君だけの魔法




『俺…先輩の事…好きだから』


頭の中でリフレインする。隣を歩く大好きな彼がくれた幸福なコトバ。
私は今、ふわふわと宙を歩いてるようなそんな感覚に陥っていて上手く歩けてるのかもわからない。

これが現実だという実感なんてこれっぽっちもなくて。
夜が明けたらこの幸せな魔法が溶けてしまいそうでリョーマくんと離れるのが少し怖い。

「ねぇ…そう黙られると困るんスど……」

困った顔をして話しかけられてはっとした。

「あ…ゴメン」
「謝らなくていい、ただ普通にしてくれればいいから…」
「うん、そーだよね」

普通に、と言われても困ってしまう。
私は今までまともに恋愛なんてしたことなんてないし
これからどうすればいいかなんてこれっぽっちもわからない。
今まで通りで、いいのかな…。


再び訪れる沈黙…。
何か、何か話さなきゃ。
あ、そういえば、みんなどうしてるんだろう。
みんな…?


「あぁぁ!!」
「何スか?イキナリ大きな声だして」

突然の私の声に驚いたリョーマくんは大きな瞳をより一層大きくさせていた。

「片付けがあるの忘れてたっ!」

しまった。浮かれてて忘れてた。委員会の仕事、最後まできちんとやろうって決めてたのに。私のバカ。

「いや俺らもまだ片付け残ってるし…。てか先輩、今まで何処に向かって歩いてたの?」
「いや、そ、そ、それはその……」

浮かれてたなんてとても言えない。
全身がかぁーと火照る。
秋の初めの冷たい風が気持ち良いくらいに。
リョーマくんは私の心の中を見透かしたのか、クスっと小さく笑った。
余裕のなさを見透かされた恥ずかしさですぐにでも此処から逃げ出したくなった。
あぁ、もう余韻もなんにもない。

「…ゴメン。私、先行くから」
「先輩!」
「え…?何?」

走り出そうとした私はリョーマ君に呼びかけられて振り返ると、リョーマくんは淡く優しい笑顔で、私に言った。

「終わったら電話してよ……待ってるから」
「え…でも…」

多分運営委員は一般の生徒たちより終わるのが遅くなるし。
リョーマくんを待たせるのは悪いような気がして、首を縦に振ることはできなかった。

「送る、もう遅いし」

甘えても…いいんだよね。
頼ってもいいんだよね。

「うん……ありがと。じゃまた後でね」
「ん…」



“また後で”



あぁ、どうしよう嬉しい。
嬉しくてたまらない。
これが夢なら醒めなくていい。
魔法ならどうか解けないで…。




fin




2007/09/24



お題配布元:自主的課題










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