2

※鬼子番外


「そう…」


そう言った鬼は、とても嬉しそうだった

その微笑みが、とてもきれいだった



「ねえ…あなたはこの近くに住んでいるのですか?」



ふと、鬼が問うてきた



「はい、この近くの村に住んでます。あなたは?この近くの住人なのですか?」


「いいえ。…でも、この近くは昔住んでいたところに…似てる気がするの」


「…ふうん」


「あ。そういえば、まだ名前を聞いていませんね。よろしければ教えてくださいませんか?」


思い出したように言う彼女

また、優しく笑う



「丁、です」



本当は知らない人に名前を教えてはいけないけれど…彼女になら良いかな、と何故か思った
(まあ、丁は名前ではないので別に教えたって構いませんが)


「…!そう…」






その言葉を口にすると、一瞬…本当に一瞬彼女の顔が歪んだ気がした

きっと彼女も“丁”の意味が分かるのだろう


ああ、嫌われただろうか
そう思うと、今まで悲しくも何ともなかった心が痛んだ気がして…
俯いて数歩後退する


すると、不意に温もりに包まれた


「え…?」



彼女に…鬼に抱き締められていた

彼女は何も言わなかったけれど
でも、自分を撫でる手付きはとても優しかった

今まで、自分を撫でてくれる者などいなかったから分からない


けれど何となく…何となく………
…母親がいたら、こんな感じなのだろうかと思った



「…あなたは」



「え…?」



「あなたは何という名前なのですか?」




「私の名前は_____」





彼女の名前は何だったか



容姿と同じように、とてもきれいな名前だったはずなのだが、今はもう覚えていなかった
 →
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -