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幽霊謙也と高校生光
それは、ある日突然俺の前に現れた。
「自分、最近よく居るなぁ。1年生?」
「………………………………………………は?」
授業をサボって屋上で1人黄昏ていると、目の前にいきなり金髪の兄ちゃんが現れた。
いや、この四天宝寺高校で金髪なんてあまり珍しくないんやけど……………えーっと俺、フェンスに向き合って校庭を見下ろしてたよな?
…………なんで、目の前に……つまり、その…なんで……………………浮いとるん?
「俺、謙也言うねん!よろしゅう!」
「………………」
「ちょお待て、待て待て待て待て待て!!!なんで無言でUターンするんや!!ちょ、ホンマに待って!お願いだから!!」
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「…いや、その、驚かせたのはホンマに悪かったと思っとる」
目の前に正座しとる金髪の兄ちゃんはしゅん、と子犬のように項垂れて謝ってくる。
その姿に可愛ええなんて思ったのはなんかの間違いや、うん。俺よりでかい金髪の男を可愛ええなんて…冗談でも全然おもろくない。
俺は混乱してるんや、この…突然浮いている状態で現れた、こいつに。
「…………で、アンタは何なんすか」
「俺?んー…幽霊、なんかなぁ…?」
「…なんで疑問系やねん」
「いや、だって俺覚えてないんやもん」
「はあ…?」
「その…気がついたらここに居ったし…どうやって幽霊になったかも覚えてへんのや」
そないなことあるんか?
そんな疑問を抱きつつ、目の前に居る幽霊(仮)を改めてじっとみつめる。
整っている顔立ちにすらりとしたスタイル。そしてそれによく似合っているきらきらと光る金髪。
なるほど、きっと生前(いや、死んだのかどうかすら定かやないんやけど)はさぞモテただろう。
ぼんやりとそんなことを思いながら、思わずその綺麗な顔に手を伸ばす。まあなんや…単なる好奇心ってやつや。
俺がなにをしようとしているのかわからないのか、きょとんとした顔でこちらを見つめてくる………えーっと、謙也、さん(って言うとったよな?)の、柔らかそうな頬に触れようとした…
その時。
すかっ
俺の手は見事にその人の顔をすり抜けた。
「…本当に幽霊なんすね」
「まあ一応飛べるしなぁ」
はっきりと目に映ってはいるが、やはり触れはしないらしい。
少しがっかりした気持ちで謙也さんの体を真っ二つにするようにブンブンと手を動かす。
なんやつまらへんわ。
「しっかし…自分、ホンマに、俺が見えてるんやなぁ…」
「はぁ、まあ…」
「前からここに居るのを見て気にはなってたんやけど…ほら、俺幽霊?やから。話しかけたのは半分賭やったんや」
驚いた。前から俺のことを見ていたのか。
そういや最初にそないなことを言われた気もするが…なんか改めて言われると変な感じがする。
だって幽霊にずっと見られてたんやで?ホラー系は苦手やないけど少しゾッとするわ。
まあ…こんな幽霊だとわかればちっとも怖ないけど。
「あ、そういや自分、名前は?」
「…財前光っすわ」
「ひかる…光かぁ……ええ名前やな」
思い出したように名前を聞かれたので答えると、そう言ってふわりと微笑まれた。
その笑顔を見て、俺なんかよりよっぽど謙也さんの方が光っちゅー名前が似合うと感じた。だって俺は人にこんな笑顔を向けるどころか、クラスにすら馴染めずにこんなところで授業をサボっているような奴なのだから。
昔読んだ少女漫画が元ネタ
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