note

  光と謙也


今日は光の家でお家デートなるものをしている。しているんやけど。

「あー…」
「なんですかその気の抜けた声は」
「や、だって今やることないし暇やん」

そう、暇で暇でしょうがないのだ。
さっきまではゲームをしたり、雑誌を一緒に見たり、光オススメの曲を聴いたりしてたんやけど、ついにやることがなくなってしまった。今は二人して床に座り込んでベッドに寄りかかって、ただぼーっとしているだけ。
………うん、暇や。

「まあそうですけど…」
「だからさっきみたいな声出したくなんねん。なんとなく」
「なんとなくて……いや、わからなくはないですけどね」
「せやろー?んー…ほんまに暇や…なんかないかなぁ」
「別にええやないですか、このままでも」
「俺は嫌や。なんや時間を無駄にしてる気いするもん!」
「無駄って…部長やあるまいし」
「だって…」

光と、せっかく一緒に居るんに。
こんなんもったいなさすぎる。
いつもだったらここでキスをして、そのままセックスになだれ込んだりもするんやけど、今日は光のお兄さん達がいるから無理やし…。
…光は、なんとも思わへんのかな。こうやってなんもしないでぐーたらするだけの時間を。

「そんなにやなんですか、こうやってだべるの」
「おん。光は嫌やないん?」
「…まあ。俺は謙也さんさえいれば、それで」

しれっとした顔でとんでもないことを言ってくる光に俺は一瞬、ぴしっと固まってしまう。それから徐々に顔に熱が集まってきて、ああ…今顔真っ赤になってるんやろうな、ってぼんやりと思った。
あーもう、恥ずかしい。
まんまと光にしてやられた気がして、俺は少しの仕返しの意味を込めて光をじと目で睨む。

「…………おっまえ真顔でなんてことを…」
「はは、謙也さん顔真っ赤ー」
「やかましい!見るなやー!!」
「見るなと言われたら余計に見たなります」
「……っこんのドS…!」
「謙也さん限定やから安心してください」
「なんの安心!?っちゅーかそのほうがたち悪いやろ!!」
「そうですか?」
「そうや!!」

ムキになって言い返すと、光が少しムッとした顔をした。
あ、これ、スイッチ入ったんちゃう?

「…いや、そんなことないですやろ」
「…っいーや、ある!」
「ないっすわ」
「ある!」
「ないっすわ」
「ある!」
「ない!」
「ある!」
「ない!」
「ある!」

「「…………………」」

しばらく言い合ったのち、ふと沈黙が訪れる。光と目が合って、しばらく見つめ合ったその時……

「ぷっ…あはははは!なんやこの言い合い!」
「くくくっ…あほらしいっすわ…」
「はははは!っはー…おかしー」

急にこの不毛な言い合いがアホらしくなって二人同時に笑い出す。
だって、意味分からん。なんやこのやりとり。なんてどうでもいいことで言い争ってるんや俺達は。なんちゅーか…平和すぎるやろ。

「…ね、謙也さん」
「んー?なんやー?」

ひとしきり笑ったあと、ひーひー言いながら笑ったせいで出てきた涙を拭っていると、光が俺の肩にもたれかかってきた。

「一年後も、二年後も……、これから先ずっと…さっきみたいに馬鹿みたいな話して笑ったり、こうして二人でいちゃいちゃしたりできたらいいですね」

そう言って、ふわりと優しい笑顔を浮かべた光に俺の心は見事にノックアウトされた。
嗚呼もう。俺の彼氏はなんてかっこええんや。
好き。好き。……大好き。

「……おん。なぁ、光」
「なんですか?」
「ちゅー、してや」
「………ええですよ」

触れるだけの優しい優しいキスに、自分は世界で一番の幸せ者なんじゃないのかと真面目に思う。

なんでもない日常の、なんでもない一コマ。
それが、何よりも幸せな時間。



prev next

[back]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -