きゅんと、胸が鳴る



いつもと同じ学校へと向かう道。
少し前を歩くリョーマくんを見つけて、声を掛けようと足速に歩く。
でもなかなか縮まらない私とリョーマくんの距離。

あれ、リョーマくんってこんなに歩くの早かったっけ。朝練が始まる時間までまだ余裕はあるから急いでるって事はないはずだけど。
おかしいな、いつもはこんなに……。
あ、もしかして私と歩く時は私に合わせてくれてる?そんなこと今まで考えたこと、なかった。


どうしよう、なんかすごく嬉しい!!


くすぐったい気持ちになった私は駆け足で、後ろからリョーマくんの背中を両手で軽くポンっと叩いて声をかけた。

「おはよう、リョーマくん」

少しびっくりしたように振り返ったリョーマくんの顔はまだ眠たそう。
また夜更かしでもしたのかな。あんまりうるさく言うとまた『母さんに言われてるみたい』って怒られるから言えないけど。

「おはよ、何?今朝は随分機嫌いいじゃん」
「え?」

大きな瞳をほんの少しだけ細めて柔らかく笑って言ったリョーマくんの言葉に驚いた。
そりゃ確かに機嫌はいいけどそこまで表情に出してるつもりはなかったのに。
私って、リョーマくんの言ってた通り本当鈍感なのかも。こうして些細な表情の変化も見逃さずに、気付いてくれる。
ちゃんと見てくれてるんだね。
別に今日に始まった事じゃない。私が落ち込んでる時はさりげなく気を遣って何処か行く?なんて言って連れて行ってくれてた…。
そうやって一緒にいてくれた。
多分、きっとそう。
思い当たる節は沢山ある。
なんでわからなかったんだろう。
なんで気付かなかったんだろう。
私、ホント鈍い。


普段、甘い言葉や気の利いた台詞を言うわけじゃないけれど、リョーマくんは私をちゃんと見てくれてる。
些細な変化を見逃さずに、気を配ってくれる。
そんな彼の静かな愛情がとても嬉しくて、愛おしくて、切なくて。

「朝からリョーマくんに会えたから、かな」

少しふざけたようにそう言うと、リョーマくんの頬がほんの少しだけ紅く染まった。
思わず可愛いと思ってしまう。

「ば、バカじゃないの、毎日会ってるじゃん」
「照れてるー!」
「別に、照れてない」

照れ隠しなのか、顔ふいと背ける仕種もやっぱり可愛くて。
あまり可愛い、可愛い言うと機嫌悪くなるから口に出しては言えないんだよね。

「置いていくよ」

そう言って少し歩くスピードをあげたけど、先程、普通に歩いていたスピードにくらべればまだまだ遅くて。本当に私を置いてくつもりはないらしい。
本当、リョーマくんって人は……。

「待って!」

彼の背中を追い掛ける。
きっとこれからもずっと追い掛け続けるのかもしれない。


キミの愛情表現は静かでとってもわかりにくい。
でも発見するたびにこんなキモチになれるならそれも悪くないかな。

君という人を知る度、胸がきゅんって鳴るの。
昨日より今日の方がずっともっと好き。
明日はもっともっと好き。言葉なんかに出来ないくらい好き。

こんなキモチを私に教えてくれてありがとう。
私はちゃんとリョーマくんに返せてるかな。
私の側にいるのも悪くないって思ってくれればいいな。


そんなことを思った、ある日の朝。




fin



2007/09/24




お題配布元:自主的課題










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