日暮


「あっあぁんっ!部長っあはぁっあぁんっちんこいいっあっあぁんっ!」
「はははっすごい締めつけだ…、食い千切られそうだよ」
部長の名波はそう言いながら腰を振り、日暮のアナルを掘る。
「あぁんっあんっだってっ部長のおっきいちんこでっあぁんっぐちゅぐちゅされるの大好きだからぁっ…あぁっあぁっ!」
「まったく、ド淫乱だな君は!ほら!種付けしてやる!喜びなさい!」
名波は日暮の尻肉をパチンパチンと叩きながら中で射精した。
「あっあぁんっ嬉しいっ部長のザーメンっ奥まで届いてる…っあっあっあっ熱いのいっぱいぃ…っ」
日暮が喘ぎながら痙攣する。
名波は精液をたっぷり出し切ると、息を吐いてずりゅっとペニスを抜いた。
日暮は額に汗を滲ませる名波を上目遣いで見つめる。
「んひっ、いっ、部長ぉ…っ俺…っ気持ち良すぎて、ドライでイッちゃいました…っ」
「……すごいな、日暮くん」
名波は口の端を上げた。
そして色気を醸し出している日暮の唇に貪るように吸いついた。


「俺、雪村さんから名波部長を奪うことができました。べつに名波部長のことなんてどうでもいいんですけどね。雪村さんだって、やっとあのねちっこい処理から解放されて嬉しいかもしれませんし。でもなんにせよ、雪村さんを気に入っていた人の心を変えられたなんて、凄くないですか?」
仮眠室の窓から外を眺めていた日暮は、後ろのベッドに腰掛ける常磐の方を向いた。
「常磐さんのことも、課長から奪えたら良いのに」
自分に向けられる視線に気付いた常磐も、日暮の方へ顔を向けた。
「べつに、俺はあいつのものなんかじゃない」
日暮は黙って常磐がいるベッドへそっと身を乗せた。向かいに座って常磐を見つめる。
「だったら二人きりの時くらい、俺のこと見てください」
常磐は日暮を見つめ返す。
「寂しい者同士、慰め合いましょ」

二人は時々処理行為に及んでいた。
久遠に振り向いてもらえない常磐の孤独に日暮が上手く入り込んだのだ。
常磐に想いを寄せる日暮の孤独は、常磐に触れてもらえる時間で埋めることが出来る。
お互いにとって、一瞬だけ嫌なことが忘れられる時間になっていた。

「んっ…あっあっ…常磐さん…っ」
日暮は常磐の上に乗って腰を動かす。
常磐はいつも処理をされて思い知らされる。
いつもちょっかいをかけてからかっていた日暮も、やはり日々性の捌け口として経験を積み生きてきた処理課の人間だということを。
「あん…っ、あっあっ…あぁんっ」
まだ高校生だと言っても違和感の無い、若い見た目の日暮のいやらしい腰つきは、何度見てもまだ慣れないでいた。
「あっ、あっ…常磐さん…っ」
日暮は身を倒して常磐に口付けた。
常磐はそれに答えながら、下からゆっくり日暮の中を掻き回す。
「ふっ、ん、あっはぁ…っ」
常磐は動きにくさに焦れて、横側から身を起こし日暮と位置を逆転した。
「あっやだ…抜いちゃ…っ」
動いた拍子にペニスが抜けると、日暮は強請るようにまた常磐にキスをする。
常磐は自分でペニスを掴むと、日暮のぱっくりと開いたアナルに当てゆっくりと挿入した。
「あぁ…っ!」
やはり常磐が腰を振り、中を掻き回される方が、自分で動くよりずっと良かった。
日暮は枕を握り、快感に耐える。
「あっあっあんっ常磐さんっ気持ちいい…っあぁっあんっあぁんっ」
日暮にとって常磐との処理行為は、今までの誰よりも気持ちが良かった。
想いを寄せる相手と体を交わしていることの幸せが快感に上乗せされるのだ。
日暮は常磐も、自分と同じだけの快感を感じていたらいいのにと常々思っていた。
「常磐さん…っあぁんっあっあっ常磐さぁん…っんっんぁっあっ!気持ちいいですか…っ?あっあっ俺…っちゃんと、常磐さんのこと…っ気持ちよく出来てますか…っ?」
涙目の日暮に見つめられて、常磐は胸の奥を締めつけた。
「あっあん…っお願い…っ中に出してぇ…っ」
日暮の涙はとうとう溢れて横に流れた。
常磐は腰を振り続けるが、射精感はやって来なかった。
誤魔化すように、日暮が感じる場所を狙ってごりごりと何回も突く。
「あっあぁっ!やっやだっそこだめっあっあっ!イッちゃうっイッちゃうからやだぁっ!あぁあっ!」
そのうち日暮が耐えられなくなって、中から精液がせり上がる感覚に悶えだす。
常磐は額に汗を滲ませながら、構わず日暮の感じる場所を弄る。
「んひっいっあっやぁんっそこやらぁっあっおっあぁっ!イクっイッちゃうっ常磐さんっ常磐さんっ…!やあぁんっもう…っ、らめぇえっ!あぁぁ〜〜っ…!」
日暮は体を反らしながら射精した。
汗ばんだ肌に、びゅるびゅると飛ばしていく。
「あっ…あぁ…っはぁ…っ」
痙攣している日暮から、常磐はゆっくり自分のペニスを抜いた。
そして勃ち上がったままのペニスを、自分の手で上下に擦る。
それからようやく射精感が来ると、大きく脚を開けたままの日暮のアナルへ向け精液をかけた。
「っ…はっ…あ…っ」
「…ごめん…、日暮…俺……」
日暮はアナルにかけられた常磐の精液に手を伸ばした。
「うっ……ふ……っ」
精液が付着した指を、日暮はそっとアナルへ挿入した。
日暮が自分でアナルを弄る光景を、常磐はぼんやりと眺める。
「……、処理課としても役立たないなんて……、俺…、常磐さんの何にも、なれないんですね……」
「………………」
もうこの行為は何度もしていたが、常磐は日暮の中ではイけないでいた。
勃ち上がりはするのに、それから変化は無く、いつも日暮が先に果て、常磐は自分の手で射精する。
それは性欲処理課としてでも常磐にとっては不要な存在であることを意味していた。
とはいえ常磐自身、なぜ自分は日暮との行為でイけないのか、わかっていない。
自分に素直な想いをぶつけてくる者を泣かせていることに関しては、いつも胸が締まる想いだった。
「ごめん…、ごめんな、日暮…」
常磐は日暮の涙を優しく舐め取った。



「簡単だろ、そんなの。久遠のことなんか諦めて、日暮のこと好きになりゃーいいんだよ」
休憩室で常磐から日暮のことを聞いた上地は面倒くさそうにそう言った。
「……そんな簡単に言うなよ……」
常磐は珈琲を飲みながら頭を抱えた。
「それか日暮とそういうことするのはやめるしかねぇよな。なんでそうなるって分かってるのにいちいち処理するかね?」
「だって日暮がかわいそうだろ」
天井を眺めていた上地は、常磐の言葉を聞いて目を向けた。
「お前日暮のこと馬鹿にしてんの?」
「え?」
返ってきた言葉に驚いて、常磐も上地の方を向いた。
「かわいそうって思う方がかわいそうな時ってあるだろ。お前さ、日暮が処理の相手に選ばれるだけで本当に満足してると思ってんのか?お前に好きになってもらいたいに決まってるだろ。そんなのなら、かわいそうとかいう理由で処理してるお前より、日暮を気に入って処理してる名波部長とかの方がずっとマシだよ」
上地の言葉に常磐は眉間に皺を寄せた。
「お前日暮の気持ち利用して、自分を保ってるだけだろ。久遠に振り向いてもらえねぇ寂しさを、自分のこと好きでいてくれる日暮で紛らわしてるだけじゃん」
「…………お前、そんなに喋る奴だったか」
常磐の言葉に上地は返事をしなかった。
代わりに軽く手を上げて、その場を去った。
「……………」
常磐が上地にきちんと反論できなかったのは、上地の言っていることが確かに正論であったからだった。
かと言って第三者の正論というのは、当人の感情が考慮されていない。
現実から逃げる居場所を、自分が居心地の良い者に求めて何が悪いのか。
常磐は自分の弱さを充分理解しながらも、日暮から離れることが出来なかった。


