静かな視線


露出したいな、って思いながら、結局怖くて出来ないでいる。
真夜中に裸でベランダに出てみて、オナニー。
学校のトイレの個室で全裸になってオナニー。
それくらいの、確実に誰にも見られなくてバレない状況でしかしたことがない。
だけどもっとすごいところで露出して、誰かに見られちゃうかも、ってスリルを感じながら、エッチなことがしたい。
ずっとそう思って、悶々していた。


「………」
学校の遠足でやって来た遊園地。
俺は高い観覧車を見上げた。
あの中だったら、誰にも見られないけど、見られそうで、ベランダよりも興奮するかも知れない。
「鳴海、おい、お前はどーする?」
観覧車を眺めていると、急に名前を呼ばれて俺ははっとした。
隣にいた友人たちが俺を見ている。
「ごめん、なに?」
「あのジェットコースター。乗りに行くけどお前は?」
指を差された方に顔を向けると、うねうねしたレールの上を、すごいスピードで滑走していくジェットコースターがあった。
「…俺待ってるよ」
「わかった。じゃあ終わったら電話するから、お土産とか見てたら?」
「うん」
友人たちははしゃいでジェットコースターの方へ走って行った。
列の前に立っている看板には四十五分待ちと書かれていた。
俺はジェットコースターの前を離れて、観覧車の方へ行った。
全然並んでない。
「どうぞー」
スタッフのお姉さんに優しく微笑まれて、俺は一人で観覧車に乗った。
乗る時に、とりあえず二つ先に進んだところに人が乗っているのを確認したけど、他はわからなかった。
俺は観覧車に乗って、地面がゆっくり離れていくのを静かに眺めた。
そしてまず下からならわからないだろうと思って、学ランのズボンを脱いだ。
下着も取って、ちんこを出す。
「……………っ」
思った以上に興奮してきた。
ここには同じ学年の生徒がたくさんいるのに、俺はこんなところでオナニーをしようとしている。
脚を大きく広げて座り、ちんこをシコシコと擦った。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ」
時計で三時を過ぎたあたりのところまで上がってくると、俺はついに上も脱いだ。
全裸になって、外を眺める。
皆がどんどん小さくなって、さっき見上げた速いジェットコースターよりも、高い位置にやって来てしまっていた。
「お空でオナニー、気持ちいい…っ」
俺は夢中でちんこを擦った。
硬くなって先っぽから透明な汁が出る。
喘いだって、空だし、個室だし、わかんないはずだ。
「あっあっ!あんっ!オナニー気持ちいい…っ!気持ちいいよぉ!」
俺はがに股になって、はしたない姿でちんこを弄る。
「ぁー…っ!あんっあっあっオナニー!オナニー!」
観覧車がようやくてっぺんにまで来る。
「あっあんっ!ちんこっイッちゃうっ!イッちゃうっ!」
俺は一番上で射精した。
手の中にたくさん出る。
「はぁ、はぁっ、気持ち良かった…」
俺は汚れた手を舐め取って綺麗にした。
九時の場所を過ぎる前に制服を着て、心臓をバクバクさせながら、何事もなかったように地上に戻る。

俺は携帯を確認する。
まだ並んでる、列全然進まない、とメールが入っていた。
次こそ本当にお土産でも見ようかと、観覧車から一歩二歩、離れた時だった。
「ねぇ、君」
肩にぽん、と手を置かれて振り返ると、スーツを着た知らない男の人が立っていた。
「…なんですか?」
「裸でオナニーしてたよね?」
男の人は、若くて、普通の人、みたいな見た目なのに、突然そんなことを言い出してきて、俺は足がすくんだ。
見られていたんだ、そう思うと、どうしようっていう不安と、感じたことのない快感が入り混じった。


