくさくなるもんでもないが……

バレ子は別だ。



バレ子は今年からお日さま園で暮らしていて、しかも、……俺が惚れた相手。



トロいし鈍くさいしドジだし
不器用だし、とにかく変な奴


なのに、誰と関係なく向ける笑顔に、まさかでやられてしまった。



言葉や表情には出さないけど、たとえみんなに渡すチョコだと分かっていても、好きな子からチョコが貰えたのはかなり嬉しかったりする。





「あ、でも御飯前だから食べるのは後にしなさいって瞳子さんがっ…」


「はいよー。て言うか他のやつらは?」



毎年チビ達は、帰ってきたら玄関で渡してくるのに今年はいない…。



「あ、南雲さんたち来てるからみんなそっちに…」


「ゲッ…まじかよ、俺さ風介さん苦手なんだよなー……厨2なテンションが…」


「……ちゅうに?」


「なんでもねぇよ。俺、着替えてから行くわ」


「うんっ」






部屋に寄って、適当に家着というやつを着て食卓がある居間に向かった。


そこにはバレ子が言ってた通り、晴矢さんと風介さんがいた…。


2人は抱えるようにチョコを持っていて、その周りではチビ達がキャッキャしてた。


「いくらチョコが貰えないからって、わざわざここのチビ達から貰わなくても…」



「うっわ、あいつ私に対してかなり失礼なこと言った。いっとくが私は晴矢のついでだ」


「風介テメェッ!!俺がモテないみたいに言ってんじゃねぇよ!」




大人が低レベルな喧嘩すんなよな…と思っていると、台所の方から瞳子さんがきた。




「お帰りなさいマサキくん。晴矢と風介にはいつもお世話になってるからみんなでチョコ渡そうってなったのよ」


瞳子さんがいうお世話になっているというのは、多分ここの経営費用のこと。



晴矢さんも風介さんも悔しいけどサッカーがめちゃくちゃ上手い。

プロだし、稼ぎだって凄いんだぜとかこの前晴矢さんが言ってたっけ。






「…で、バレ子」


「は、はい。なんですか風介さん?」


「バレ子は私にチョコくれないのか?」


「えっ…あ、あの、」



ちょ、風介さん貰う側の立場なのになんて厚かましいんだ!




「俺もバレ子姉ちゃんから貰ってないー!」

「僕もーっ」


風介さんに続くようにチビっ子男組が騒ぎ出した。



「あ、えっと……」



バレ子の顔はみるみると赤く染まって、チラッと俺を見てきた。




「わ、私はっ……ほ…本命だけあげましたああ!!!」



精一杯の声でバレ子は叫んで、逃げるように居間を去っていった。



てか、えっ…本命って……



これ、自惚れてもいいんだよね…?



ああ、俺も今顔真っ赤なんだろうな…ちくしょう、反則だぜ。




笑顔が素敵な君からの







 


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