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  マスルールとシャルルカン


「あの、師匠とマスルールさんって、結局のところどうなんですか?」
「………………………は?」

修行の合間に少しの休憩時間を設けたときの事だ。水分補給をしていたら、突然アリババにそう問われた。
唐突で、しかも意味深なその質問に俺はしばしフリーズしてからなんとか声を振り絞る。
もちろん答えるのが遅いとか、そういう文句は言わせねぇ。むしろここで水を吹き出したりしなかった俺を誰か褒めてほしいくらいだ。

とりあえず、この目の前いる馬鹿弟子は何を言い出してんだ?
俺と、マスルールが、なんだって?

「…ちょっと意味がわからねぇんだけど…」
「だから、師匠とマスルールさんはどういう関係なんですかっていう話です!」

ちょっと嫌な予感がしつつも、控え目にアリババに意味を確認する。
願わくば、その予感が当たりませんように…なんて思っていたが、嫌な予感というものほどよく当たるもので。案の定アリババの口からは俺にとって大変都合が悪い質問が飛び出してきた。
そりゃあ、俺だって可愛い弟子の質問だし?出来れば答えてやりたいところだけど。これは…この質問はちょっと、厳しい。

───それは何故か。答えは簡単だ。

俺とマスルールの関係は先輩後輩なんて単純なものではない、まあ、その…あれだ。所謂、恋人ってやつだからだ。
ちなみにこれは八人将と王サマしか知らない秘密だ。そりゃ、お互い八人将って立場もあるし、何より男同士だし。シンドリアはどんな人でも受け入れてくれるいい国だけど、これが良いことだとは俺もマスルールも思わないから。だから黙っている。
よって、アリババのこの質問には答えられない。
俺にとっても王サマたちにとっても、アリババたちが重要な食客であることは変わらない。けど、こればっかりは言いづらいし……その、俺の威厳みたいなものもあるし…(言いたくないけど俺下だからな)
だから、俺にはうまく誤魔化すという選択肢しか残されてないって訳だ。

「どんなって…ふ、フツーに先輩後輩ってだけだよ」

少しどもったけどこれくらいなら大丈夫だろう。そう自分に言い聞かせてアリババの様子を伺う。
当のアリババといえば、まだ納得がいかないのか微妙な顔をしている。

「うーん…本当にそれだけなんですか…?」
「な、なんでそんなに疑ってんだよ…」
「あー俺、今までマスルールさんと師匠は仲悪いと思ってたんすよ。よく喧嘩?してるし…」

それはよくしている自覚はある。まあ大半が俺が一方的にぎゃーぎゃー言って、マスルールに軽くあしらわれてるっていう状態なんだけどな。
うんうん、と頷きながらアリババの話を大人しく聞く。ここまで何も問題ないよな。

「でも、二人でよく飲みに行ってるし、師匠が酔いつぶれたときは必ずマスルールさんがおぶって帰ってくるし……なんか、実は仲良いのかなって思ってきて…」

あー…うん、それもよくあるな。でもそれはアリババ、お前が俺の誘いを断るからっていうのもあるんだぞ。だからマスルールをしょうがなく誘ってるっていうか…。まあ酔い潰れんのは自業自得だけど。
しっかし…いつもマスルールが連れて帰ってきてくれてたんだな…。俺は酔いつぶれたらその夜の半分あたりから記憶がないことがしばしばあるし、正直誰が連れて帰ってきてくれたのかわからないことの方が多かったりする。
…あー…うん。今度マスルールにお礼言わねーとな…。

「あ、あと」
「あと?」

どうやってお礼を言おうか…などと思っていたらアリババがなにか思い出したように声をあげた。まだあんのかよ、とも思ったが、俺も気になるし先を促す。

「モルジアナが、マスルールさんから師匠の匂いがするとか言ってて…、アラジンもマスルールさんと師匠が二人で話してるときに『シャルルカンおにいさんのルフがなんだか嬉しそうだねえ』ってにこにこ笑ってて………ってあれ?師匠?どうかしたんすか?」


「顔、真っ赤ですよ?」


馬鹿。
そんなん、聞かなきゃよかった。

次から、どんな顔してアイツと会えっていうんだよ!



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