「ちんこから血がーー!!!!」
「ひぃいいいごめんなさいぃっ!!」
今日も秦が処理をしに行った先で、社員の叫び声が上がった。
慌てふためくその部署に、たまたま通りかかった人事部の有村が顔を覗かせる。
「ごめんなさいっごめんなさい!」
秦は社員に頭を下げつつ、扉の近くで有村が見ていることに気付き、顔をさっと青くした。
「相変わらずのようだな、秦くん」
「あ、ああ有村さん…」
「来たまえ」
有村は顎をくいっと動かして秦を呼んだ。
「は、はいぃ…っ」
「………」
わたわたしながら有村の後を追いかける秦の姿を、柳川は自分の席から黙って見ていた。


「うぅ…痛い…っ」
秦は真っ赤になった自分の尻を擦りながら廊下を歩く。
有村に連れ出され、秦は再度ドジをしないよう注意をされて、いつかのように尻を何度か叩かれたのだ。
それが癖になって感じてしまう秦は、今回もワイシャツの下でペニスを硬くさせたが、有村は尻を叩くだけ叩いて、前のように処理に使ってはくれなかった。
廊下を歩いて社員とすれ違っても、先ほどのペニス流血事件の噂が広まっているのか誰も秦に声をかけようとしない。
次に指名された処理の予定はあるのだが、それまでにはまだ少し時間があった。
「…自分で抜いちゃおうかな………」
秦はそう呟きながら、人目を避けた非常階段の方へ向かった。

「んっあっあっあんん…っ」
秦は非常階段の扉にもたれながら、自分で自分のペニスを擦った。
まだ有村に叩かれた尻がジンジンして熱い。
もっと叩いてくれたら、それだけでイけたのに。
秦はそう思いながら痛みの熱さに神経を集中させて手を動かす。
「あっ、あっ!はぁっ、あんんっ!」
「…………………」
「ひっ、あっあぁっイク…っぅ、ぁああんっ」
秦はきゅっと目を瞑りながら、射精した。
ぱたぱたと足下に精液が落ちる。
「…………………」
「はっ、はぁ…っ、はぁ……っ」
硬く瞑っていた目を開け、秦はゆっくり顔を上げた。
そしてバチッと、目の前にいる社員と目が合う。
「きゃーーーーーーっ!!???」
まさか人がいると思っていなかった秦は、叫び声を上げてその場に崩れ落ちた。
社員もそれに驚いて肩をびくっと揺らす。
「いいいいいたなら声かけてくださいよ!!」
自慰をしているところを見られて、秦は涙目で社員に訴える。
「お前が勝手に一人で始めたんだろーが…」
社員は呆れながら、口に咥えていた煙草を吹かす。
秦はそんな社員を見て、ピンときた。
「というか…柳川さん…、じゃないですか…?」
「……………」
階段に座り込み煙草を吸っていたのは、秦の言う通り、柳川だった。
会社一の問題社員と上から目を付けられていた柳川は、最近処理課の真木の手によって更正した。
そのおかげで秦は、柳川に続く問題社員として人事から説教を受けることになったのだ。
それなのに今の様子を見ていると、どうにも更正した様子は無い。
「サボりも煙草も辞めたって聞きましたけど…」
「…うるせーな…」
柳川は苛つきながら煙を吐く。
「べつに俺は良いんですけど…。真木さんと約束したんじゃ…。真木さん、悲しみますよ」
秦の言葉に、柳川は舌打ちした。
分かりやすいくらい大きな舌打ちに、秦はビビる。
「…良いんだよ。俺はあの人の言うことなんかもう聞かねぇー」
「え…、なんでですか?」
秦の言葉に、柳川は秦にちらっと目を向ける。
「…お前もよぉ。有村さんに気があんならやめとけよ」
先ほどの有村と秦の様子を見ていた柳川はそう言った。
秦は首を傾げる。
柳川はそこからの言葉の続きを言いたくなさそうだったが、何もわかっていない秦の顔を見て重い口を開けた。
