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  グレイとナツ


清々しい朝、今日も今日とて毎朝恒例の戦いが始まる。敵は俺の目の前にいる布団の固まり…もとい布団にくるまったグレイだ。
深く息を吸い込んで、思いっきりグレイを怒鳴りつける。

「グレイ!起きろ!!」
「あ゙ー…?…んだよ…まだいいだろうが…」

でも、グレイには全く効かないようで、めんどくさそうな声であっさりと交わされてしまった。
…ちくしょう、俺はめげないからな。今日こそこいつを朝のこの時間のうちに起こしてやる。そう意気込んで、俺はもう一度息を吸い込む。

「もう昼近いっつーの!おーきーろ!」

再びグレイを怒鳴る。
しかし対するグレイはというと。

「っせぇな…」

この態度だ。しかも舌打ちつき。
さすがに今のはイラッときた。人が起こしてやってるというのになんだよこの態度は。

「…てっめぇ…うるさいじゃねえよ…。だいた…おわっ!?」

もう一度怒鳴ろうとしたら、布団の中からのびてきた手にぐいっと引っ張られた。気がついたときには、オレもグレイと同じように布団の中。さらに言えば、布団の中にいたグレイの腕の中におさまっていた。

「あー…あったけぇ…」
「ちょっ…おいコラ!グレイ!放せ!」
「やだ」
「やだってお前いい加減に…!って寝るな!」

目を閉じて寝息を立て始めたグレイの耳を引っ張る。痛い、と声を上げているが無視だ。

「今日はクエスト行くんじゃねえのかよ!グレイ!」

至近距離でもう一度怒ると、グレイが顔をしかめた後にオレの頭を引き寄せてきた。耳にグレイの吐息があたり、びくりと体が震えた。

「…いや、か?」
「……っ、」

耳元でぼそりと囁かれる。寝起きの掠れた低い声は、凶器だ。ぶわっと顔に熱が集まるのがわかる。
わかってやってるだろ、コイツ。

「ずりぃぞ…」
「今さらじゃねーのか」
「うっせぇ!自覚あるならなんとかしろよ!」
「んー…そうだな…」

卑怯だ、とグレイを睨むと、開き直った発言が返ってきた。悔しくてしょうがなかったので吠えてやると、グレイは喉の奥で低く笑う。くそ、むかつく。
曖昧な返事を返してきたグレイは、もう半分夢の中のようだ。

「もう、ちょっと…、な…」

声が途切れたと思ったら、オレの体をがっちりと抱き込んだままグレイは寝息を立て始めていた。起きる気配はまったくない。
オレはなんだか疲れてしまって、一つ溜め息を吐く。今日はもう諦めるしかないようだ。

「幸せそうな顔しやがって」

仕返しとばかりにほっぺを少しつねってやる。
なんだかグレイの寝顔を見ていたらこっちまで眠くなってきた。だんだん重くなってきた瞼に逆らうこともできないまま、視界が狭まっていく。
薄れゆく意識の中、明日こそは何としてでもグレイを起こそうと思うのだった。



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