「はい、タイシの分」



「お、ココアじゃん。さんきゅ」



青いマグカップに入ったココアを啜る幼なじみの彼


今日は学校が入試のため、休みである


私はそれを利用してゆっくり過ごそうと考えていたのだが、暇を持て余したタイシはなぜか家に来たのだ



なら、どこか行けばいいのに



…なんて、思ってるけど言わない



言ったところで、だったら一緒に行こうとか変なことを言うのは目に見えている



だから、仕方ないから。もう一度言うが、仕方ないからお茶させてやってる


あーあ、今日の計画がどんどん台無しになっていく


…早く帰れば良いのに




「ところで、さ」




ピンクのマグカップに入った、私の分のココアを飲んでいると、タイシはちょっと楽しそうに口を開いた



「今日は何の日でしよーか!」



にやにやと顔を緩ませていて、正直気持ち悪い

ていうか今日でしょ?


「入試の日以外、何があるの」


ピシリ、という音を立てて、彼は有り得ないというような顔をして固まった

どうしたんだ


「何って、なまえ!バレンタインだろ?!」


「……あー」



言われて気付いた。あー、そう言えばスーパーとかでチョコレート、大量に販売してたね


でも私には関係ないと思っていると、タイシが両手を出してくる



「この手は?」


「なまえさん、チョコください」


「やらん」



そう言うと、えー!と文句を言われた



こいつ、ガキか…!



「ココア、やっただろ。同じカカオなんだから、それで十分!」



再び文句の声が上がる




……ほんと、早く帰れば良いのに