演技の練習


芸人でも声優や俳優の仕事もある。
ついに俺にも映画出演のオファーが来た。しかも準主役にあたる、猟奇殺人事件の犯人を追いかける刑事役だ。
人気小説の実写化ということもあって注目を浴びている。主役の色男な殺人鬼の相手役の女優は最近話題の荒木凛子。なかなかの美人だ。共演するのは初めてだから嬉しい。
だけど問題がある。
肝心のその色男な殺人鬼を演じるのが、神谷祐二くんなのである。
祐二くんとは仲が良かったが、いきなり襲われ告白された日以来連絡を取っていない。
そんな気まずい中いきなり映画共演だなんて、どうすればいいのか。
台本を読む限り、祐二くんとの絡みはなかなかたくさんある。
そりゃあ犯人と刑事なんだから関わらないわけがないわな。
「…挨拶くらいしとくか…」
俺は久しぶりに祐二くん宛にメールを送った。
「えぇなぁ、映画。天狗になんなよウサ」
気付いたら吉田が俺の携帯を覗き込んでいた。
「ならねぇよ。てか覗くなよな」
「はいはい」
悩みに悩み抜いたメールの返事は、「よろしくお願いします」の一言だけだった。


その後連日撮影が続き、祐二くんと顔を合わせる機会も多かったが、なんにもなかった。
拍子抜けした。身構えていたが祐二くんはそういう話どころか、雑談さえしてこなかった。
「雰囲気違いますよねぇ、祐二くん」
監督と打ち合わせをしている祐二くんを眺めていると、声をかけられた。見れば後ろに荒木凛子が立っている。
「役に入りきっちゃってるのかしら。殺人はしないものの雰囲気はまるっきり蒼井和真ですもんね」
荒木凛子はそう言いながら祐二くんの役名を口にする。
俺はまた祐二くんに目を向けた。
真剣な顔。二十二歳とは思えない大人びた表情だ。…冷たいのも、役作りのためなんだろうか。

「ウサさん」
撮影帰り、いきなり祐二くんに呼び止められた。
俺はまさか話し掛けられるとは思わなくてどぎまぎした。
「このあと、仕事とか入ってますか?」
「いや、…入ってないけど」
「ちょっと練習したいんですけど…」
真剣な顔をした祐二くんの手には台本が握られていた。
祐二くんはやっぱ俳優だから、演技とかに力が入るよな。
変に意識してしまっていた自分が恥ずかしい。俺はむしろ俳優の祐二くんと練習が出来ることを光栄に思った。
時間も時間だったので、とりあえず祐二くんを俺の家に呼んだ。タクシーで移動している間、祐二くんは演技の話しかしなかった。


「俺なんかで祐二くんの練習になるかわかんねぇけど…」
俺の言葉に祐二くんはそんなことないです、と言って微笑した。
俺んちのソファに座っているだけなのにすごく絵になる。やっぱイケメンってすごい。
「早速お願いしたいんですけど」
「うん、どこのシーン?」
「それが、俺って今回色男役じゃないですか。凛子さんはじめいろんな女優さんとキスするのが多いんですけど」
「…ん?」
俺の勘がざわめきだす。祐二くんは爽やかな笑顔を俺に向けた。
「キスの練習、させてくれませんか?」
「なんでだよ!」
俺はクッションを投げた。きらきらした笑顔で凄いことを抜かしてくる年下の俳優は、爽やかな笑顔のままそれを避ける。
「なんにもしてこないと思ったら、こういう企みがあったのかよ!」
「企みだなんて人聞きの悪い」
祐二くんが距離を縮めてきたので俺はもう一個のクッションを盾にした。
「だって有名な女優さん相手に下手なキスなんて出来ないじゃないですか。かといって練習させてくださいなんて女性に言えないでしょ?」
「そ…、うかもしれないけど、だからってなんで俺なんだよ!」
祐二くんがぐっと近寄ってきた。俺も後ずさるがそんなにでかいソファじゃないからすぐに逃げられなくなる。
「それ聞いちゃいます?」
祐二くんは甘い顔をして、俺の盾を掴んで下に落とした。
「あっ」
「弘樹さんのことが好きだからですよ」
祐二くんはそう言って急に真剣な顔をした。
祐二くんは二十二歳で、俺なんてもう、三十路だっていうのに、おっさんだっていうのに、自分でもわかるほど顔を赤くしてしまった。
「名前で呼ぶな…っ」
「恥ずかしいですか?」
祐二くんはどんどん俺に迫ってきた。そのままキスされる勢いだ。
俺はここで負けるもんかと、さっき祐二くんが落としたクッションを拾って口元を隠した。
「往生際悪いなぁ」
「うっさい!だ、大体、ゆ、祐二くんは練習なんてしなくたって、上手いじゃんか…っ!」
俺の反論に祐二くんはにっこり笑う。
「本当に?気持ち良かったですか?」
あーーーーー墓穴。
なにかを言えば言うほど祐二くんが有利になっていく。
「もー、観念してください。俺だってもっと早く弘樹さんにちょっかいかけたかったんですよ」
祐二くんがかわいい顔して凄い力でクッションを掴んで遠くに放った。
観念してくださいって言うか、観念するしかない距離になってしまっている。
「っ」
俺はぎゅっと目を瞑った。
「…………」
なのに何も起こらない。
おかしいな、いや、おかしくていいんだけど。
俺はまた目を開けた、
「っ」
瞬間にキスされた。
「弘樹さん、可愛い」
「な、ん…っ」
一気に体が熱くなった。
さっきから祐二くんのペースに持ってかれてばっかりだ。
俺、もう三十年も生きてきたおっさんなのに、ずっと年下の男の子にこんなにペースを乱されるなんて。
しかもドラマとか映画みたいに、祐二くんめっちゃかっこいいし。
あーーーーーー、だめだ。
いっつも誰かに襲われてる俺はダメ人間。男失格。
祐二くん相手だと、なんか、変にドキドキしてしまうし。
クソ、クソ人間だ、俺は。
「ん、…ふ、……んっ……、んぅ」
祐二くんはキスを始めてから、なかなかやめようとしない。
こんなにキスシーンないだろってくらい、ずっとチュッチュッし続けている。
本当、練習なんかしなくたって祐二くんはすごく上手い。静かに甘く噛みついてくるようなキスが続く。頭がぼーってしてくるし、溶けそうだ。
祐二くんの唇、やわらかい。
「…あ、」
いきなり祐二くんが届かない距離まで離れた。俺は空気にキスをしてしまう。そんな間抜けな姿を祐二くんに見られた。
あんだけ嫌がってたくせに足りなくなってる自分が恥ずかしい。
祐二くんはそんな俺にちゅっと軽くキスをした。
なんだこの王子様みたいな男の子は。
と思っていたら王子様は俺のちんこをパンツ越しに触った。
「ちょっ!なに触って…っ!」
「かたくなってる」
祐二くんの言う通り、なぜか俺は勃起していた。ぶっちゃけパンパンで苦しい。
「感じちゃいました?」
「うっさいなぁ…っ」
睨んでるのに祐二くんはにこにこしている。
「き、キスの練習だろ…。女優にも同じことする気かよ」
「安心してください、ラブシーンもあるんで」
にこっと笑って祐二くんは光の速さで俺のパンツを下着ごと脱がした。
「安心できるかぁっ!んあっ!」
祐二くんが俺のちんこを握った。
「こんなに濡れてますよ、弘樹さん」
祐二くんが笑顔のまま俺の前で手を大きく広げる。祐二くんの長い指先にヌラッと透明な糸が引いている。最悪。
「見せなくていい…っ!」
「ねぇ弘樹さん、もっと気持ちよくなりましょ」
祐二くんはそう言って自分のちんこも取り出した。祐二くんのちんこも大きくなってていやらしい。
何をするのかと思いきや、祐二くんはちんこ同士を擦り合わせ始めた。
「あっ!あぁ…っ!やめっあぁっ」
俺のちんこの上をずりゅっずりゅって祐二くんのちんこが滑っていく。
確か俺は前もこれをされて、挿入する許可を出してしまったのだ。
今日もいつものごとく流されまくってしまっているが、ここからこそ粘り時だ。
今日こそは前戯で終わらせてやる。
「やんっ、やめっ祐二くん、やだっ俺っもぉ嫌ぁっ」
「弘樹さん、」
嫌がりまくったら、祐二くんは優しいからやめてくれるだろうな、と思って俺はあからさまに嫌がった。
祐二くんが色っぽい顔をして俺を見下ろす。
「そんなこと言って、腰、自分から動かしてますよ…?」
「んぁ…っ、うそ、違…っあんっやんっ祐二くんが擦り付けて…っ」
ぐちゅっくちゅっずりゅっずりゅっ
「俺は今動いてませんよ」
祐二くんに言われて俺は下半身に目を向けた。いやらしい音が鳴っているのに、ちんこは確かに擦れ合っているのに、祐二くんはまったく動いていない。
