バレンタインデー。


辞書で引くと

【バレンタインデー】
2月14日。殉教した聖バレンタインを記念するカトリックの祝日。女性が男性に求愛できる日とされる。



巷ではカップルが仲を深めるためのイベントとなっているが、仕事に追われる僕にとっては悲しい日でしかない。



吉良の会社を継いで、まだ不安なこともたくさん残ってるが今はとにかく仕事をするしかなかった。




だからって僕に彼女がいないとかそんなんじゃない。

中学時代から付き合ってる可愛い可愛い彼女がいる。



数日前に今日の予定を聞かれて、イベント事が好きなバレ子には申し訳ないと思いながらも仕事であることを伝えた。


伝えた時のバレ子の反応は思いもよらないもので、なんだかあっけなかった。


まあ、付き合いも長いしそこら辺は理解してくれているのだと思う。






「さて、一段落ついたし今日はもう終わりにするか…」



時計を見れば日にちが変わる10分前だ。

バレ子はもう寝てしまっただろうか?声ぐらい聞きだいなーと思ってしまった。




携帯を取り出し、バレ子に電話をかけようとした時、部屋のドアがガチャッと開いた音がした。

緑川か…?と思って視線をドアに向けた。







「え、バレ子っ!?」


「えへへぇ…ヒロくぅん」


「バレ子もしかして酔ってるの…?」



自分からは滅多に抱き付かないバレ子が俺に抱きついて、バレ子から少しアルコールの匂いがした。



「酔ってなんかっ…ない、もん!」


「いや完全に酔ってるよ…」



普段からお酒はそんなに飲まないバレ子がどうしてここまで飲んだんだろうか。




「どうしたのさ、バレ子がこんなになるまで飲むなんて」


「ヒロくんがぁ…、いけないんりゃかりゃ!」



呂律が回ってない。
正直、すっごく可愛い!!




「しゃいきん、お仕事ばっかで……今日ぐらいは一緒に、いたかっ…たの…」


「バレ子…」


「でもぉ…ヒロくん頑張ってりゅの知ってりゅから……我慢できりゅもんっ」



抱き付いているバレ子の力が少し強まった。




……どうやら、僕はとんだ間違いをしていたみたいだ。


バレ子は理解してくれてたんじゃなくて我慢してたんだね。



そんなバレ子が無償に愛しくてたまらなくなった。





「高校のとき…いっぱい、いっぱ、い勉強してたもん……わたし、」

「もういい、もういいよバレ子」


「ヒロくん…?」


「バレ子…結婚しよっか?」


「しゅるっ!」


「即答だねー…」


「大しゅきだもんっ!」


「僕も大好きだよ」


「ヒロくん、ちゅーして?」



今日は本当に珍しい。

甘え下手なバレ子がここまでなると…。



「はいはい、お姫様」






バレンタイン。

辞書で引くと

2月14日。殉教した聖バレンタインを記念するカトリックの祝日。女性が男性に求愛できる日とされる。


本当に女性であるバレ子が男性である僕に求愛してきた日。



こんなバレンタインも
偶にははありかな?




んふふっだぁいすき








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