朝比奈


青樹が寿退社をする、と久遠から処理課員に伝えられたのも急な話だったが、今回の話も突然だった。
「今日から仲間が一人増えるから」
珍しく処理課全員が出勤する日があると思えば、朝皆が仕事を始める前に久遠はそう言い出した。
皆は無言で、久遠の隣を見る。
雪村よりも青樹よりも、色の白い青年が立っていた。
青年は見るからにおとなしそうで、人見知りなのか緊張しているのか、処理課員たちから目を逸らしていた。
「名前は!?」
後ろの席から新穂が大きい声を出す。
久遠は青年に目を向けた。
「自分で言えよ」
久遠にそう言われて、青年は新穂を一瞬視界に入れてからすぐに目を逸らした。
そして薄く口を開く。
「……朝比奈」
「下は!?」
「……下の名前…嫌いだから言いたくない」
「あ…、へぇーー!!」
「無理に盛り上げようとするな」
戸惑いながら声を上げる新穂に、雪村は小さな声で言った。
桐生や椎名も比較的おとなしい性格だが、朝比奈はその二人とは違っていた。
無愛想で、圧倒的にコミュニケーション能力がないように感じ取れる。
「まー、仕事の内容が内容だしよ。同じ処理課の奴らくらいは仲良くしとけよ。ここがお前の休まる場所になるんだからな」
久遠は無口な朝比奈の髪の毛をわしわしと撫でた。
朝比奈は露骨に嫌な顔をして、処理課員は皆それを見ていた。

朝比奈は、中学生の頃から引きこもっていて、高校は通信制でなんとか卒業した。
小さな工場に就職はしたが、上手く行かず退職。一ヶ月も持たなかった。
その後実家に引きこもり続け、たまに気持ちが奮い立ち簡単なアルバイトを始めるが、すぐにやる気が失せて辞めてしまう。
自分は親の金と酸素を減らし続けているのに、対して二人の兄は医者と教師、弟は保育士と、誰かのために働く職に就いていて、それがさらに朝比奈の自分の価値を下げさせた。
自分なんて生まれてこなくて良かったんじゃないか。朝比奈は日々そう思いながらも、べつに自ら命を絶つような気力もなく、完全に失敗した生活を日々送り続けていた。

そんな中ネットで見つけたのが、この会社の中途採用の知らせだった。
大きな企業なのにも関わらず、年齢も経歴も問わない上に高収入。
確実に裏があると思ったが、朝比奈は試しに履歴書を送った。
面接の時点で早くも、朝比奈はその裏がなんだったのかを知る。
社員の性欲処理が仕事。
朝比奈はそれを面接官に知らされた時に思ったのだ。
なんの役にも立たないクズな自分には、ぴったりの仕事だと。


人見知りの朝比奈は、仲間意識など持つ気は無かった。
中途採用と言うことは、すでに出来上がっている空気を邪魔するということである。ましてや誰かが抜けた穴埋めに、自分のような人間のクズが入ったところで塞がるわけもない。
そうやって殻に閉じ込もろうとしている朝比奈とは違って、新穂はこの新人を、自分たちの輪の中に引きずり込みたくて仕方が無かった。
処理課の一番下だった新穂にとって、初めての後輩である。
朝比奈にとって、新穂自身が慕っている雪村のような存在になりたいと思ったのだ。
「俺新穂!よろしく!」
皆指名され処理課を出て行く中、相変わらず指名がない新穂は、同じく残ったままの朝比奈の元へにこにこしながら近寄っていく。
朝比奈はやる気の無い目で新穂を見た。
「色白いね!」
「……外出ないから」
「俺さぁ!今まで一番下だったから後輩が出来て嬉しい!」
「……お前会話する気あんの…」
「年いくつ!?」
「…25」
「やっべ!年上だった!ッスね!」
「……べつに敬語とかいいけど……。……仕事しに行けば?」
朝比奈は朝から元気な新穂を鬱陶しく思いながらそう言った。
「俺人気ないからいっつも居残ってるんだ」
「…それっている意味あんの?」
朝比奈がそう言うと、新穂はじっと朝比奈を見つめた。
朝比奈は心内で、それが言ってはいけない言葉だったことに気付いたが、かと言ってそれをすぐに謝ることは出来なかった。
「指名来た時全力出すからそれでチャラ!」
新穂は笑いながらそう言った。
傷付いていない様子を見て、朝比奈は密かにほっとする。
「それに俺さぁ。この仕事大好きだから。辞めたくないし」
「…大好きって……他人の性欲処理だろ…。ダッチワイフの役してんのと一緒じゃん」
「でも気持ちいいし!それにいっぱいいる中で指名されると嬉しいよ!自分が特別なんだって思えるし!」
「……………あ、そう」
朝比奈は、ポジティブすぎる新穂に付いていける気がしなかった。

