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  光と謙也


「謙也さん、ぎゅーってしてもええですか?」

今日は光と部屋でまったりデート。デートって言うてもゲームしたり雑誌読んだり、大したことはしないんやけど。
でも今日は少し違った。ベッドの下に座り込んで雑誌を読んでいた光が、急に俺を見上げてそんなことを言い出したのだ。

「急やなぁ…」
「ダメやった?」

首を傾げてそう尋ねてくる光は、絶対わかってやっとる。でも、俺はそれを突っぱねる心の強さも、理由もないわけで。

「いや、ええよ」
「じゃあ、ちゅーもしてええ?」
「ええよ」
「エッチもしてええ?」
「おん…え、」

光の方からそうやって口に出して甘えてくれるのは珍しいことで、ついつい嬉しくなって気が緩んでしまった俺は、気がついたら光に押し倒されとった。
ぴしりと、それまで緩んでいた体が固まる。

え、ちょ、ちょお待って。なんや頭がうまく回転してくれへんのやけど。なに、俺はどうすればええの?
ちょっと誰か教えて…ってかこのまんまでいるのはめっちゃ危なくない?俺光に食われてまう。
いや、冗談抜きで。

そんなことをぐるぐると考えとったら、俺に覆い被さってた光が突然吹き出した。

「ぶふっ…!謙也さんなに一人で百面相しとるんですか。あかん、めっちゃおもろい… 」
「なっ…笑うなや!こっちは必死やねんぞ!だいたい光がいきなりお、押し倒してくるから…!」
「すんません、冗談っすわ。せやからそんなに怒らんといて」

目尻に涙を浮かべて笑いまくる光にからかわれたことがわかり、俺はわかりやすくむくれる。なんやねん、めっちゃ焦ったっちゅーねん。

「………」
「謙也さん?」

怒ってはいない。でも心の中に、なんだかもやもやしたものが残っていることに気がついた。
突然黙り込んだ俺に、光が不思議そうにこちらを見つめてくる。

「…ぎゅーって、してくれへんの…?」

ぽろりと、口から言葉がこぼれた。
そこでやっと、もやもやの正体を自覚する。俺は、少し残念だったのだ。光が言ったことが冗談だったのが。
ああ、恥ずかしい、顔が熱い。

「………謙也さんが、望むなら、なんぼでもしたりますわ…そんくらい」

光の顔が見れなくて目を伏せていたら、掠れた声が上から降ってきた。
ぱっと顔を上げると、そこには少し顔を赤くした光がいて。

思わず、光の首に腕を回して思い切り抱きついた。


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