おとうさんとクリスマス(2014)

「はーあ…」


金魚の上に乗っかって溜め息を吐く



今日はクリスマス
でも嬉しくない


だっておとうさん、今日も忙しいんだもの
今日だけじゃない。これから年末にかけては地獄の大掃除
お正月には亡者が増えて大変で、忙しくて帰ってこない日だってある

この間は、わたしに出来ることは少ないから邪魔にならないようにずっとお部屋の中にいるか金魚達のところにいる

クリスマスは、ひとりぼっちと言っても過言ではないのだ



そんなわたしには夢がある

数年前、現世のクリスマスの様子を映したテレビを見たのだ
親子連れが手を繋いで街を歩き、ケーキを買って満面の笑みを浮かべていたのを
わたしはそれを羨望の眼差しで見ていたことだろう


でも、それは本当に羨ましかった


わたしも、おとうさんとクリスマスに過ごしたい。一緒にケーキ食べたり、現世に出掛けたり…


小さな夢であるが叶わない夢でもある。全ては12月がとても忙しい時期にあるために

きっと今も三途の川や賽の河原でごみ拾いか釜でお掃除をしていることでしょう


…おとうさんは忙しいからな、我が儘は言えない

今年もまた、この思いを口にすること無く終わるのだ


「………お部屋…帰ろ…」



金魚から降りて部屋に戻る
今日もきっと、おとうさんは帰ってこない
















「ん…」

人の気配を感じたので、もぞりと布団から顔を出してみる


「おや、起こしてしまいましたか」

「おとうさん…?」

おとうさんが帰ってきたようだ。あれ、何で?お仕事は?

でも、取り敢えず


「おかえりなさい…」

「はい。ただいま」


くしゃりと大きな、大好きな手で頭を撫でられる。ああ、やっぱりおとうさんだ。夢じゃないんだ

起き上がろうとするとおとうさんに止められ、上から布団をかけられる



「もう夜も遅いから、寝なさい。明日は一日一緒にいられるのだから」



明日…一緒?本当?
本当だったら楽しみだなぁ…



「明日はクリスマスでは無くなりますが、一緒にケーキを食べたりしましょうか」


「…うん」



おとうさんの言葉に嬉しくなる。明日、明日はずっと一緒
クリスマスではないけど夢が叶うんだ



「おやすみなさい」

「ん…おやすみなさい、おとうさん」




今年もつまらないクリスマスだと思った。でも今年はとっても素敵なプレゼント…おとうさんと過ごせる時間が貰えるんだ

明日が楽しみだな





地獄に来て、おとうさんと家族になって数百年目のクリスマス



小さな夢がようやく叶いました














(鬼灯君、鬼灯君。君、明日は休みなよ。たまには娘と過ごしたほうがいいよ)

(休みたいのは山々です。しかしどこかの大王が仕事をしないせいで…)

(わー、鬼灯君分かったよ…!仕事はちゃんとするから…!)
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