温度差がある、主に新穂からの一方的な会話をしばらくしていると、処理課の電話が鳴る。
期待した新穂には残念なことに、指名は朝比奈だった。
「初デビュー!がんばって!」
「……はいはい」
朝比奈は新穂のハイテンションから逃れられたことにほっとしつつ処理課を出た。


廊下に出ていた社員達は、皆朝比奈に注目した。
皆が毎回お世話になる処理課の新しい人材である。
どういう人物なのか皆舐め回すように見ていた。
朝比奈はそれに対して冷めた目で廊下を歩いて行く。
内心は、呼び出しされた仮眠室の場所が全くわからず迷っているところであったが、それを尋ねることが出来ずにいた。
だんだん面倒に思ってきた朝比奈が歩く速度を緩めてとろとろ歩いていると、通り過ぎかけた部屋の扉がいきなり開き、腕を引っ張られた。
「っ!?」
「呼び出したの俺だよ」
社員はそう言うと部屋の扉を閉めて朝比奈をベッドへ投げるように押し倒した。
朝比奈が倒れされた拍子に瞑った目を開けると、社員は既にベッドへ乗り、朝比奈の体を跨いでいた。
「…」
「君が朝比奈ちゃんかぁ。めちゃくちゃ白いな。処理はこれが初めてか?」
朝比奈はにやにや笑っている社員を見上げながら静かに頷いた。
社員は満足そうな顔をする。
「そっか−、じゃあ可哀想だな。俺全然優しくないから」
社員はそう言うと、朝比奈のワイシャツを掴み無理矢理胸元を破いた。留めてあった釦が弾け飛び床のあちこちに散る。
「………」
朝比奈は内心動揺した。
普通に外せばよくないか?とただただ疑問を抱く。
社員は朝比奈がそんなことを思っているとも知らずに、露わになった朝比奈の裸体を舐めるように見た。
朝比奈の体は細かった。浮き出た鎖骨に、脂肪も筋肉もない平な身体。強く抱きしめたら折れそうなくらいだった。
元々の色素が薄いのか、乳首も綺麗な色をしている。
太腿も細く、全体的に、まだ胸の膨らみがない女子のような身体つきだったが、股には大きくもなく小さくもないペニスがついていた。
「ふうん…。なんか子どもみたいな体だな。佐倉とまではいかないけど…」
社員はそう言いながらよく目につく乳首を指先で弄った。
「んっ」
朝比奈の体がひくんと反応する。
「お?乳首感じんの?」
社員は笑いながら両乳首をくにくに弄る。
「…、べつに……、っ」
朝比奈はつまらなさそうな顔をした。
社員はそれを見て朝比奈の乳首をきゅっと抓る。
また朝比奈がひくんと動く。
「はー、なるほどね」
社員はそう言って朝比奈の乳首をピシッと指で弾いた。
「あっ」
朝比奈の声が漏れる。
社員はまた口の端を上げた。
「強くされる方が好きなんだ」
そう言って朝比奈の乳首を何度も指で強く弾く。
その度に朝比奈は小さく声を出していた。
しつこさに少し苛つきながら社員を見上げる。
朝比奈の乳首はじんじんしながらもぷっくり突起していた。
そんな朝比奈の乳首に、社員はいきなり吸いつく。
「ひっ、い…っ」
社員は唇や舌で弄るだけでなく、歯でも朝比奈の乳首を刺激した。
そのまま噛まれたらどうしよう、と朝比奈は不安になる。
しかしペニスはしっかりと反応していた。
「はは、乳首弄っただけですげー濡れてんじゃん」
「……っ」
「愛想ないくせにスケベだねぇ」
社員はそう言いながら朝比奈にキスしようと顔を近付けた。
朝比奈は手を伸ばして社員の口を塞ぐ。
「…なに」
「…そんなの良いから…、ちんぽしゃぶらせて」
「へぇ…、新人でも即戦力ってやつ?」

