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  surprise ×××! @


 12月24日、クリスマスイヴ。
 この日が近づくにつれ街は華やかなイルミネーションや飾りで彩られ、至るところでクリスマスに向けの料理やプレゼントが売られ始める。街の人達はというと、友達や家族とクリスマスパーティーだとか恋人とデートだとか…とにかく浮かれている。それはフェアリーテイルの魔導士だって例外ではない。

 ………そう、オレ以外は。

 家のベッドの上で布団にくるまって不貞腐れているオレは、端から見たらクリスマスを独りぼっちで過ごすとても悲しい奴に見えるであろう。いや、事実一人で過ごすことになっているんだけど。
 一応言っておくが毎年そうな訳じゃない。いつもだったら今頃ギルドでみんなと一緒にクリスマスパーティーをやっているはずだ。あそこに行ったら仲間がたくさんいるし、美味しいごちそうだって山ほどある。きっと…いや絶対に楽しいクリスマスを過ごせるだろう。

 それにも関わらず何故オレは家にいるのか。
 理由は簡単だ。今年は、特別だから。イグニールと同じくらい大切な人ができたから。二人きりで過ごそうと思っていたのだ。
 …そう、思っていたのに。
 アイツ…もとい、ついこの前晴れて恋人になったグレイはこう言いのけやがったのだ。

『24日?あー…わりぃ。その日、もう仕事入れちまってよ…』

 恋人からクリスマスデートに誘われたというのに仕事とか…最低だろう、どう考えても。しかも、付き合い出して初めてのイベントだぞ?おかしいだろ。ぜってぇぇぇぇにおかしいだろ!!
 別に『仕事と私どっちが大事なの!?』みたいなことを言うつもりはないが、これはさすがにないと思う。しかも元はといえば告ってきたのは向こうだ。なんかこう、リードするとかそういうのはないのだろうか。ああ、くそ。思い出しただけでもイライラする!!

「あああああ本当にむかつく!グレイの野郎覚えてろよ!!」

 グレイに対するやり場のない怒りを晴らすために思いっきり叫んでみたが、オレの煩い声が家中に虚しく響いただけで全然スッキリしない。むしろ悲しさが増しただけだ。
ちなみにハッピーはギルドのクリスマスパーティーに行ってしまっていて家には不在である。(しかも慰めるとかそういうのなしで行きやがった。薄情だと思う。)つまり家にはオレ一人。余計に寂しさを感じさせられる状況だ。

「…はぁ」

 自分の状態を改めて思い出したら思わず口から溜め息が漏れた。
 何やってるんだろう、オレ。一人でクリスマスデートだなんて浮かれて、断られたからってやきもきして、不貞腐れて。グレイのことなんか忘れてギルドに行けばいいのに、それも出来ずにずっと家でイライラしたりして。
 …でも、それだけ楽しみだったんだ。グレイと二人きりで過ごすクリスマスが。
 そこまで考えて涙が溢れそうになったオレは慌てて目元を拭う。泣くな、泣くな。もういい。今さらどうしようもないんだ。まだ昼過ぎだが寝よう。寝て、このことは忘れよう。
 オレはこの虚しさを忘れるべく、もう一度布団にくるまり直して一人寂しく眠りについた。



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