かくかく腰を浮かせて動かして、ちんこを押し付けているのは、祐二くんの言う通り、俺の方だった。
「やっやだ、違う…っこれは、違うからぁ…っあぁんっあんっ」
くちゅっぬちゅっぬっぬっずりゅぅっ
「いやらしい、弘樹さん」
祐二くんにそう言われて、俺はめちゃくちゃ恥ずかしくなった。熱かった体がさらに熱くなる。
嫌って言いながら腰振ってるとか、俺、最悪だ。
最悪なのに、なぜだか快感が体中を駆け巡っている。
「あっあぅっ祐二くっあんっやんっイッちゃいそ…っもぉイッちゃ…っ祐二くんっ」
言葉通り、俺は本当にイきそうだった。あと三回くらいぐちゅぐちゅしたら、きっとイけた。
なのに祐二くんはまたいきなり俺から離れた。おかげでイけなくなる俺。
「はっ、は…っ、な、んで…っ、い、意地悪…っ!」
散々俺を弄んどいてこれだ。俺は祐二くんに訴えた。
祐二くんは笑顔を向ける。
「思い出したんですよ。たしかラブシーン、騎乗位だったなぁって」
「…え…?」
祐二くんはソファにごろんと仰向けで寝転がった。
「練習したいんですけど、いいですか…?」
祐二くんの頼みごとはもはや建前にしか過ぎなかった。
だけど天を向いてる祐二くんのちんこはやらしくって、目が離せなかった。
「バカ…っ、バカ…!祐二くんのバカ…っ」
俺は祐二くんを非難した。だけど状況的にこのアホな俺が耐えられるはずもなく、祐二くんの体に跨がってしまった。前戯で終わらすとか思ってた俺はどこに…。
「はぁ、はぁっ…」
穴に祐二くんのちんこを当てがい、腰をゆっくりと下ろしていく。
「ぁ……、ぁぅ……っ」
「弘樹さん、あとちょっとです」
ずぷ、にゅぷぬぷぷ…っ
「あぁ…っ!」
祐二くんのちんこは完全に俺の中へと入っていった。
俺のちんこは出したくて震えている。
「祐二くん…っ」
俺は祐二くんを見て訴えるが、祐二くんは動こうとしない。
「自分で腰振ってください、じゃないと、いつまで経ってもイけないですよ」
「そん、な…っ」
祐二くんは本当にそのつもりらしく俺が動くのを笑顔で待っている。
俺は戸惑いながらも腰を上げて少し抜き、また下ろして入れるのを繰り返した。
だけど体中力が入らなくて、早く動くことが出来ない。こんなゆるい動きでは、ますますイけそうになかった。
「あ、っ、祐二くん…っ、も、無理ぃ…っ」
上で跳ねてる俺を楽しそうに見ている悪趣味な祐二くんに訴える。
「どうして?すっごくエッチですよ、弘樹さん」
「そ、じゃなくて…っ!これじゃ、あんっイけない…っ祐二くんっが、動いて…っ下から…、突いて…っ!」
「えーー?」
祐二くんはいたずらっ子のように笑う。
「もうちょっと頑張って下さい」
「む、り…、あぁんっ!」
祐二くんは頑張ってる俺の両乳首をいきなり弄った。
「わぁ、すっごく締まった」
「あんっもっ邪魔すんなぁ…っ!あっあんっ指擦れてる…っあんんっ」
祐二くんの指が俺の乳首に当てられてるだけなのに、俺が腰を上下する度に乳首に擦れていく。
「もうやだ…っあんっ、あんんっ」
「じゃああと十回抜き差ししてくれたら、俺が動きます」
「なん、だよそれぇ…っ」
「ほら、いーち、」
祐二くんが勝手に数え出すから、俺は合わせて腰を振ることになってしまった。
ずずっぱちゅんっ
「にーー」
「はぁ…っ」
ぬぷっぱちゅっ
「さーーん」
「んんっ」
ずりゅっぬちゅっ
「しーー」
祐二くんがカウントしていくうちに、なぜか俺の息が乱れていく。
焦らされている感覚がすごくて、ちんこからはだらだら我慢汁を垂らして、尻の穴はきゅんきゅんしていた。
期待しちゃっているのだろうか、十まであと少し、それが終わったら下から思いきり激しくぐちゅぐちゅにしてもらって射精できるなんて、心のどこかで思っているから、こんなに興奮してしまっているのだろうか。
嫌な俺。最悪な俺。
だけど言うことを聞いてカウントに合わせて腰を振り続けている。
「ほら、あとちょっとですよ弘樹さん。九、」
ぱちゅっ
「あんっ」
「じゅー…」
ぬぷぷ…っ
「う!」
ぱちゅんっ!!