社員が上から退くと、朝比奈はのそのそと起き上がった。
座っているだけの社員のベルトを外して、股間をまさぐりペニスを出す。
案外大きかった社員のペニスを見て、朝比奈はすげ…、と心の中で呟いた。
そして社員にじっと見られている状態のまま、ペニスに舌を這わす。
「ん、っ、ん」
レロレロ舐め回し、堪らず口に咥える。
下手なしゃぶり方なら頭を掴んで腰を振り、無理矢理喉奥まで突っ込んでやろうかと社員は思っていたが、朝比奈は自ら喉も使って下品にしゃぶった。
社員は夢中でしゃぶっている朝比奈を見て口の端を上げた。
「朝比奈ちゃんさぁ。初めてじゃないだろ?」
「…、ん、っ、はぁ…っ、」
「汚れてなさそうな体しといて…」
社員は朝比奈の髪の毛を掴んで顔を上げさせる。
朝比奈のフェラのおかげで、社員のペニスは硬く勃ち上がっていた。
「後ろ向けよ。尻出しな」
「………」
朝比奈は言われた通り四つん這いになって、社員に尻を突き出した。
白くて小さな尻には、蒙古斑があった。
社員はその尻を軽く叩く。
「ガキみてぇな尻」
そう言いながら社員は濡らした指を朝比奈のアナルに挿入した。
処理課はすぐに挿入出来るように慣らしておくのが基本だが、それにしても朝比奈の中は柔らかかった。
「ぁ、っ」
「…の、割に…中はかなり使ってんなぁ…。アナニーのしすぎか、ハメすぎか知んねぇけど」
社員は一本の指で中をぐちょぐちょと掻き回す。
ふいに感じる場所を軽く擦られ、朝比奈はひくんっと反応してから熱い息を吐いた。
「は、ぁ、っ、」
「なぁ…、男慣れしてるんなら、そそる言葉の一つくらい言ってみてよ」
男の指はその言葉とともに抜かれた。
朝比奈のアナルはヒクヒクと疼いている。
「…ぼ、僕の、中古ケツマンコで良かったら……っ、オナホ代わりに使ってください…っ、が、ガバガバだけど…っ、頑張って締めます…っ」
「あはは、それじゃべつにそそんないよね」
社員はそう言いながらも、朝比奈の腰を掴んでペニスを挿入した。
「ん、ひぃ…っ!」
朝比奈はシーツをぎゅっと握った。
「言った通り、しっかり締めてよ」
社員は腰を振って、朝比奈の中をごりごり抉るように突いた。
痛みはないが圧迫感に朝比奈は声を漏らす。
「あっ!うっ、っふ、あっ、あ゙っ」
揺さぶられると、全く触ってもらえていないペニスが揺れる。透明の糸が引いていた。
「んっ、ん、ぁ、う、っ、はぁ、あぁっ」
「ほら、ちゃんと締めて」
「はっ、あっ、はぁ…っ、」
朝比奈は中を締めようと自分のペニスに手を伸ばした。
しかし気付かれてその手を邪魔される。
「ちんこ触らないでさぁ、ちゃんと頑張って締めなよ」
社員は朝比奈の両手を掴んで引っ張りながら腰を振った。
朝比奈は下からズンズン突かれて声を漏らす。
頑張って中を締めつけると、社員は喜んだ。
「そうそう、その調子」
「はっ、はっ、あっ、あぁっ、あっ」
「ちゃんと頑張ったら、朝比奈ちゃんのいいとこもいっぱい突いてやるからさ」
社員は指で弄った時に見つけた、朝比奈の感じる場所を狙ってペニスの先をごりゅっと当てた。
「あぁッ!」
朝比奈は目を見開いた。
全身に快感の衝撃が一瞬にして駆け巡る。
「いい声」
社員はニヤニヤしながらまたそこを狙って突く。
「やぁんっ」
朝比奈が蕩けた声を出すので、社員は楽しくなった。
腰を振り、ずっとその場所をめがけて激しく突き上げる。
連続した刺激に、朝比奈は真っ赤な顔をして目に涙を浮かべた。
「あっ、あぁっ、あんっ!そ、こぉ、っ、だめっ、だめぇっ、あ゙ッ、あん!ひっ、いっ、や、だ、あっあっ!あぁっ、やめてっ、あっ、だ、め、ぇ、っ、ちんぽっ、あぁっ!あぁんっ!やっあ゙ぁっ!」
朝比奈の脚はガクガクしていた。
絶え間なく続く快感に頭がぼうっとして、開いた口が塞がらない。
そこから情けない声と涎がどんどん出て行く。
「あぁっ、うっ、んぅっ、そ、こっ、ひ、ん…っ、気持ちいい、あっあっ、ちんぽっ、ぐりぐり、しちゃ、ぁ…っ、だ、め、ぇ…っ、ああっ、あああっ、お、願っ、あぁ〜ッ、死んじゃうっ、うぅっ、あっ、しんじゃうからぁっ、やぁん…ッ!」
「こんなんで死なないよ、」
社員はガツガツ腰を振った。
朝比奈は泣きながら嫌々と首を横に振る。
ペニスがもう我慢の限界だった。
「あっ、あっ、ちんぽっ、触りた、ぁ、っ、お願、ちんぽ、イきたい、あっ、あぁっ!シコシコ、させてぇ…っ」
「だめだめ、俺より先にイくのは無しっしょ。俺の処理なんだからさぁ。先輩たちは皆そうやってるよ」
「うっ、あっ、そ、ん、な…っ、ぁぁん、お願い…っ、出して…っ、は、やく…っ、ザーメン、出してよぉ…っ」
朝比奈は垂れてきた鼻水をすすりながら懇願した。
もう自分が射精することしか考えられなかった。
腰をくねらせ、中を締めつけ、社員の精液を搾り取ろうと奮闘する。
社員も社員で腰を振りまくった。睾丸から精液が上がってくる感覚がすると、朝比奈の耳元で囁いた。
「あー…、イきそ…っ」
「あ、っ、はぁっ、出してっ、出し、てぇ…ッ!ザーメン飛ばしてぇ…ッ!」
社員は射精するまで腰を速く振る。
そして出る寸前に根元までペニスを突っ込んで、朝比奈の奥へ向かって精液を注いだ。
「ふ、あっ、あ、出て、る…っ、中出し、ぃ…、」
熱い精液が中にびゅーびゅー飛んでくる感覚に、朝比奈は上を向いて小さく震えた。
そしてとうとうペニスを触らずに、朝比奈は射精してしまった。
「はっ、あ、イッ、ちゃ…っ、ぁぁぁ…っ」
朝比奈は色濃い精液をシーツに全て飛ばす。
「触んなくてもイけんじゃん、やるねぇ」
社員は朝比奈の手を離した。
朝比奈はそのまま前に倒れて伏せる。