「あの二人デキてんだよ」
「…え?」
秦は意外な言葉に目を丸くした。
「デキてるって…真木さんと有村さんが…?」
「おー…」
初耳だった秦は、素直に興味を示す。
「な、なんでそんなこと知ってるんですか?」
有村と真木が交際していることは確かに事実だが、二人はその関係を秘密にしていた。誰にも話していないし、一緒にいるところを誰にも見られていない。
それなのに柳川は、二人の関係に気付いていた。
秦の質問に、柳川は嫌な顔をする。
「…あの二人たまに、一緒の匂いしてる時があんだよ」
「え?匂い…?」
秦の言葉に柳川は頷く。
そして、真木から有村の匂いがしたり、有村から真木の匂いがしている時があると説明した。
そう言われても、秦にはよくわからなかった。
「そ、それだけで……?」
「うっせー、あとは勘だ。俺にはわかる」
「へ、へぇ……」
軽く呟いてから、秦はまた顔を青くする。
「あっ有村さんの処理したこと、ままま真木さんの前で話したことあるんだけどどどどどどうしよっ!」
あからさまに動揺する秦を、柳川は冷めた目で見つめる。
「べつに、いいんじゃねーの。隠してんのはあっちなんだから」
柳川はそう言って、煙草を地面に落とすと、靴先でぐりぐり踏み付け火を消した。
「なんか気持ち悪いだろ…。優しくしながら、本当は他に付き合ってる男がいるなんてよ」
柳川は乱暴に言いながら、足下に置いてあった缶コーヒーを手にして飲んだ。
そしてもう一度秦の方を見る。
「お前も残念だったな。好きなんだろ、有村さんのこと」
柳川の言葉に、秦は頭を掻いた。
「俺は…、べつに…。結構誰のこともうっかり好きになっちゃうタイプだから、とくに傷付かないです…」
「は?」
「俺すぐ好きになっちゃうから…社員さん以外にも、久遠課長とか間宮さんのこと好きになったこともあるくらいだし…そんなに有村さんに固執はしてないです…。お尻叩かれるのは、なんか癖になっちゃいましたけど…」
柳川は秦の言葉を聞いて、がっかりした。
お互い同じ気持ちなのかと思っていたのに、秦は案外有村と真木のことを深く受け止めなかった。
「信じらんねぇ…、俺は心底気持ちが悪いぜ」
拗ねたような目をした柳川を、秦は真っ直ぐ見つめる。
「柳川さんって、本当に真木さんのこと好きだったんですか?」
「あ?」
「なんで有村さんと隠れて付き合ってる真木さんが気持ち悪いんですか?真木しゃ…、真木さんだって人間なんだから好きな人がいぐ、いるに決まってるでしょう。真木さんのこと、人として好きなら、め…真木さんの幸せを喜ぶべきですよ。それなのに気持ち悪いぎゃ、だ、なん、て、柳川さんって真木さんのこと、性欲処理してくれる人って認識しか、してないんじゃないでし、…ですか?だったら処理課の業務に何も言わないで、付き合い続けていられる有村さんに、が、…か、敵うわけないですよね」
ところどころ噛みまくりながらも、秦に口を挟む隙なく言葉をぶつけられて、柳川は露骨に不機嫌になる。
空気が読めない発言をしてしまうのも、秦のドジレパートリーのひとつだった。
「うるっせぇよ、クソオナホ…。俺をこんな風にしたのは、真木さんなんだからな」
柳川はそう言ってまた煙草に火を着けた。
秦は完全にやさぐれた柳川をじっと見つめる。
口は悪いがやはりどこか寂しそうにしている。
それに気付いた秦は、少し迷いつつもゆっくり口を開いた。
「じゃあ、俺が、慰めてあげましょうか」
秦の突然の言葉に、柳川は顔を上げる。
「は?」
秦は柳川に背を向けると、非常階段の扉に手をついた。
「真木さんと同じようにってわけにはいかないですけど…」
そう言って秦はワイシャツの裾を捲り上げた。
張りのあるぷりんとした尻を突き出して柳川の方を向く。
柳川は口の端を上げて笑った。
「ろくにしゃぶりも出来ねぇくせに、調子乗ってんじゃねぇぞ…」
柳川はそう言いながら腰を上げると、尻を突き出す秦に近寄った。
そして柔らかい尻をパァンッと叩く。
「ひぁっ!?」
秦は驚いて声を上げた。
後ろに立つ柳川は驚いた表情を見せる秦に意地悪な顔を向ける。
「使ってやるよ。お前らが社員の性欲処理をするオナホだってことを、思い出させてやる」
秦は柳川を自分から誘ったことを、少し後悔した。



「あっあぁっ!あっあんっ柳川さっあぁんっ」
秦は後ろから柳川に激しく腰を打ち付けられていた。
真木も褒めるように、柳川のペニスは大きい。
それが無遠慮に出し入れされて、秦はその圧迫感に脚をガクガクと震えさせた。
「あぁっあぁんっだめっだめぇっあぁんっおちんちんおっきいからぁっあぁんっ激しくしないでぇっあぁんっおかしくなっちゃうよぉっ」
秦の言葉を聞いて、柳川は腰を振りながら秦の尻を叩く。
「やぁあんっ」
「えらっそうな口聞いてたくせに、音上げてんじゃねぇよ…っ」
そう言いながらまた尻を叩く。
秦のアナルは尻を強く叩く度に、柳川のペニスをきゅうぅっと締めつけた。
それに気付いた柳川は口の端を上げる。
「お前さぁ、叩かれんの好きなんだろ。こんなマゾケツで、よく俺を慰めるとか言ったよなぁ」
「あっあぁっやらっお願っそんなに叩いちゃだめぇっああっあぁんっ」
突かれる度に揺れている秦のペニスは我慢汁を垂れ流して限界を迎えていた。
柳川の大きなペニスで中をごりごりされるだけで果てそうなのに、有村よりも強く尻を叩いてくるのだ。
秦は一度自分で抜いたはずなのに、柳川よりも先に射精を迎えそうだった。
「あぁんっ柳川さんっあんっらめっらめっそんなにひどくしないれっあぁんっイッちゃうからぁあっ!」
「だらしねぇ、お前本当ダメなオナホだな」
柳川にそう言われながらも、もうすでに精液はぐんぐんせり上がって来ていた。
「あっあぁっらめぇっ出ちゃうぅっあぁっあぁあんっ」
秦はひくひくしながら、びゅるっと精液を放った。床に全てぽたぽたと落ちていく。
「はっあっ…あぁっ…あぁぁ〜…っ!」
イッたばかりなど関係なく、柳川は秦の体を乱暴に扱う。
「待っれ…あぁぁっ柳川さん待ってぇっ、今ぐちゅぐちゅしないでぇ…!」
「なんでお前中心でしなきゃいけねぇんだよ、俺の処理してんだろ…っ!」
「あっあっらって、立ってられないよぉ…っ」
秦はそう言って崩れ落ちるようにしゃがみこんでしまった。
柳川はペニスが抜けたことに苛つきながら、秦の体を仰向けにひっくり返した。
そして両脚を持ち上げて、秦のアナルに再度挿入する。
「はっあっあっ柳川さ…っあぁんっ」
「…」
柳川は自分のペニスで感じている秦の表情を見てドキッとした。
真木に処理をしてもらっていた時のことは、今となってはあの反応が本心だったのか柳川にはわからないが、今目の前の秦は決して演技ではないことがわかる。
そんな器用なことが出来る人間であれば、たくさんのドジは踏まないだろう。
秦のとろんとした表情は、紛れもなく自分が原因だと思うと、柳川はスカスカになっていた胸が少し満たされた気がした。
「あぁっあんっ柳川さんっあぁんっおちんちんっすごいよぉ…っあぁんっ」
秦は感じるあまり目元を濡らした。
潤んだ瞳で見つめられて柳川はとことん苛めてやるつもりだったのに、少し調子が狂った。
悪ぶってはいるが、真木の手によって改心出来る人間であるのだから、柳川は元々は根が良い男である。
可愛らしい顔を困らせた秦に熱く見つめられると、さっきのように酷く出来なくなってきていた。
「ちっ…」
柳川は舌打ちした。
真木のことしか今まで見ていなかったが、やはり処理課員はそれぞれ、周りの社員を夢中にさせる魅力を持っているのだ。
「あぁんっ柳川さんっ柳川さぁん…っあっやぁんっ」
柳川は秦に覆い被さると、思わず涙を舐め取ってしまった。
驚いた秦が間近で柳川を見つめる。
「柳川さ、」
「うるせぇバカ」
柳川はいきなり罵倒すると、そのまま秦の耳を舐めた。
「ひゃっあっ」
秦はさらに驚いて身を揺らした。
柳川の舌が秦の耳の穴をくちゅくちゅと苛めていく。
「あっあぁっ…!」
さらに柳川は、激しく突き上げるのをやめて、挿入した状態でくねくねと腰を回し、秦のアナルの中をゆっくりといやらしく掻き交ぜるように刺激した。
「あっあっあっあっ柳川さっあぁんっこねこねだめぇ…っあんっあぁんっ気持ちいいっあぁんっ柳川さんのおちんちんっ、気持ちいいよぉ…っ!」
「っ」
秦は可愛い声で喘ぎながら、柳川の背に腕を回した。
柳川は驚いて秦の顔を見る。
秦はとろけた表情で柳川を見つめると、そのままキスをした。
しかし有村にした時のように、歯がカチンと当たる。
柳川は秦のキスの下手さに内心驚いた。
「下手くそ」
「だ、だって…っ」
柳川は言い訳しようとする秦の口を唇で塞いだ。
そして舌をねじ込み口内を刺激する。
いつか真木にされたキスの仕方を、柳川は覚えていた。
「ふっ、ぅ…、あっんっんん…っ」
背中に回された腕の力が強くなる。
秦は全身で自分を受け入れている、そう思うと柳川はひそかに感じていた虚無感から解放された。
「はっ、出そう…っ、」
柳川は腰を振った。
何も言わずに中出しするつもりだったのに、思わず秦に窺うように射精感を伝える。
「あっあっ…出して…っ中に、いっぱい出してください…っ」
秦がそう言ってキスをしたそうな顔をするので、柳川はキスをしながら中に射精した。
真木と有村の交際に気付いてから一回も抜いていなかった柳川の精液は、たっぷりと秦の中に注がれた。
「あっ…はぁ…っすごい…お腹いっぱい…っ」
柳川はそっとペニスを抜いた。
大量に出た精液が、秦のアナルから垂れ流れる。
最初は中出しするだけして、そのまま使い捨てのようにその場を立ち去ってやる気だった柳川は、秦の健気な姿を見てどうしたら良いのか迷ってしまった。
立ち去ることも出来ずそのまま秦の向かいにいると、秦はふと思い出したかのように口を開いた。
「…今…、何時ですか…?」
唐突に聞かれて、柳川は素直に腕時計を見る。
「…十一時半すぎ」
柳川が時間を教えると、秦はまたもや、さっと顔を青くする。
「指名された時間過ぎてる……!」
「え?」
「すっかり忘れてた……!や、やばい…っ!」
秦はよろよろと立ち上がる。
その拍子にアナルからまた精液が垂れ流れるが、そんなことには構っていられなかった。
「ご、ごめんなさい柳川さん…!お、俺処理頼まれてたんで…!い、行ってきますね…っ!!」
秦は柳川にそう言うと、返事を聞く前に扉を開けて急いでその場を立ち去っていった。
柳川は、嵐のように去っていく秦に言葉をかける暇なくただただ見送った。

「……変な奴…」
そう呟いた柳川の口元は、少し笑っていた。

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