「あぁぁんっ!!」
最後の最後で祐二くんが掛け声とともに下から思いきり突き上げた。
俺のちんこがぷるんっと揺れる。
そしてそのまま休む暇なく祐二くんは思いきり下から突き上げる。
「あっあっあんっあんっやぁっあぁんっ」
ぱんぱんぱんぱちゅっぱちゅっぱんぱんぱんっぐりゅぐりゅっぐちゅぐちゅぐちゅっぱんぱんぱんっぱちゅっぱちゅんっ
「やっあっあっあっあっゆ、じっくっあんっ激し…っああんっあんあんっ」
俺は耐えれず祐二くんの方へ体を倒した。祐二くんの大きな手が俺の尻に回る。そしてもう片方の手が俺の乳首をつねった。
「あひぃっ!」
下から思いきり突き上げているのに乳首も痛いくらいにつねられて、俺は悶える。
「あんっあぁんっ乳首らめ…っあんっそん、引っ張ったら、あぁんっ取れちゃ…っあぁんっ」
「弘樹さん、」
ぱちゅっぱちゅぱちゅぱんぱんぱんっぬぽぬぽじゅぽっぐりゅぐりゅっぱんぱんぱんっ
「弘樹さんは、はぁ…っこんなに気持ち良さそうなのに…、ん、俺のこと好きじゃないんですか…?」
祐二くんが俺の両手を掴んで、恋人繋ぎをした。
「あっあんっだっ、て…っ!俺たち…っあんっ男同士なのに…っ!あんあぁんっ」
「じゃあ…弘樹さんは好きでもない男とエッチして感じちゃう淫乱ってことですか?」
ぐちゅぐりゅっ、ぐりゅっぐりゅっ
「ちがっ、あんっ違うぅ…っ淫乱じゃないっあぁんっあぁんっ」
「弘樹さん、どっちなんですか…?」
「うぅ…っ」
祐二くんの質問は俺の心の何かをえぐった。どうしたらいいかわからなくて涙が出てきた。
「ず、るい…っあんっ、そんなの、あぁんっずるい…っあぁんっ」
「…そうですね、ごめんなさい」
祐二くんはそう言って手を離して俺の腰を掴み、また激しく下から突き上げった。
「あっ!あっあんあんっあんっあぁんっあんっ祐二くんっあんっ」
「イッていいですよ、弘樹さん。僕も、もうイきそう…っ」
ぱんぱんぱんっぱちゅっぱちゅんっぱちゅっぱちゅっぱちゅっぱちゅっぱちゅんっ
「あんっあぁぁんっイっちゃっイっちゃうあぁんっ祐二くんっ祐二くんっあぁんっイくぅっ!」
「弘樹さん…っ」
俺たちはお互い体をびくびくさせながら射精した。俺の精液は祐二くんのきれいな体に飛んで、祐二くんのは俺の中へと注がれた。
「ん、…はぁ…っ、はぁ……」
祐二くんのちんこがずりゅっと抜ける。膝立ちで立っている俺を、祐二くんは体を起こして抱き締めた。
「…あー……また襲っちゃった……」
俺の肩に顔を埋めて後悔の波に襲われているが、正直俺の方がやばい。自己嫌悪が。
「弘樹さん…。俺、本当に好きなんですよ、弘樹さんのこと。」
「…何回も言わなくていいって……」
祐二くんは顔を上げて俺を見つめる。
こんなことされたって何故か許してしまうような、かわいい顔をする。
こいつは卑怯だ。
「なんだよ…」
目をそらそうとすると、またいきなりキスをされた。
もーやだ、この子。
「映画、楽しみですね」
そう言えば演技の練習っていう体だったっけ。
すっかり忘れてたけど、そうだ、明日からもずっと撮影で、祐二くんと過ごす時間はまだまだ長いんだ。
「…明日も演技の練習してくれます?

ふざけたことを言うので、俺は祐二くんの頭をはたいた。
「…いいかげんにしろ」


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