「はぁー…っ、使い込んでるわりにはまぁ、なかなかだったよ」
「………………………」
社員がそう言いながらペニスを抜いても、朝比奈は伏せたまま返事をしない。
快感から解き放たれた朝比奈は、その反動で一気に気持ちが暗くなったのだ。
“ああ、なんでこんなことしてるんだろう?”朝比奈は思った。
“給料いいとか上手い言葉に乗せられてこんな仕事始めたけど結局風俗で働くのと変わりないし、それよりもたちが悪くないか?クソみたいな扱いされて結局悦んじゃってる自分も自分だけどさ。毎日毎日アナニーなんかしてその度に自分が嫌になるくせに、そこに全然知らない奴のちんぽハメるとか考えられないよな。指名されたら自分は特別だと思えるとか新穂は言ってたけど、そんなの綺麗事だろ。どんだけポジティブなんだよ。やっぱりこんなのダッチワイフかオナホの代わりじゃん。人間として扱われてないじゃん。まぁ僕なんて引きこもりでニートで全然仕事も人間関係も上手く行かなくて生きてる価値なんてないクズだけど。使ってもらえるだけありがたいのかもしれないけど。こんな僕が人間扱い求めてるなんてことがもう烏滸がましいんだよ。おとなしくちんぽハメられて喘いどけばいいだけなのに、変に感情なんてあるから。やっぱりさっきので死にたかったかも。そしたらこんなこと考えずに気持ちいいことは気持ちいいまま死ねたのに。あぁあ鬱過ぎる……。”

