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かつん___


「おや?」


いつもの様に大王と戯れていると、首元から飾りが落ちる


「外れてしまいましたか」


外れたのは紐を通した翡翠の勾玉

どうやらの紐の部分が千切れてしまったらしく、直そうにも直せそうにない

拾い上げ、新しいものを用意しなくてはと考える



「鬼灯様、それなあに?」



首飾りについて考えていると、足下にいたシロさんが問うてくる
鬼灯様もそういうの付けるんだね、という言葉と共に


「ワシも、君と付き合い長いけどそんな色の勾玉付けてるとこ初めて見るよ」

大王も言う


「昔、人から貰ったものです」


「そうなんだ。ていうか人から貰ったもの身に付けるんだね。君そういうのしないのだと思ってた」


失敬な

私だってそういうことしますよ


「…でも何でそう隠すように付けてるの?」


「別に見せびらかすような物ではありませんから」


「見せられない人から貰ったもの…。…はっ!?もしかして未練のある元カノから貰った「違います」

シロさんの言葉に即答する
勘違いをされては困る


「…ですが、大事な物ではありますね」


勾玉を指で撫でながら思い出す

これをくれたあの女性を



そう、その記憶は__それはまだ自分が人間だった頃にまで遡る










「丁、今日の仕事は終わりだ。休んで良いぞ」


「わかりました」



あの頃、自分はまだ丁と呼ばれており生きるために必死に働いていた


その日も村の人達にこき使われて

けれど仕事が早く終わったとかで、その日は暇を貰ったのだ


しかし、みなしごである、という理由で自分は村の人達…子供にまで嫌われている


遊んでくれる人なんて、あの村には誰もいなかった


だから私は村のはずれにある、花のたくさん咲いていると言われている場所まで足を運んでみたんだ



「わあ…」


目の前に広がるのは色とりどりの花達


初めて見る、美しい風景に思わず声が漏れた

きょろきょろと周りを見渡していると、人が、1人佇んでいた


よく見ると女性らしい。見たことのない着物を着ていた



「…だれ、ですか」


この人は、知らない人だ

この近くに他の村は無いはず


少し怪しく思い、声を掛けた

すると彼女は肩を少し揺らしてから、此方に向いた


「…おや、見つかってしまいましたか」


振り向いた彼女は美しかった

だが、それ以上に目を引くものが、彼女の額にあったのだ


「お、に?!」


小さいが確かにある角

それに思わず、驚いてしまった

そんな自分を見て彼女は小さく笑って言った


「はい、鬼です」


しかしその声は、話で聞いたことのあるような恐ろしいものでは無かった


ただの、優しい…暖かい声


「私が怖いですか?」


「いえ」


女性の問いに、間髪容れずに答える

自分でも、驚くぐらい早く

だって


「怖く、ないです」


このきれいな鬼を、怖いとは思えなかったから




(うつくしいおにと)
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