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  グレイとナツ


グレイは、モテる。
ロキほどじゃないけど、それでもギルド内では結構上位に食い込んでいる所謂イケメンってやつだ。

だから毎年忙しそうなんだよなぁ…2月14日と、今日……3月14日は特に。


「あ゙ーっもう!めんどくせぇな!!」
「そんなこと言っちゃダメよ、グレイ。女の子のチョコには想いがこもってるんだから、ちゃんと感謝をこめて返しなさい!」
「ふふ、グレイは毎年めんどくさいって言いながらちゃんとお返し用意してるわよね〜」
「まあ、そりゃ…もらったままっつーのは性に合わないしな」

ルーシィやミラたちと話しながらグレイはどこの誰にお返しをすればいいかを確認している。それを遠巻きに眺めるオレは、これでも一応グレイの恋人だ。…まあグレイはこっちをまったく見てないけどな。

「うっし。じゃあ行ってくるわ」
「いってらっしゃーい」

少しぶすくれた顔でグレイの方から目を逸らすと、グレイを見送るルーシィ達の声が聞こえてきた。どうやら行くみたいだ。
今日は夕方まで帰ってこないんだろうなぁ…と思いながらぼんやりとしていると、こっちに近づいてくるひとつの足音が耳に聞こえてきた。
なんだろうと思ったら目の前にいたのはグレイで。
出ていったんじゃないのか、という気持ちを込めてグレイを見上げる。

「…行かねぇの?」
「あー…まあ、うん。とりあえずちょっと待て。えーっと………あ、これだ」

オレの質問に曖昧な返事を返して、ごそごそと鞄を漁り出したグレイに若干身構えていると、目の前に差し出されたのは1つの箱。

「ん、」
「……は?」
「だから…その、お返しだよ」

てっきりオレのことなんか忘れていると思っていたから、まさかのお返しという言葉に驚く。
だって昨日も一昨日も、口を開けば女の子に返すお菓子の話ばかりだったから。貰えるわけないと思っていた。

「……忘れてんのかと思ってた」
「…あのなぁ……」
「だってそんな話しなかったし」

正直な感想を述べるとグレイは呆れたように溜め息をつく。
いや、溜め息つきたかったのはこっちだっつーの。

「ナツにあげるやつを忘れるわけねぇだろ…。内緒にしてただけだ」
「………、そうかよ」

顔に集まる熱を感じながら、なんとか強気な返事を返す。
…だって、忘れられてると思ってたから。その………なんというか、素直に…嬉しい。

「……ありがと、な」
「おう。じゃあまた…夕方には帰ってくっから」

いっぱいいっぱいの状態でお礼をいうと、グレイはくしゃりと俺の頭を撫でてギルドを出ていこうとする。そこでオレは思わずグレイの服の裾を引き留めるように掴んでしまった。

……何してんだ、オレ。

「…ナツ?」
「………え、と」

グレイが驚いた顔をしているけど、オレも困惑しているところだ。こんなことするつもりなんてなかったんだから。

……でも、せっかくだからたまには素直になってみようか。このホワイトデーの甘い空気にあてられたことにして、今日くらいは。

「……すき」
「…え、」
「は、早く帰ってきて…な………っ…それだけ!」

せっかく素直になろうと思ったのに最終的に耐えられなくなって、オレはその場から脱兎のごとく逃げ出した。
逃げる直前にみたグレイの顔がオレに負けないくらい真っ赤だったのは、ちょっと優越感を感じたけれど。


グレイがその日、予定よりだいぶ早い昼過ぎに帰ってきたのは言うまでもない。



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