俺は男の人にトイレの個室へ連れ込まれた。
「遠足?」
「…はい」
「遠足なのに観覧車でオナニーしてたんだ」
男の人は、急に襲いかかってきたりはしなかった。
優しそうに話しかけてくるから、普通な感じだけど、こんなところに連れ込むんだから、何もないわけはない。
「露出が好きなの?」
俺は恥ずかしくなって、声を出さずに頷いた。
「いつもああいうことしてるんだ」
「……いつもは、ベランダとかでしか…。こんなに、人がいっぱいいるところは、初めてです…」
「誰かに見られたことはないの?」
「…お兄さんが初めてです……」
男の人は声には出さずに笑った。
「見せて。裸」
「え……」
「はい、鞄」
男の人が手を出してくる。
俺が持っていた鞄を渡すと、壁のフックに引っかけてくれた。
そして笑ったまま、扉の前で腕を組み俺に視線を戻す。
こんな状況で逃げられるわけもなくて、俺はさっき着たばかりの学ランを脱いだ。
怖いって気持ちと、裸を人に見られる高揚感が入り混じる。
「どう?気持ちいい?」
全裸になった俺に、男の人はまた優しい声で訊いてきた。
「…変な感じ…」
「さっきみたいにオナニーしてみてよ」
「えっ…」
「もう一回見ちゃってるから、今照れたって同じだよ」
柔らかくそう言われると、そんなもんか、と思ってしまう。
それに露出が好きな俺からしたら、誰かに見られながらオナニーをするっていう行為はなかなか刺激的だ。
こんなこと今後経験出来るかわからない。
「…座ってもいいですか」
「どうぞ」
俺は洋式の便座に座った。
足を上に上げて、M字に開く。
男の人はちょっと驚いていた。大胆すぎたみたいだ。
ちょっと恥ずかしくなりつつ、さっきも弄ってたちんこを触る。
人に見られている興奮で、ちんこはすぐに勃った。
「はぁ、ぁ、ぁっ、ぁう」
シコシコ擦っていると、すごく視線を感じて、男の人を見上げた。
男の人は俺のオナニーしている姿をじっと見ている。
「興奮してる?」
「…少し」
「おちんちんびくびくしてるね」
「ぅ…、」
俺は恥ずかしくなってきて目をそらした。
ちんこの先からは我慢汁が溢れている。
擦ると小さい水音が鳴った。
「ぁ、ぁっ、ぁん、はぁっ、はぁ…!」
息を上げていると、急に男の人が動きだした。
俺の口元を手で塞いでくる。
「んむ…っ」
「人が来た。声を出すとバレるよ」
耳を澄ませると、足音が近付いてきた。
確かにそれはここのトイレへと入ってくる。
男の人は俺の耳元へ顔を近付けてきて、小さな声で囁いた。
「口、抑えててあげるから…。手動かして」
俺はなんでか言うことを聞いて、ちんこを擦る。
くちくちという水音も、誰かが用を足している音で掻き消される。
漏れ出る声は男の人の大きな手の中へと消えていく。
俺はこの不思議な状況に興奮していた。
扉の向こう側の人に、知らない人に全裸でオナニーを見せているっていうことがバレたらどうしようって思うと、ちんこを擦る手が早くなる。
男の人は、俺の口を塞ぎながら、じっと俺のちんこを見ていた。
だめだ、イク。
こんなに間近で見られてたら、イッちゃう。
「………………ッ!!」
俺は二度目の精液を出した。
とぷとぷと溢れ出して、手が汚れていく。
イッた余韻に浸っていると、用を足しに来た人の足音が遠くなっていった。
男の人は誰もいなくなったことを見計らって、そっと俺の口から手を離す。
「イッちゃったね」
「…はぁ、はぁ」
「気持ち良かった?」
俺は男の人を見上げた。
男の人はずっと同じような顔で小さく笑っている。
俺がこくん、と頷くと、「そう」と短く言いながら、俺の体を上から下まで眺めた。
「…後ろ向きで座ってみて」
俺がその言葉に返事をしないと、「あっち」と俺の後ろの壁の方を指差した。
俺は便座から立ち上がって、男の人に背を向ける。
どう座ったらいいのか戸惑っていると、便座に膝を突いて座るように言われた。
足を便器の中に落としてしまうんじゃないかって不安になりながら言われた通りにした。
「お尻突き出して、穴が見えるように」
「こ、こうですか?」
俺は落ちないように気を付けながらお尻を男の人の方に突き出した。
「オナニーする時こっちも使うの?」
俺は男の人の言葉の意味がよくわからなかった。
「こっちって…?」
「お尻の穴は触ったことない?」
「……ないです」
お尻の穴を使うオナニーがあるなんて、俺は知らなかった。
ちんこを触るのだって、授業で聞いて初めて知ったくらいだ。
俺は不安そうに男の人の方を振り返る。
男の人はさっきより少し楽しそうだった。
「処女なんだね」
「え?」
「いいや。お尻を自分で掴んで、穴をよく見せて」
最初はよくわからなかったけど、俺はちんこを見られるより恥ずかしい気持ちになってきた。
うんちが出る穴をこんなにまじまじ見られることなんてない。
「…恥ずかしいです」
俺がそう言っても、男の人は引かなかった。
「君は、恥ずかしいのが興奮するんじゃないの?」
男の人が言ってることは正しかった。
恥ずかしいところを見られるのがゾクゾクするほど嬉しくて、俺は露出するのが好きなんだ。
俺は返事をする代わりに、男の人の言うことを聞いて、お尻を掴んで穴を見せつけた。
「綺麗な色だね」
お尻の穴に綺麗な色とかあるのかな?とただ疑問だった。
だけど人に見られるような場所じゃないから、男の人にお尻の穴をじっと見つめられてまた興奮し始めてしまった。
「あ」
男の人が短く呟く。
なんだろう、と思っていると男の人の指が俺の穴に当たった。
「あっ」
俺の体はびくん、と反応した。
お尻を掴んでいた手を思わず離してしまう。
「な、なんですか…」
「トイレットペーパーのカスが付いてた」
「え」
俺は顔が熱くなった。
お尻の穴を見せつけて、付着していたトイレットペーパーを取られるなんて。
恥ずかしすぎる。
なんだか泣きたくなった頃に、携帯の着信音が鳴った。
俺の携帯だ。
男の人は鞄に入っていた携帯を取り出した。
「友だち?」
男の人は画面を見せてくれた。
ジェットコースターに乗りに行った友人からだった。
俺は頷く。
「ジェットコースター乗り終わったら、連絡するって言ってました…」
「そう。じゃあ戻らないとね。出て良いよ」
男の人は俺に携帯を渡してきた。
俺はしつこく鳴ってる電話を取る。
俺が話している間に、男の人は静かに個室から出て行こうとする。
俺は目で追う。
男の人は俺の裸を見るだけ見て、それ以上何もしないで、静かに帰って行った。

「……気持ち良かったな…」
男の人の名前も知らないし目的もよくわからなかったけど、俺はどこかドキドキしていた。

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