伏せたままの朝比奈が、まさかそうやって自分を卑下しているなどと気付いていない社員は、朝比奈の体を無理矢理仰向けにさせた。
朝比奈の目は、すっかり暗くなって遠くを見ていた。
そんな朝比奈を見て、社員はまたいやらしく笑う。
「なに朝比奈ちゃん。もしかして賢者タイム?」
「…………」
「いいね、その失望してる顔……」
社員は一回抜いてさっさと帰る気だったが、朝比奈の様子がおかしくなったのを見て気を変えた。
自分のペニスを擦ってまた勃起させる。
朝比奈はそれを目にしてマジかよ、と心の中で呟いた。
「賢者タイム中の朝比奈ちゃんに質問していい?」
社員はそう言いながらペニスの先を挿入する。
もうやだな、と思うが朝比奈はそれを言葉に出来ないほど気が落ちていた。
「初体験っていつ?」
“くだらない質問しやがって”朝比奈は暗い目で社員を見た。
にやにや笑っている社員と、初体験の相手がかぶる。
「ねぇほら、いつなんだよ」
「うあっ」
社員はゆっくり挿入していたのを、焦れて途中から一気に根元まで入れた。
「はぁー……ッ、はぁー…ッ」
朝比奈は大きく息をした。心はすっかり暗く落ちているのに、下から熱い快感がじわじわと侵食していて、自分の体がよくわからなくなった。
朝比奈の気持ち的には、もうやりたくなかったが、体はさらに快感を求めている。
繋がっている部分がジンジンしていた。
わけがわからなくて汗や涙がじんわりと出る。
「………、中学生……」
朝比奈は答えるまで動かない気でいる社員に、小さな声で教えた。
社員は楽しそうな目をする。
「相手も?」
“うるせーバカ”朝比奈はそう思いながら静かに首を振って否定した。
「じゃあ…教師?はは、もしかして初体験ってレイプか?」
“うるさい死ねバカ殺すぞ”
朝比奈は顔を両腕で隠した。
だが社員はそれが本当に掘り起こしてはいけない過去だとは思わなかった。
なぜならレイプと口にした途端、朝比奈のアナルは今まで以上に強く締めつけたのだ。
社員は朝比奈の脚を掴むと、そのまま腰を振った。
「なるほどね。レイプされてここの良さ覚えちゃったんだ」
社員は賢者タイム中の朝比奈をいじめたくて仕方が無かった。
またわざと朝比奈の弱いところをグリグリと刺激する。
「あッ!あんっ、やっ、やら…っ、もう嫌、だぁ…ッ、やぁぁんっ」
朝比奈の体がびくびくと反応する。
襲い来る快感に身を捩ろうとするが、社員の手が邪魔をした。
社員は腰を振りながら、また朝比奈の乳首を摘まんだ。
「やっ、あっ、あっあっ!もっ、むり、ぃ、もう、やらぁ…ッ、気持ち、いいの…っ、もうやら…、あッ、あぁんっ、許して、…っ!」
朝比奈はそう言いながらも、その後社員と同時に射精した。
いつの間にか社員の背中に腕を回していた朝比奈は、伝わる体温になぜかほっとする。
“こんな嫌な奴でも、くっつけばあったかいのか。”
朝比奈は久しぶりに感じた人の温もりに、心地良さを感じた。

別れ際、朝比奈は社員の名前を聞いた。
社員は企画部の羽田だと名乗った。相変わらず顔からはニヤニヤした笑みが消えない。
“いつかそのちんぽ切り落としてやる”
朝比奈はそう思いながら部屋を出た。


処理課に戻ると、朝比奈以外も雪村や真木が処理を済ませて戻ってきていた。
もちろんずっと待機していた新穂もいる。
新穂は朝比奈の顔を見た途端笑顔を向けた。
「お疲れ!どうだった?」
朝比奈は新穂に近付いてから口を開く。
「……賢者タイムさえ来なけりゃ最高だった」
「そうでしょ!」
にこにこ笑う新穂に、朝比奈は心の中で舌打ちした。
そんな二人を見て、いつの間に仲良くなったのかと雪村と真木は顔を見合わせる。
「あ!シャワーあるから!処理終わったらここ使って!」
新穂は席から立ち上がり、シャワー室の方へ歩いていく。朝比奈もその後ろに続いた。
「ここね!」
「…うん」
朝比奈は頷くと、シャワー室に入る前に新穂の襟を引っ掴んだ。
そして背伸びをして、へらへらしている新穂の口に自分の唇を押し付ける。
「!?」
様子を見ていた雪村と真木は静かに驚いた。
そして新穂も目を丸くする。
口を離した朝比奈だけが、普通の顔をしていた。
「なっ、ななななにっ、急に!」
「……さっきの人にされそうになったから」
「えっ?」
「……嫌な奴が初めてって嫌だろ」
朝比奈は、セックスの経験はあったがキスはしたことが無かった。
先ほどの処理中は上手く避けられたが、今後もそれが通用するとは思えない。
そこで、嫌な社員に奪われる前に、とりあえず新穂で済ましたのだった。
新穂は先程よりもさらに明るい笑顔を向ける。
「それって俺のこと好きってこと!?」
騒ぐ新穂に、朝比奈は細い脚で蹴りを入れた。
「……そんなこと言ってないだろ」
「嬉しい!」
「……お前話聞く気あんの?」

シャワー室前で騒いでいる二人を眺めながら、雪村が口を開く。
「おとなしい奴かと思ったら結構大胆なんだな」
真木は雪村に目を向ける。
「あっくん、盗られちゃうんじゃない?いいの?」
雪村は真木から目を逸らした。
「……べつに。他に目が行ってくれた方が助かるかな」
「またそんなこと言っちゃって」
真木は無関心を装う雪村から、また新穂と朝比奈に視線を戻す。

「でも、馴染んでくれそうで良かったね」
真木の言葉には、確信に少し、願いが混じっていた。

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