生まれて14年。

不器用という不器用を極めた私は料理どころか、台所に立たせてもらえてない。


そんな私だけれども!

人生初の彼氏ができて、今日は初めてリア充として過ごす大切な大切なバレンタインなのだ。



初めて作るし簡単なものにしようとして決めたのは、雑誌にちょうど作り方が載っていたトリュフュ。


近くにいたお母さんに、それ簡単なの...?とか言われながら変な目で見られたけど気にしないよ!





─────────







「と、いうわけです!」


「……え?」


「だっ…だからね、初めて作ったから美味しくない…かも」




昼休み。
屋上で蘭丸くんに初手作りチョコを渡した。


蘭丸くんはラッピングを丁寧にとっていき、メインであるトリュフュをまじまじと見た。


蘭丸くんは私が料理が出来ないことを重々理解している。(調理実習とかで……)





「見ためは完璧だな…」


「うん!見ためはお母さん御墨付きだよ!」


「(見ためだけなのかお母さん……)そんじゃいただきます」




「ど、どうですか…?」


「……お世辞でも美味いとは言えない味がする」


「あはは…ですよねー」



分かってはいたけど、そんなに不味かったかな…?


食べようと思ってチョコに手を伸ばすと蘭丸くんにそれを止められたら。



「ちょっと遅めの味見をしようかと…」


「遅すぎだろ…」


蘭丸くんはちょっと待てと言って、チョコをもう一つ口に含んだ。




「蘭丸く……んぅ…っ」



自身の唇にあたる彼の唇。
優しいそれは徐々に深くなった。何度も舌を絡めて、唾液が口元の端を伝う。


その唾液にはしっかりと私が作ったチョコの味がして、蘭丸くんの言う通りお世辞でも美味いとは言えない味がした。



「あっ…ふぅっ……」



自分でも厭らしい声だと思う。
でも性的なものだもん。制御できるならとっくにしてる。


息を吸うタイミングがいまだによく分かってなくて、苦しくて少し顔を歪めると蘭丸くんは解放してくれた。




「どうだった、チョコの味は?」


「美味しくな、い……」



キスという行為にまだ慣れてない私は、キスをした後は数分はボーっとしてしまう。




完全に無防備なことをいいことに蘭丸くんは耳に唇を寄せてきた。



「バレ子、耳弱いよな…」


「んっ、んん、」


「声、我慢するなよ」


「やぁっ…あ、」


蘭丸くんが私のスカートに手をのばした時、ナイスなタイミングで昼休み終了の鐘がなった。


た、助かった……?



と思ったのもつかの間で




「今日は俺の家な」





あれ、やっぱり?



頑張ってチョコ作ったのになんだか変なムードを作っちゃったみたい…。


でもまあ、
愛されてるってことだよね!




器用な彼と不器用な私





 


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