「ついにガバガバになったか?」
処理課で常磐との話をした日暮に綾瀬はそう言い放った。瞬間雪村が思い切り頭を叩く。
「いてぇ…!」
「バカ綾瀬。そういう話じゃないだろ」
雪村はそう言って日暮を見た。
「…処理課はオナホだとか言われてるけど…、俺、オナホ以下の存在なんですよ……」
日暮の落ち込んだ顔を見て、雪村はどうしたものかと小さくため息を吐いた。
「まぁ…、相手してくれるんなら、常磐さんも日暮のこと、気にしてるんじゃないの」
「…それでも課長には敵わないです…」
日暮の言葉に雪村と綾瀬は顔を見合わせた。
事実は時に慰めすら許さないことを二人は知る。
そんな気まずい空気の中、処理課の電話が鳴った。
電話に向かう雪村を目で見送ってから、綾瀬は日暮を見る。
「課長が社長に固執してる間に奪うしか手はねーよな。お前、ずっと雪村指名だった名波を取ったらしいじゃん。出来るって」
雪村に聞こえないように綾瀬は言った。
日暮は綾瀬を見るだけで、返事をしなかった。



翌日常磐が社内の廊下を歩いていると、笑い声と喘ぎ声が聞こえてきた。
「おらおらおらっ!ちゃんと喉使えよ!」
「ほらぁ!こっちもちゃんと締めろよ日暮ィ!」
常磐が進んでいくと、廊下の先で日暮を使って二人の社員が処理をしているのが見えた。
四つん這いにさせた日暮の口とアナルにそれぞれペニスをぶち込んで、乱暴に腰を振っている。
「んんっん゙あっ!んぅうぅ!んおっ」
「ほらっ!ほら出すぞ!ザーメン全部飲み干せよ!」
口に突っ込んでいる社員は日暮の頭をがっちり掴んで、腰を思い切り振る。
涙と鼻水を流す日暮の喉奥に、社員は大量の精液を注ぎ込んだ。
口からペニスが抜かれると、飲みきれなかった精液がとろりと垂れ落ちる。
「んっんんっけほっあっあっ!あぁあっ!待っ、あっあぁっ!」
アナルにハメている社員も、激しく腰を振る。
「すげー締まる!おっおっイクっイク!」
「あっあぁんっやっあぁあんっ!あっ熱ぅ…っ!あぁんっ」
日暮は、アナルの中にもたっぷり中出しされた。
膝を付いていた脚ががくがくと震える。
そしてアナルからペニスを抜かれると、床に崩れるように倒れた。
「良かったぜー日暮!また頼むわぁ!」
処理をするだけした社員たちは、笑いながら日暮を置いて帰ってしまった。
「……ぉぇっ…、けほ、っ、」
日暮は喉に絡み付く精液を煩わしく思いながら、ゆっくりと起き上がる。
常磐はそんな日暮から目を離さず歩み寄った。
近付いてくる常磐に気付いた日暮は、気まずそうにして顔をさっと隠す。
「…日暮、大丈夫か?」
常磐の声は優しく、日暮の胸を締めつけた。



「同僚に言われた。俺は日暮のことを自分の寂しさを紛らわすための存在にしてるって」
仮眠室のベッドの上で、常磐は日暮の背中を撫でた。
シャワーを浴び終えた日暮からは石鹸の匂いがしている。
常磐は滑らかな肌にそっと唇を寄せた。
「そうかもなって、思った」
常磐が与える優しい刺激に日暮は小さく反応した。
「それでもいいって、俺は思ってます」
日暮は常磐に背を向けたまま、そう言った。
そんなこと、日暮は最初から解っていたのだ。
常磐は日暮の顔を見ようと目線を向けるが、後ろから表情は窺えなかった。
常磐は自分に背を向けて壁の方を眺める日暮の体にそっと腕を回す。
「……俺の本音を言うとな、」
「…………」
「やっぱり俺は、久遠が好きだ」
「…」
日暮は気付かれないように、シーツをぎゅっと握った。
「あいつは俺のこと、全然見てねぇけどさ」
「……………」
「でもな、だからって、お前のことを無碍にする気もないんだ」
常磐の言葉に、日暮は口を開かなかった。
「俺のことを好きだって言ってくれる子のことは、大切にしたいって思うんだよ。だから、さっきみたいに酷くされてるのを見たらやっぱ腹立つし、頑張ってたら褒めてあげたいって思う」
「……………」
日暮は常磐の腕の中で、体の向きを変えて常磐の方を向く。
やっと見えた日暮の顔は、悲しそうな笑顔だった。
「……勝手な人」
静かな仮眠室に、日暮の言葉はぼんやり浮かんで消えた。

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